今夏の甲子園決勝。視聴者のために時間変更できるなら、球児のためにも…。
4月20日、今夏の高校野球決勝戦試合開始時間について発表があった。
朝日新聞は次のように報道している。
リオデジャネイロ五輪の中継時間を避け、より多くの視聴者に楽しんでもらえるようにこれまでより1時間遅らせるという。
夏の高校野球大会については多くの人が観戦を楽しむ一方で、大会運営についての批判もあった。
炎天下の試合は選手の身体への負担が大きいこと、観戦する人も熱中症を引き起こしやすいこと。過密な日程で、投手たちは連投し、投球数も多くなることから肩やひじへの負担が大きく、ケガや痛みを引き起こすこと。その後の野球生命にも暗い影を落とす危険があること。
過密日程については、近隣の球場の利用や試合の間隔を空けるように日程を組むことの提案なども聞かれる。
しかし、近隣球場での試合開催は、甲子園でプレーしたいという高校生選手の心情を慮れば踏み切れないところもあるのかもしれない。試合間隔を空けることは、高校生の滞在費用、甲子園球場そのもののスケジュールから難しい。
ベンチ入りできる人数を増やして、先発、中継ぎ、抑え投手と分業することも考えられるが、それでもチーム内の絶対的エースに最終的には頼ってしまうかもしれない。投手のイニング制限、投球数制限をルールに盛り込むことができればよいのだろうが…。どれもすぐに実現させることは難しい。
高校野球の甲子園大会を変えることは難しいのだろうと私は思い込んでいた。
ところが、多くの視聴者に楽しんでもらえるようにという理由で試合時間は変更されたのだ。
決勝の試合時間を変更することができるのなら、選手のコンディションに配慮して、気温が下がる時間帯に決勝を開催することも可能なのではないか。
高校生のスポーツ大会は人気があり、テレビやその他のメディアにとっては重要なコンテンツである。特に甲子園で開催される高校野球の全国大会はそうだろう。誰もが知っていることだ。
プロスポーツの試合ならば、最も観客が集まりやすい時間や高視聴率が期待できる時間帯にあわせてスケジュールを組むのは当然のこと。しかし、高校生たちは観客にプレーを見てもらうことで報酬を得ているプロ選手ではない。日本高校野球連盟も「アマチュアリズムを堅持する」としていたはずだ。高校生の選手たちは労働組合を結成して、スケジュールについて運営側と交渉することもできない。
主催者の日本高校野球連盟と朝日新聞が、多くの視聴者に楽しんでもらえるようにと言う理由で決勝の試合時間を変えたのは、高校生選手たちの試合が見世物であると認めているように私には感じられた。選手が持てる力を発揮しやすいように配慮するよりも、興行を優先するという「本音」を公にし、開き直られたような、イヤな感じがした。