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今季メジャーリーグは日本人が投げ、韓国人が打つ!?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
今季からカージナルスでプレーする元阪神の呉昇桓(オ・スンファン)(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

4月3日に開幕したアメリカのメジャーリーグ・ベースボール(MLB)。日本同様に韓国でも人気が高いが、今季は例年に増してMLBへの関心が高い。

何しろ今季は計8名の韓国人選手がアメリカへ。チュ・シンス(テキサス・レンジャース)、リュ・ヒョンジン(ロサンゼルス・ドジャース)、カン・ジョンホ(ピッツバーグ・パイレーツ)といったすでにMLBで活躍してきた選手や、6年ぶりにマイナーから昇格したチェ・ジマン(ロサンゼルス・エンゼルス)に加え、日本でもプレーした李大浩(シアトル・マリナーズ)、呉昇桓(セントルイス・カージナルス)、さらには韓国プロ野球の本塁打王のパク・ビョンホ(ミネソタ・ツインズ)、最年少首位打者のキム・ヒョンス(ボルチモア・オリオールズ)などが開幕ロースター入りを果たした。その多さから「今季は韓国人選手同士の対決も130試合以上あるかもしれない」と、韓国メディアも期待を寄せているほどだ。

(参考記事:仁義なき同郷対決も多発か!? 韓国産メジャーリーガー歴代最多時代へ

ただ、期待や関心が多いのは単にメジャーリーガーの数が増えたからだけではない。旧知の韓国スポーツ紙・野球担当記者も言っていた。

「数年前まで韓国人メジャーリーガーと言えば、韓国でプロを経験せずにアメリカに渡った者や投手が多かった。ただ、近年はリュ・ヒョンジンやカン・ジョンホなど韓国プロ野球で活躍してアメリカに渡る選手が増えた。李大浩や呉昇桓も日本からアメリカに渡ったとはいえ、元は韓国プロ野球でその名を高めた選手。韓国プロ野球の実力が高まってきた証拠として期待が集っている」

そもそも1994年にパク・チャンホが韓国人初のメジャーリーガーになって以来、韓国人メジャーリーガーは投手が多かった。2005年にも8名の選手(パク・チャンホ、キム・ビョンヒョン、ソ・ジェウン、キム・ソンウ、ク・デソン、ペク・チャスン、チェ・フィソプ、チュ・シンス)がアメリカでプレーした時代はあったが、6名が投手だった(しかも、チュ・シンスはマイナーだった)。だが、今季は逆に6名が野手で投手は2名だけである。

そうした背景についてはさまざまな理由があるが、韓国球界で“バルクアップ(筋力トレーニングや食事で体と筋肉を大きくすること)トレーニング”が流行・定着していることとも関係しているらしい。

(参考記事:韓国人メジャーリーガーの系譜と近年著しい野手増加の理由

興味深いのは、メジャー進出した野手の増加を受けて韓国では何かと日本が引き合いに出ることだ。韓国とは異なり今季の日本人メジャーリーガーは投手6名、野手2名ということもあって、「2016年メジャーリーグ“韓打日投”」(京郷新聞』) 、「期待される韓日の投打対決」(『スポーツ朝鮮』)、「メジャーリーグ韓日戦、行き交う地形、打者は韓国、投手は日本」(『ブリッジ経済』)、という報道も出ている。国同士の対決でもないメジャーリーグの舞台にまで“韓日対決”を持ち込む論調はいかにも韓国らしく、若干の違和感も感じるが、日本人メジャーリーガーたちの評価は韓国でもかなり高く、意外な交流もあるようだ。

(参考記事:“韓打日投戦”の今季MLB。韓国で評価が高い日本人メジャーリーガーは?

とりわけ韓国でもバツグンの知名度を誇るのはイチローだ。「42歳野手最高齢のイチロー、今季に通算3000本安打達成、可能か」(『スポーツ朝鮮』)、「2016年に期待される大記録はイチロー300本安打とA・ロッド700本塁打」(『THE FACT』)とMLB開幕特集のひとつとして取り上げられているほど。ただ、WBCでの因縁以来、韓国人のイチローを見つめる眼差しには、愛憎の両方があるのも事実のようで・・・・・。

(参考記事:「憎たらしいが偉大すぎる」韓国が抱くイチローへの愛憎

いずれにしても最近はダルビッシュ有とチュ・シンス、岩隈久志&青木宣親とイ・デホ、前田健太とリュ・ヒョンジンなど、日本と韓国のメジャーリーガーが同じチームに同居するケースも増えている。“日韓対決”よりも“日韓共闘”で両国の野球ファンたちを熱くさせてもらいたいものだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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