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不朽の名作「コーラスライン」、ロンドンのミュージカルの本場ウエストエンドで始まる!

増谷栄一The US-Euro Economic File代表
「コーラスライン」のクライマックスシーン=The Corner Shop提供

ロンドンの繁華街オックスフォードストリートにあるパラディウム(Palladium)劇場で、ミュージカル「コーラスライン」を観た。コーラスラインといえば、1985年に公開されたハリウッド映画が有名だ。しかし、実は舞台の方がずっと古い。初演は1976年に英国のドルーリーレーン王室劇場で演じられたので、37年間も続く“クラシック”ミュージカルだ。

また、コーラスラインの作曲を手掛けたのは、昨年8月に惜しまれながら他界したマービン・ハムリッシュ氏だ。同氏は4度のエミー賞と3度のアカデミー賞に輝いたミュージカル界の重鎮として有名だった。ミュージカルの本場といえば、ニューヨークのブロードウェーだが、ロンドンではウエストエンドと呼ばれる地域が有名。しかし、このウエストエンドで、過去35年間もコーラスラインが演じられることはなった。それだけに、今回の公演がロンドンのミュージカルのメッカ、ウエストエンドで演じられること自体がすごいらしい。

コーラスライン」のオーディション場面=The Corner Shop提供
コーラスライン」のオーディション場面=The Corner Shop提供

ストーリーはいたって簡単で、オーディションを舞台とした青春群像劇である。全米各地から歌と踊りに自信がある若者が晴れの舞台出演を勝ち取ろうと懸命に生きる姿を描く一方で、振付師のザックと元カノのダンサーでかつての名ダンサーだが若手に追いやられるジェシカとの反発も織り込みながら物語が展開していく。

当然ながら、激しいターンや軽やかなステップ、ジャンプとキレのいい身のこなしは新体操やフィギュアスケートの滑りを思わせるほどの迫力だ。特に男のダンサーは筋骨隆々のマッチョばかり。しかし、踊りの基本はクラッシクバレエだ。力強い動きの中に、丁寧な仕草が分かる。歌唱力もハンパない。腹式呼吸で鍛えた声量は特に高音域では十分に発揮される。とにかく歌はうまい。

イギリスではITVテレビ局の素人の歌のオーディション番組「Xファクター」が大人気だが、そこで優勝を狙う歌手の卵たちも驚くほどの高レベルだが、コーラスラインのメンバーは、はるかにうまい。一人一人のダンサーの経歴を見ると、「キャッツ」や「美女と野獣」、「シカゴ」、「キャバレー」など名作に参加したメンバーなので、当然といえば当然にうまい。舞台は背後のセットに巨大な鏡を並べ、ダンサーの姿が映されるのでダンスに奥行きを与える効果を生み出している程度で、これといった大きな舞台の作りはなく、いたってシンプルだ。

出演者が全員一列で並ぶオーディションシーン=The Corner Shop提供
出演者が全員一列で並ぶオーディションシーン=The Corner Shop提供

ダンサーは振付師兼舞台監督を含め総勢29人だが、途中でオーディションの不合格者が出るので予選を通った21人の男女が最後まで躍りぬく。ソロのダンスと歌、それに全員が加わった群舞で構成されているが、圧巻はなんといってもラストの15分だ。全員が一列(ライン)となって両足を交互に高く上げるシーンは最高の見せ場だった。会場からは何度も拍手が涌き、最後のコーラスラインのシーンが終わると、スタンディング・オーベーションだ。

コーラスラインはパラディウム劇場での初演が今年2月19日で来年1月ごろまでのロングラン興行となっている。チケット予約の最終締め切りが来年1月18日。上演時間は約2時間だが、途中、休憩がないのでトイレは事前に用をすましておくことが必要だ。上演は月・土曜が午後3時、月~土曜が午後7時45分開演。チケットはパラディウム劇場が大人一人20.5~97.5ポンド。ボックス・オフィス・チケッツでは大人一人32~108ポンドだが、6月中だと29.5~35ポンドと安売りもある。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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