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酷暑より酷い学校のエアコンを否定するニッポン

前屋毅フリージャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

 猛暑を通り越して酷暑が続く日本列島で、またもや日本政府の「とんでもなさ」が露見している。

 愛知県の大村秀章知事が7月23日の記者会見で、「学校施設環境改善交付金」に関して、今年度に空調設備の申請をした県内67校のうち1校も認められなかったことを明らかにしたのだ。市町村が学校に空調設置や校舎の耐震工事など施設環境を改善する際に、国が費用の約3分の1を補助するのが、学校施設環境改善交付金である。

 つまり、この交付金がなければ学校の環境改善は難しくなる。これを大村知事が明らかにしたのは、もちろん怒っているからだ。知事は「制度があっても予算がないなら見せ金に近い。予算確保も含めて考えてもらったほうがいい」と、国に対して苦言を呈している。

 言うまでもなく、「勉強しろ」と国は子どもたちの尻を叩いている。2020年度から小学校でも正式課目となる英語についても、取り組みの前倒しを求めたり、授業時間が足りなければ夏休みを削ってでも確保するように指導する姿勢を示している。にもかかわらず、子どもたちが勉強する環境については「無視」を決め込んでいるかのようなのだ。

 日本政府が教育にカネを使いたがらないのは、もはや体質といってもいいくらいだ。2017年9月に経済協力開発機構(OECD)は2014年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める小学校から大学までに相当する教育機関への公的支出の割合を公表しているが、日本は比較可能なOECD参加の34ヶ国のなかで最下位だった。

 2016年公表(2013年分)で最下位を脱出して、辛うじて下から2番目になったものの、再び最下位となってしまったのだ。それまでの2015年公表分まで、日本は6年連続で最下位だった。

 最下位は、もはや日本の「定位置」といっていい。それくらい、日本政府は教育に対してカネを使っていないわけだ。

 学力が低下したとなれば大騒ぎし、いわゆる「ゆとり教育」路線を即座に放棄して、「学力偏重」へ急激にハンドルを切った。にもかかわらず、教育への投資が足りなさすぎる事実を突きつけられ続けながらも、日本政府は改善するつもりはないようだ。

 そして、酷暑でもエアコン無しの教室で授業を受けることを、子どもたちに強いて平気な顔をしている。その感覚は、もはや「おかしい」と言うしかない。

 安倍政権は「教育再生」を強調し、「人づくりは、国づくり」のスローガンを掲げている。しかし、国としての支出はケチるばかりで、子どもたちや教員、学校だけに負担を強いている。

 ほんとうに教育を再生できるのか。酷暑のなかでの空調問題は、あらためて日本政府の教育に対する姿勢を問うきっかけとなるかもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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