ラニーニャ現象でも 加速する温暖化
「パリ協定へようこそ」フランス大統領はアメリカの復帰を歓迎した。一方で、温暖化は一段と進み、2020年の世界の平均気温は過去最高レベルに達した。ラニーニャ現象やコロナ禍による経済封鎖の影響が予想される2021年も気温が高くなりそうだ。
アメリカ「パリ協定」に復帰
アメリカのバイデン新大統領は20日、就任式のあと執務を開始し、「パリ協定(Paris Agreement)」に復帰する文書に署名しました。「パリ協定」とは2015年、フランス・パリで行われた気候変動問題を話し合う国際会議で採択された、2020年以降の温室効果ガス排出削減のための新たな国際枠組みです。
フランスのマクロン大統領は「パリ協定へようこそ!」とバイデン新大統領の英断を歓迎するコメントをツイッターに投稿しました。
2020年はトップ3の記録的な高温
世界気象機関(WMO)は15日、2020年の世界の平均気温は約14.9度で、産業革命以前(1850-1900)と比べて1.2度上回ったと発表しました。2020年は2016年、2019年と並ぶトップ3の記録的な高温となりました。
折しも、気温の上昇幅が初めて産業革命以前と比べて1度高くなったのが「パリ協定」が採択された2015年です。「パリ協定」の目標は2.0度以内に抑えることですが、それでは想定外の気候変動に見舞われる可能性が高いとして、1.5度以内に抑えることを究極の目標としています。
ラニーニャでも、温暖化は止まらない
英気象庁(Met Office)は昨年12月、2021年の世界の平均気温は産業革命以前と比べて0.91度~1.15度高くなると予想しました。長期予報の専門家は「現在、ラニーニャ現象が発生しているため、2020年のような記録的な高温となる可能性は低いが、これまでのラニーニャ現象年と比べれば、はるかに暑い年になるだろう」と述べています。
ラニーニャ現象は南米ペルー沖の海面水温が低くなる現象で、世界の平均気温を下げる効果があります。しかし、最近は二酸化炭素などの温室効果ガスが大気を暖める影響が大きくなり、ラニーニャ現象の影響を弱めています。
コロナ禍でも、二酸化炭素は増加
そして、もうひとつは新型コロナによる過去例のない世界的な経済封鎖です。世界気象機関(WMO)のレポートは二酸化炭素の排出量は世界で4.7%~7.5%減少する可能性があるものの、これは大気中の二酸化炭素の増加ペースをわずかに弱めるくらいの効果しかないと厳しい見方を示しています。
きょう(21日)アメリカが「パリ協定」に復帰し、世界的な枠組みの実効性が再び、増しました。しかし、足元の温暖化は減速する気配を見せず、むしろ想定を超える速さで進んでいます。今年も、この先も、何が待ち構えているのか、気候変動問題は待ったなしの対応を求めています。
【参考資料】
世界気象機関(WMO):2020 was one of three warmest years on record、15 January 2021
世界気象機関(WMO):Carbon dioxide levels continue at record levels, despite COVID-19 lockdown、23 November 2020
英気象庁(Met Office):Earth plays it cool, but global warming is unrelenting、18 Dec 2020
英気象庁(Met Office):Global climate data set update reveals greater warming、15 Dec 2020