アマゾンの新端末は究極のショッピングツール? ボタン1つで注文できる「Dash Button」開始
米アマゾン・ドットコムが一風変わった小型のネットショッピング端末を発表し、話題になっている。
名前は「ダッシュボタン(Dash Button)」。消しゴム大ほどの端末で、種類がいくつもあり、それぞれに異なる商品ブランドがプリントしてある。
家中の至る所にショッピングボタン
あらかじめスマートフォン用アプリで無線LAN(Wi-Fi)接続を設定し、商品種類の詳細と数量を指定しておく。あとは、端末右部分にあるボタンを押すと、その商品が2日以内に届く。
このダッシュボタンは1台に1つの商品を割り当てるという使い方をする。そしてアマゾンはこれを家庭の様々な場所に置いてもらいたいと考えている。
例えば、洗濯機には洗濯洗剤「Tide(タイド)」のダッシュボタン、洗面台にはかみそり刃「ジレット」のダッシュボタン、冷蔵庫にはスポーツドリンク「ゲータレード」のダッシュボタンといった具合だ。
品物が切れそうなことに気付いたら、その場でボタンを押せば、アマゾンへの注文が完了する。
ダッシュボタンには背面に粘着シートが付いているほか、専用のフック付きケースもあり、家の中の好きな場所に設置できると、アマゾンは説明している。
またこの端末は、重複注文を防ぐ仕組みも用意している。
たとえば、子どもがボタンを押してしまうことが考えられるが、ボタンが押されるとスマートフォンに通知が届き、30分以内であればキャンセルできる。このほか、初期設定ではボタンを何度押しても、商品が届くまでは次の注文は入らない。
このダッシュボタンは無料だ。今のところ米国のみで提供しており、年会費99ドルの会員制プログラム「Amazon Prime」のメンバー限定。希望者はアマゾンのウェブサイトでリクエストを出し、電子メールの招待状を待つ必要がある。
米シーネットによると、現在アマゾンが用意しているダッシュボタンのブランド種類は約18種。1人の利用者に付き3つまで配布しているという。
ショッピング手続きをさらに簡素化
アマゾンはこれまでもネットショッピングの利便性向上に向けた様々な仕組みを提案している。
例えば昨年4月には、生鮮食料品のネット通販「アマゾンフレッシュ(AmazonFresh)」の会員を対象に、懐中電灯大の端末「アマゾンダッシュ(Amazon Dash)」を配布した。これは、商品パッケージをスキャンすると、その商品がショッピングカートに入るというバーコードリーダー端末だ。
また同社のスマートフォン「Fire Phone」には、画像、音声を認識し商品カタログと連携する機能がある。
これらに共通するのは、パソコンやスマートフォンでテキスト入力することなく商品を探せるという点。だが今回のダッシュボタンはショッピングカートを経由せずに注文を完了するというもので、ネット通販の手続きをさらに簡素化している。
そして、アマゾンのこうした野望には、まだ先があるようだ。同社はこのダッシュボタンと同時に、「Dash Replenishment Service(DRS)」呼ぶサービスも発表した。
消耗品を自動注文する新サービス
「Dash Replenishment Service(DRS)」では、機器に消耗品の使用状況などを感知するセンサーを組み込み、アマゾンへの注文を自動化する。
米ウォールストリート・ジャーナルによると、アマゾンはこれに関し、ドイツの浄水器メーカー、ブリタ(BRITA)や、米国の白物家電メーカー、ワールプール(Whirlpool)、日本のブラザー工業などと提携した。
例えば、ブリタは現在、交換時期が来ると自動でアマゾンにフィルターを注文するポット型浄水器を開発中。ワールプールは、洗剤と柔軟剤を自動注文する洗濯機と乾燥機を、ブラザー工業はインクカートリッジを自動注文するプリンターを開発しているという。
昨年9月、英ロイター通信は、アマゾンがスマートホーム関連の機器を研究するプロジェクトを進めていると伝えていた。
このプロジェクトでは、将来必要になるものを予測し、商品やサービスを提供するという研究を行っている。この時ロイターは、洗濯機が故障する前にそのことを知らせたり、機器の消耗品の交換、補充時期をあらかじめ知らせたりするサービスをアマゾンが構想していると伝えていた。
今回同社が発表したサービスは、その一歩先を行っているようだ。日常のあらゆる機器がネットにつながり、機器同士が連携し様々なサービスを実現する「モノのインターネット(IoT:Internet of Things)」の時代を見据えているのかもしれない。
(JBpress:2015年4月2日号に掲載)