作業員のアンケートにふりがなは、何を意味する?
東京電力は2015年9月2日朝、作業員の負傷に関する短いリリースを発表した。内容は以下のようなものだった。
この後、午後3時前に東電広報室に追加情報を確認したところ、作業員が救急医療室に運ばれた後に意識を回復したことはわかったが、負傷の程度や事故時の状況などは「調査中」とのことだった。事故発生から8時間半が経過しても、ケガの程度もわからないというのは、どういうことだろうか。もっとも東電は、ケガの程度を「プライバシー」として発表しないこともあるから、情報が十分に開示されるかは微妙な。
東電広報によれば、ケガをした作業員はタンクの解体作業に従事していた。作業開始は午前4時。落下は日の出前の午前5時前だが「ライトなしで作業できるくらい明るかった」とのこと。作業開始が早いのは暑さ対策だ。夏の間、昼間は作業を休止するので、始まりが早くなる。4時開始だと、起床は1時か2時だろうか。通常の現場ではないことが、これだけでもわかる。
事故のあったタンク解体作業を請け負っている元請けはアトックスで、現場には23人の作業員がいたという。タンクに登っていた作業員が何人いて、落下した作業員が何次請けだったかは「調査中」だった。
落下したのがどのくらいの高さだったのかと、安全帯の長さがどのくらいだったか(落下したのがどのくらいだったのか)も「調査中」だった。事故の情報の開示には、いつも時間がかかる。
福島第一では、作業員のケガが相次いでいる。8月8日には、バキュームカーの後部ハッチに頭を挟まれて死亡する事故があった。作業に関係ないと東電が発表している死亡者も、8月に2人発生した。死因について東電は、プライバシーを理由に公表していない。けれども、放射線との因果関係、作業起因については明確に否定している。情報を出さないので、根拠はわからない。とくに8月1日に亡くなった作業員については、持病かどうかの公表もしなかった。東電はこの情報公開で、信頼回復、市民の安心確保ができると思っているのだろうか。。。
厳しい現場での収束作業が続く中、事故から1年が過ぎた頃には作業員の熟練度の低下も指摘されていた。東電は状況を否定するが、現場作業員の間では、技能低下は周知の事実になっている。
少し話は変わるが、東電は8月27日に作業員に対するアンケート内容を発表した。(http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/d150827_12-j.pdf)
今まで通り、金銭面でのことや労働契約に関することなどに加え、全面マスクを着けて作業しているかどうかという項目が追加になった。東電は福島第一構内のマスク省略可能エリアを増やし、「作業環境が改善された」と一生懸命にPRしているが、作業員の話では、実際にはマスク着用を義務づけている企業が多いという。
これに対して東電は、マスクをはずして作業している人の数は把握していないという。今回のアンケートでは、ほんとうに作業環境に変化があるのか、改善しているのか確認できるかもしれない。
ところでこのアンケート、質問項目のすべての漢字に「ふりがな」がふってある。先日の会見でふりがなの理由を聞くと、現場の企業から「要望があった」という回答だった。ふりがなをつけたのは、1年前に実施したアンケートからだ。
これはいったいどういうことなのか。漢字の読めない人が増えているということなのか。なぜ漢字が読めないのか。作業員はどこから来ているのか……。ふりがなからはいくつかの疑問が浮かぶ。
アンケートの結果とともに、現場の状況が気になるところだ。
9月2日18時追加
タンクから落下した作業員について、東電は当初、一時的に意識を失っていて救急医療室で意識が戻ったとしていたが、その後に訂正。作業員はずっと意識があったとのこと。
またケガの程度については、病院で診察の結果、異常なしと判明。念のため1日だけ入院するという説明が広報室からあった。