自民党憲法改正草案を読んだことがあるか?…不信感の根源はここにある?!
本日7月27日から、安保法制関連法案の審議が参議院で始まる。
他方、安倍政権への不信感はさらに高まっているようだ。日本経済新聞が行った最新の世論調査(7月24~26日に実施)によれば、6月の前回調査に比べて、内閣支持率は9ポイント低下して38%、不支持率は10ポイント上昇して50%となり、半数に及んだ(注1)。なお、他の多くの世論調査でも、同じく不支持率が支持率を越えているようだ。
また、同じ日経の調査によれば、集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案に関して、今国会成立「反対」(57%)が、「賛成」(26%)を大きく上回った。
安倍総理は、このような状況に危機感を感じ、最近自身でTV番組などに積極的に出演し、同法案の説明を行った。だがその成果はなかった。いや逆に、国民の同法案への今国会への成立への反対や政権への不信感はさらに強まってきているといえる。
筆者は、このような反対や不信感の高まりは、その内容というよりも、民意を活かそうとしない同法案の審議や採決などにおけるプロセスに問題があるからだと考えている。特に民主主義においてはそのプロセスが重要だが、安倍政権はそれを軽視しているといわれても仕方がない、対応がなされているのだ。
しかしながら、筆者は、この安保法制関連法案やそれに関するさまざまな動きに対して不信感や反対が根強いことの通奏低音として、もう一つのものがあると考えている。
それは、自民党が野党であった2012年4月に発表した憲法改正草案だ。これは、自民党が野党の時に出したものであるので、ある意味自民党の本音が書かれているといえるものである。
読者の方々は、同法案を読まれたことはあるだろうか?読まれていないのであれば、ぜひとも読んでいただきたい!
筆者は、憲法改正、あるいは少なくとも(否、むしろ)憲法改正論議はあるべきだと考えている。また集団的自衛権も含めた自衛権に関して、きちんと考えていくべきだと考えている。
だが、自民党の憲法改正草案を読んだ上で、「特定秘密保護法」「安保法制関連法案」や「原発再稼働」への方向性およびメディア批判や抑制などを主張した自民党内の勉強会などの動きを考えると、どうしても符合する一つの流れがあるとしか考えられない気がする(注2)。それは、海外からの「脅威」などの現実的かつ合理的に対処するというよりも、国家重視の回帰的なものを目指しているということだ。
自民党の憲法改正草案には、その方向性が明確に出ている。そこには、欧米の考えであるというよりも人類の歴史の英知であるはずの立憲主義の否定や民意を抑制し強い国家を目指す国家観が明確に示されている。もし、そのような人類の英知とは別の観点から、憲法をつくりたいのではあれば、それを超克する理念とビジョンが当然必要だと思うのだが、そのような理念は、同草案には感じられない。
その意味でいえば、筆者は、その草案よりも、欧米からの脅威をひしひしと感じる中日本を近代国家にするべく制定された「大日本帝国憲法」の方がはるかにいいと感じる。
そして何より、同草案は、「外国から押しけられた」という現行憲法への反発からか、戦後の70年の日本(人)の歴史を踏まえていないことだ。それは、現在の多くの日本国民の戦後の人生を否定していることを意味する。多くの国民にとって、そのようなものは到底受け入れることはできないだろうと考えられる。
筆者の意見の表明はここで止めておきたい。それは、本記事の要諦は、筆者の意見を読者に押し付けることではなく、読者の方々に、自民党の憲法改正草案をご自分で読んでいきたいと思うからである。
出来るだけ多くの方々に、自民党の憲法改正草案を読んでいただきたい!!!
(注1)同調査では、2012年12月発足の現在の安倍政権で初めて支持・不支持の支持率が逆転した。
(注2)多くの日本人はまだ、自民党の憲法改正草案を読んでいないかもしれないが、その流れを何となく感じているのではないだろうか。