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ロシアより。文字を見ても声に出して読めない辛さについて

杉山茂樹スポーツライター
モスクワ地下鉄の案内表示. Photo Shigeki Sugiyama

 ロシアはキリル文字で表すロシア語で溢れている。当たり前といえばそれまでだが、それは中東でアラビア文字に囲まれることと同じだ。韓国の田舎を訪れたときに、ハングル文字に囲まれ、右も左もわからなくなったことがあるが、それも同種の話だ。もちろん、日本を訪れた外国人が、日本語に囲まれた場合もしかりなのだけれど。

スタジアムの案内表示
スタジアムの案内表示

 キリル文字も、アラビア文字も、ハングル文字も、そして日本の文字も、文字を見て自分なりに発音することができる人は、世界的に少数派だ。文字としての役を果たしてくれないというか、何かの拠り所になってくれないのだ。ロシアを訪れて、はや10日が経過。キリル文字にはだいぶ慣れてきたとはいえ、大苦戦中であることに間違いない。

 キリル文字オンリー。一般的な欧文表記が極端に少ないロシア。そこに、大国のプライドが見え隠れする。世界の中心はここだ。英語圏やスペイン語圏ではないと、無言で語っている気がする。

欧文表記が並列されていれば問題はない
欧文表記が並列されていれば問題はない

 だがその唯我独尊的思考法は、観光にとってはマイナスだ。ホスピタリティは必然的に低下する。お迎えする精神はあっても、受け手には通じにくい。海外からの旅行者にとって優しくない世界が広がることになる。

 日本にもロシア的な場所は少なくない。東京にもまだまだ存在するが、少し地方に行けば、外国人にはより厳しい世界が待ち受けている。漢字、ひらがな、カタカナをほぼ一切、口にすることができない外国人は、それを見て何かを認識することができない。情報を得ることができない。

「お・も・て・な・し」を自画自賛する日本だが、ならば、案内表記だけはわかりやすく。日本を訪れる外国人旅行者の苦労を、いま僕はロシアで実感している次第だ。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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