増加する真夏日・猛暑日、「昔も今も暑さは変わらない。騒ぐのは根性不足」は精神論(2023年版)
真夏日と猛暑日をカウントすると
先日【東京や大阪の気温は上昇中…100年以上の推移をさぐる(2023年版)】で解説の通り、夏の気温は確実に上昇の傾向を示している。例えば東京では140年あまりで2度ほどの上乗せが確認されている。数字の上では1度や2度、大したことはないように思えるが、実際の体感温度としては、1度違うだけでも大きな差となる。
気温上昇の原因は複数考えられるが、人口の増加や都市化に伴うヒートアイランド現象の影響が強くなったこと、人間の行動様式がより熱量を放つスタイルに変化をしている(自動車の利用率上昇、機械化、工業化)ことなどが主要因として挙げられる。豊かな、科学的に進歩した社会生活を送るためには、相応のエネルギーが必要で、エネルギーを消費すればそれなりの熱量が発生するからだ。
一方、「昨今の夏の暑さへの対応は騒ぎ過ぎ。昔も今も暑さは変わっておらず、現代人の根性が足りないだけ」とする意見も耳にする。就学中、特に部活動などの屋外活動時における熱中症の発生事案が伝えられた際や、教育施設へのエアコン導入の是非に関する論議ではよく聞く話ではある。昔はエアコンなど無かった、だから今も必要はない。必要だとする意見は(かつての自分達のように)根性が無いからだという形である。
そこで気象庁の公開データベースを基に、真夏日(一日の最高気温が30度以上の日)、猛暑日(同35度)の年次ベースの日数を抽出し、本当に暑さは昔も今も同じなのかを検証することにした。すでに平均気温は明らかに上昇しているのだが、ピークとなる暑さの温度がどれだけ高いのか、その機会が多いのかを推し量るのには、真夏日や猛暑日の数の変化を見るのが分かりやすい。
観測対象地点は東京と大阪、そして消防庁の熱中症に関する公開データではよく救急搬送者数の上位に顔を見せる神戸を対象とした。ある程度カウントされるべき日が存在しないと、値そのもののぶれが大きくなり、傾向の検証が難しくなるからである。
真夏日と猛暑日の数は当然大きな差が出るため、縦軸の区分を別のものにしているが、どちらのグラフでもイレギュラーな動きはあるものの、確実にその数を増やしているのが分かる。数年でいきなり数倍というような劇的な増加ではないが、増えていることがグラフを見たときの印象から容易に把握できる。特に赤線で記した大阪の動きが大きなものであることは、一目瞭然である。
近似曲線で確認すると
「増えていることがグラフを見たときの印象でも、容易に把握できる」としても、分からない人もいるだろう。そこでそれぞれのグラフに線形近似曲線(点線)を引き、元のグラフの表示を薄くして、線形近似曲線を目立たせる形にしたのが次のグラフ。要は点線部分が横ばいなら、真夏日・猛暑日は増えていない、右肩上がりならば増えている、右肩下がりなら減っていることになる。
今回観測対象となった東京・大阪・神戸ではいずれも増加傾向にある。特に大阪(赤い点線)は増加の勢いが強い。
もう少し検証対象地域を増やし、さらに人口の増加率と掛け合わせれば、ヒートアイランド現象との相関関係性も一層確かなものとなりそうだが、よほどの観測地点でなければ真夏日や猛暑日の有意な値は期待できないので、今回は省略する。ともあれ、真夏日・猛暑日の観点で見ても、日本の夏は確実に暑くなっている。
気象庁の特設解説ページ【ヒートアイランド現象】によれば、都市部において長期的な気温の上昇傾向がみられ、特に都市化が進んでいる地点ほど気温の上昇率が大きいと言及している。他に、冬日の減少や熱帯夜・猛暑日・真夏日の増加、日中最低気温の上昇、乾燥化が進行しているとのこと。また、東京では1950年代後半から1970年頃にかけて、気温が大きく上昇したと説明している。
「昔と気温があまり変わっていないように見える、少なくとも自分の記憶ではそう判断できる。だから夏の暑さに騒ぐことはない。夏が暑いと訴える、教育施設にエアコンを求める、暑さの中で活動をひかえるべきとの意見は甘えに過ぎない」という話は戯言として捨て置き、無理をせずに体調管理を万全に、そして適切な生活環境における温度管理を心がけてほしい。
それでもなお「甘えだ」とする意見があるのなら、それを語る当事者ご自身が、その環境に同一条件で時を過ごすことをお勧めしたい。実情を肌身で感じ取れるはずだ。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
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