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みんなお年玉にいくら使っている? 家計調査を大解剖してみた(2024年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
子供にはとても嬉しいお年玉。大人にとってはどれぐらいの支出になるのか(写真:イメージマート)

自分の子供と他人の子供、それぞれへのお年玉

毎年この時期になると子供達が皮算用を始め、大人達がそろばん勘定で頭をかかえるのがお年玉。総務省の家計調査から読み取ると、直近の2024年では自世帯の子供へのお年玉が1340円、他世帯の子供へが14225円。この支出額は2000年以降でのピークだった2001年に比べて、それぞれ2割足らず、5割強まで落ち込んでいる。特に2021年では他世帯の子供へのお年玉が著しく落ち込んだが、これは新型コロナウイルスの流行により、帰省などがほとんどできなくなったことが原因と考えられる。詳細は以下で見ていこう。

家計調査においてお年玉に相当すると思われる項目は、家計収支編における「他のこづかい」と「贈与金」。それぞれは家計調査の分類によると次の通り。

(961)他のこづかい…世帯主を除く世帯員(への)こづかい。

(10.3.6)贈与金…一般社会の慣行による自発的現金支出。持参金など世帯への譲渡金も含む。ただし、仕送り金、慰謝料は除く。せん別、香典、見舞金、謝礼金、祝儀、持参金、結納金、財産分与金、遺産分与金。

期間を1月に限定することで、「他のこづかい」は自世帯の子供への、「贈与金」は他世帯の子供へのお年玉と見なすことができる。つまり、同居する子へのお年玉は「他のこづかい」、親戚の子や離れて暮らす孫へのお年玉は「贈与金」とみる。実際には1月に限っても子供へのこづかいは発生し、親族や知人へのせん別や香典、見舞金などを支払う可能性はある。しかしその区分は家計調査では行われていないため、あえて1月の金額はすべてお年玉と見なして精査を行う。1月分のデータを取得できる最新値は2024年1月分。

また、月単位での「他のこづかい」「贈与金」が確認できるのは二人以上世帯のみ。よってその条件での精査となる。

まずは世帯主の年齢階層別に見た「他のこづかい」と「贈与金」の金額。

↑ 「他のこづかい」と「贈与金」世帯主年齢階層別の支出額(二人以上世帯、円)(2024年1月)
↑ 「他のこづかい」と「贈与金」世帯主年齢階層別の支出額(二人以上世帯、円)(2024年1月)

二人以上世帯限定だが、全体では「他のこづかい」は1614円、「贈与金」は14173円。「贈与金」が多いように見えるが、これは複数世帯の子供へのお年玉の合算だからに他ならない。

年齢階層別では興味深い動きが見られる。「他のこづかい」では29歳以下では835円だが、年齢が上になるに連れて額面は増え、50代では最高額の2521円。それ以上は年齢とともに額は減っていく。これは自世帯への子供のこづかいであることから、子供のいる・いないに加え、子供の年齢によってお年玉の額が増えていくことを示唆している。60代以上は子供も家を出たり就職するなどしてお年玉を受け取らなくなるため、額も減っていく次第。

他方「贈与金」は年齢とともに増えていく傾向がある。70歳以上では21250円となる。これは正月休みなどで帰省した(他世帯の)子供や孫へお年玉を渡す機会が増えるからだと考えられる。

続いて「他のこづかい」と「贈与金」が家計の消費支出に占める比率を計算した結果が次のグラフ。消費支出とは世帯を維持していくために必要な支出なので、今件は普段使いするお財布の中身のどれほどの割合なのかを示していることになる。

↑ 「他のこづかい」と「贈与金」支出全体に占める割合(二人以上世帯)(2024年1月)
↑ 「他のこづかい」と「贈与金」支出全体に占める割合(二人以上世帯)(2024年1月)

二人以上世帯に限れば消費支出には大きな違いは無い。よって「他のこづかい」や「贈与金」の額そのもののと同じような形状のグラフができあがる。70歳以上の世帯では2024年1月に、他世帯へのお年玉として消費支出の1割近くを支出した計算になる。自分の子供へのお年玉は、年齢階層別でもっとも大きな値を示した50代でも0.7%。お年玉を渡すであろう人数の違いを想像すれば当然の結果ではあるのだが。

前世紀末からのお年玉の変化

続いて直近年だけでなく過去の値も計算し、経年動向を確認する。

次に示すのは各年1月における二人以上世帯の「他のこづかい」と「贈与金」の動き。家計調査では2000年以降でこの値が取得できる。

↑ 「他のこづかい」と「贈与金」支出額の経年動向(二人以上世帯、円)(各年1月)
↑ 「他のこづかい」と「贈与金」支出額の経年動向(二人以上世帯、円)(各年1月)

2000年以降に限れば「他のこづかい」「贈与金」双方とも漸減状態にある。「他のこづかい」は2002年の7385円がピーク、「贈与金」は2001年の28634円がピーク。それが直近の2024年ではそれぞれ1340円・14225円。ピーク時と比較すると「贈与金」は5割強にまで、「他のこづかい」は2割足らずにまで落ち込んでいる。景況感の悪化か、大人がケチになっているのか、お年玉にかかわる慣習の変化が生じているのか。

2021年では「他のこづかい」は平年通りの減少度合いだが、「贈与金」の落ち込み具合が著しいものに見える。これは新型コロナウイルスの流行により、帰省などがほとんどできなくなったことが原因と考えられる。新型コロナウイルスの流行下でも「他のこづかい」は自分の子供へのお年玉のため影響は受けないが、「贈与金」は他世帯の人へのお年玉となるため、帰省や正月の集まりで他世帯と出会う機会がほとんどなくなったため、必然的に渡す機会も減ったからに他ならない。直近2024年では「贈与金」は2021年と比べればいくぶん戻しているものの、2020年と比べれば減少していることに違いはない。

そこでこの額についてそれぞれの年の消費支出の割合を算出する。消費支出とは世帯を維持していくために必要な支出であることから、普段使いするお財布の中身のどれほどの割合なのかを示していることになる。この値に変化が無ければ世帯単位でのお財布事情が悪化しているので、お年玉も減っていると見なせるのだが。

↑ 「他のこづかい」と「贈与金」支出全体に占める割合の経年動向(二人以上世帯)(各年1月)
↑ 「他のこづかい」と「贈与金」支出全体に占める割合の経年動向(二人以上世帯)(各年1月)

多少の起伏感に違いはあるが、ほぼ金額そのものと同じような形状のグラフができあがった。つまりお年玉の額が減っているのは世帯のお財布事情が原因ではなく、お年玉に割く割合が減った結果と判断できる。2021年の「贈与金」に限れば、新型コロナウイルスの流行で他世帯と会う機会そのものが減っているからとの推測も加わる。

自分の子供・他人の子供を問わず、子供へのお年玉は減少傾向にある。これは単純に子供へのお年玉の相場が減少しているのかもしれないし、直接の金銭以外でのお年玉的なもの、例えば子供が欲しがっているゲームソフトを購入して渡すなどの方法にスタイルが変わっているのかもしれない。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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