原発は最大で13.6%だったが今は4.1%のみ…日本の一次エネルギー供給推移(2024年公開版)
人が社会生活を営む上で欠かせないのが、各種エネルギー。そしてそのエネルギーは多くが自然界の恵みとして取得・利用されることになる。今回は資源エネルギー庁から毎年公開されている資料「エネルギー需給実績」を基に、日本国内における主要な一次エネルギーの供給推移について確認し、動向を精査していくことにする。
グラフ作成の前に、言葉の定義について確認をする。「一次エネルギー」とは、自然界に存在するそのままの形を用いてエネルギー源として使われているものを意味する。化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)、ウラン、そして水力・火力・太陽熱・太陽光・地熱など、自然エネルギーから直接得られる類が該当する。他方「二次エネルギー」とは電気やガソリンなど、一次エネルギーに手を加えて得られるエネルギーを指す。電気やガソリンが、すぐにでも利用できる形で自然界に存在しているわけではない。また「その他」は主に水力を除いた再生可能エネルギーで構成されている。
元資料にある一次エネルギー供給の推移をグラフ化したのが次の図。横軸の年度は、公開資料に掲載されているデータの都合上、1990年度以前は同期間の間隔ではないので注意を要する。また、J(ジュール)はエネルギーの大きさを表す指標の一つ。1M(メガ=100万)Jは0.278kWh=0.256リットル(A重油)に相当する。
昔から石油がエネルギー供給のメインだったことに違いはないが、1970年代をピークに漸減、今世紀に入ってからはその減少の勢いを増してい「た」のが分かる。また、前世紀末以降エネルギーの供給総量がほぼ横ばいとなっているが、これは「エネルギー消費側の効率化」「多量のエネルギーを消費する国内工場の建設スピードの鈍化(海外移転)」など複数の要因によるもの。
そして2008年度から2009年度における合計値の下落、2010年度の上昇は、金融危機・リーマンショックによる不景気で産業方面でのエネルギー消費が減少したことと、その後の回復がそのまま数字となって表れている。さらに2011年度の減少は、2011年3月に発生した東日本大震災によるものであることは言うまでもない。2012年度以降はさらに減少しているが、こちらは主に電力需給関連で進む省エネ化によるものだけではなく、2011年度に続き単純に原子力の供給が大幅に減ったことによるもの。代替としての天然ガス、石油、石炭は増加した。
直近となる2023年度では、原子力は2014年度のゼロから回復したが、震災前と比べればその値は1/4程度。前年比で原子力とその他(再生可能エネルギーなど)は増加、天然ガスと石油、石炭、水力は減少、総量は減る形となった。
エネルギー供給の構造変化を詳しく見るために、それぞれの要素の全体構成比変移を折れ線・棒グラフ化したのが次の図。
第一次石油ショックまでは日本のエネルギーは石油に頼るところが大きかった。しかし一つの手段に傾注し過ぎることのリスクを二度の石油ショックで経験したため、大規模なエネルギー構造の転換が中長期的エネルギー戦略として実施される。以降、石油が一次エネルギー供給全体に占める比率は少しずつ、だが確実に減少を見せてい「た」。
代替エネルギーの筆頭として注目を集めたのは原子力。1970年の0.3%から、一時期は1998年に示した13.6%にまでシェアを拡大している。しかし多様な問題点を抱えているのも事実で、以降は供給量は横ばいか低減。比率も少しずつ減少。さらに震災以降は当時の政府の失策などを起因としてほぼゼロのまま推移する形となった。直近の2023年度時点でも4.1%。
一方で天然ガスや石炭など、旧来の化石燃料が再び見直されているのも注目に値する。適切な対応を施すことで従来のデメリット「二酸化炭素の排出量」を相当なレベルまでに抑えることができるようになった。あとは国内算出の採算性が十分に取れる、ブレイクスルー技術が登場すれば言うことはない。天然ガスは安定供給・保存を確保できれば、環境負荷が比較的低く、容易に使える燃焼エネルギーとして注目を集めており、昨今では利用比率・利用量ともに増加の傾向にある。
今件は2023年度、つまり2024年3月末までのものが反映されている。震災の影響が12年分以上反映された年度であり、その大きな状況の変化が確認できる。特に原発の大部分が停止したことによる変動があちこちで見受けられる。
震災やそれに伴う政策上の混乱(長期間に影響を及ぼし続ける致命的失策とすら表現が可能)による電力供給不足を受け、エネルギー供給比率をどのようなバランスに保つべきか、そして安定したエネルギーの供給をいかに維持するかが、これまで以上に重要な課題となっている。そのためにも、将来性のある技術(新規だけでなく、上に挙げた石炭の高効率・環境負荷の少ない利用など、既存技術の改善版で新たな道が開けるものも含む)開発が求められている次第ではある。
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