シカゴ穀物市場でショート・スクィーズ発生か、家計・飲食店への影響も必至
シカゴ穀物相場が急伸している。4月22日終値だと、CBOTトウモロコシ先物相場は昨年末から34.4%、大豆先物相場は同16.9%の上昇率を記録している。トウモロコシは2013年6月以来、大豆は14年5月以来の高値を更新している。なぜここにきて穀物相場が急伸しているのだろうか。
ここ数年は豊作状態が続いていたため、穀物相場は長期低迷局面が続いていた。潤沢な供給が国際需給を安定化させ、しかもトランプ前政権下における米中貿易戦争の影響もあり、農家にとっては極めて厳しい環境が続いていた。この状況を変えたのが、昨年の夏頃に発生した異常気象ラニーニャ現象だった。グローバルな天候不順で想定外の不作が発生し、穀物需給は一気に引き締まった。
米農務省(USDA)の最新報告だと、2020/21年度の米期末在庫見通しは、トウモロコシと大豆ともに13/14年度以来の低水準が見込まれている。特に大豆は18/19年度の9.09億Buに対して、僅か1.20億Buまで減少する見通しになっている。
21/22年度産の供給が開始されるまでは多くの時間が残されており、足元では現物市場で少ない在庫を奪い合う状況になっていることが、穀物相場の上昇ペースを加速させている。特に先物市場では4月30日に2021年5月物の受渡申告日の開始を控えているが、現物在庫のひっ迫化から売り手が受け渡し難でポジションの解消を迫られるショート・スクィーズ(玉締め)と呼ばれる現象が発生している可能性がある。
しかも、今季の米穀倉地帯では作付面積の不足が警戒されていることに加えて、北半球全体を襲った寒波の影響で作付け障害のリスクが警戒されている。また、南半球の南米ではブラジルで豪雨、アルゼンチンで乾燥が深刻化したことで、二毛作の生産に対する懸念が高まっている。21/22年度の供給が始まっても需給ひっ迫状態が解消されないリスクが浮上している。
需要サイドに目を向けると、世界的に飲食店の営業が再開され植物油の需要が高まっている。また、脱炭素で植物由来のバイオ燃料に対する関心も高まっている。供給不安が解消されない中で、需要環境の改善が進む中、一概に投機主導の高騰相場とは言えない状況になっている。
日本の消費者にとっても、植物油価格はもちろん、加工食品、家畜飼料を通じて食肉価格などの幅広い分野で家計に影響を及ぼす可能性がある動きになる。パンデミックで飲食店の営業は更に厳しい状況を迎えるが、コスト高圧力が最悪とも言えるタイミングで発生することも警戒すべきだろう。