ハワイ・キラウエア火山 静かなる脅威「ヴォッグ」とは
今月3日から噴火を続けているアメリカ・ハワイ島のキラウエア火山。その溶岩は住宅地を飲み込み、これまでのところ35棟の建物が焼失したと伝えられています。噴火活動は今後数か月間続くとみられており、被害の拡大が心配されます。
地面を這うように、溶岩が住宅地に忍び寄るさまは、まるで生き物のようです。溶岩の色は温度の指標でもあって、赤ければ600~800℃、オレンジ色ならば800~1000℃、そして黄色ければ1000~1200℃といわれています。いっぱんに、アスファルトが溶けるのが150℃、金や銀が溶けるのが1000℃です。
見えない脅威「ヴォッグ」
溶岩のほかに噴火に伴って脅威となるのが、「ヴォッグ(Vog)」です。
ヴォッグとは、火山を意味するボルケーノ(Volcano)とスモッグ(Smog)が合わさってできた言葉です。噴火の際に発生する二酸化硫黄などが、酸素や太陽光などに触れて化学反応を起こし、人体に有害な微粒子となって空気中を漂います。
ヴォッグは風に乗って広がるため、遠く離れた場所にも影響をもたらすのです。
ヴォッグの健康被害
ヴォッグは目、鼻、喉の痛み、頭痛、息切れ、喘息や気管支炎などを発症させることがあります。ヴォッグ発生時には呼吸器疾患の患者が通常の6倍、頭痛やのどの痛みを訴える人が3倍も増えたという報告もあるほどです。
ヴォッグの拡散
ハワイには北東風が卓越して吹いています。これは「北東貿易風」と呼ばれる風です。このため風下の一部の地域ではヴォッグの影響を著しく受けますが、キラウエア火山がハワイ島の南東部に位置していることから、ほとんどの噴煙は海上に流されていきます。
問題は、風が弱まったり、向きが変わったりした場合です。
もし風向きが南寄りに変われば、ハワイ島の北に位置するオアフ島やマウイ島などにもヴォッグが広がることになります。特に呼吸器疾患を持つ人は外出を控えるなど、注意が必要となります。
*参考リンク*
ヴォッグの拡散予測はこちら(ハワイ大学)