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南アフリカのビッグクラブ・ブルーブルズに「勝ちを」キヤノン永友洋司監督【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター

日本最高峰トップリーグに加入して4季目のキヤノンが、7月31日、南アフリカのブルーブルズと激突する。東京・町田市陸上競技場で19時05分、キックオフ。

南アフリカは代表チームが世界ランク2位というラグビー大国の1つ(日本は12位)。なかでもブルーブルズは南半球最高峰スーパーラグビーのクラブ、ブルズのメンバーにより編成される。

「楽しみ。我々は日本一になったチームでもないですけど、勝ちにはこだわっていきたい」

こう意気込むのはキヤノンの永友洋司監督だ。現役時代は日本代表のスクラムハーフとして活躍。当時の所属先だったサントリーの一員としては、2001年、ウェールズ代表に45-41で勝ったことがある。

引退後は03~06年にサントリーの監督を務め、09年からキヤノンのヘッドコーチ、12年からは同監督に就任した。新興チームのトップリーグ定着までのプロセスで、船頭役を担った。

以下、一問一答。

――ブルー・ブルズ戦。近づいてきました。

「素晴らしいチームとやらせていただきます。南アフリカのチームは全般として、セットピース(スクラムやラインアウトなど、互いが間近でつばぜり合いを演じるプレーの起点)が大きくて、重い。我々がステップアップするためにも、楽しみなゲームだと思います」

――対戦が決まった時の気持ち。

「スーパーラグビーは遠い存在でした。身近に思える存在ではなかった。ただ、ハイランダーズの田中史朗選手、一時レベルズにいた堀江翔太選手と、パイオニアとしてスーパーラグビーにチャレンジしてくれた日本人選手がいたことで、少し、身近なものになってきた。その意味で、ブルーブルズ戦が決まった時も驚きより楽しみという思いが強かった。ポテンシャルの違いはあれ、彼ら2人が日本人でもスーパーラグビーでやれることを示してくれていた。それと同じところに我々もチャレンジできる、と」

――勝利、狙いますか。

「我々は日本一を取ったチームではないですけど、やるからには1点差でも勝ちにこだわっていきたいです。日本代表も、ワールドカップ(9月・イングランド)で南アフリカ代表と戦います。南アフリカのチームは、大体ですが、皆、同じような戦い方をしてくる印象がある。ジャパンにワールドカップで戦うためのヒントを掴んでもらえるような試合をしていきたいとも思います。おこがましいですが」

――具体的には、「休ませない」。

「そう、ですね。僕の印象ですが、南アフリカの選手はディフェンスと身体を当てることが好き。相手のフィジカルなラグビーに、どう戦うか…と。ジャパンとキヤノンのアタックのシステムには、若干の違いはあるのですが」

――メンバー構成。

「向こうとも話をしました。メンバーは来日する28人が全員、出場すると。フレンドリーマッチではありますが、真剣勝負で臨んでくれるとは思う。逆にこちらに対しても、外国人枠(トップリーグではグラウンド上に最大2人まで)は撤廃してもらって構わないと言われれています」

――大会のポスターには、加入3年目のフランカー、アダム・トムソン選手。ラインアウトと密集戦の軸。

「間に合わないんです。彼は世界選抜にも入っている(8月15日、日本代表に相当するチームと対戦)」

――7月、肩の故障から復帰した小野澤宏時選手(日本代表歴代2位のキャップ数=国同士の真剣勝負への出場数を保持)は。

「使いたいんですけどね。次のブルーブルズ戦も大切ですが、その後のトップリーグで日本一を取ることにフォーカスを置いています。次もベストな選手を使うのは当然ですが、無理をさせずにプロテクトする選手は、プロテクトしたいと思っています」

――お互い、ワールドカップへのメンバー入りが確定していない多くの選手を出場させる見込み。

「相手は強い。チャレンジです。逆に、そういうチームと対戦できる選手たちがうらやましいですね。僕も現役だったら、やってみたいです。堀江選手、田中選手がやれるということをプレーで示してくれた。それに負けないくらいのものを示して欲しい。向こうのチームには、フランソワ・ホ―ハート(南アフリカ代表フルバック)がいます。この後、キヤノンに入ってくれる選手。今回もこっちでプレーしてくれればうれしかったんですが…。彼はワールドカップの南アフリカ代表のスコッドにも入っている。南アフリカではこれからカリーカップ(国内選手権)がある。彼にはそこでゲームフィットネスを高めて…(本大会のメンバー争いへ)、というのが南アフリカ協会の考えらしいのです」

――永友監督も現役時代、サントリーの選手としてウェールズ代表とぶつかりました。

「あの時は海外のチームは遠い存在でした。ただ、いまは近くなった。やれるということをお見せしたいです」

――単独のクラブが、海外列強国の集団と戦う意味。

「ひとつは経験。それが大きいですね。チームでやる内輪のゲームでは、お互いの手が知れている。国内のゲームも、その範囲をやや大きくしたものだという印象があります。ただ、海外のチームとのゲームは、そうはいかない。相手に関する情報も少なく、何を準備すべきか、というところから始まる。今回も(映像が入手しやすい)スーパーラグビーに出ていた(ワールドカップ組が軸となった)チームとは別なチームが来るので…。相手がどうのこうのというより、自分たちの力をどれだけだせるか。僕が海外のチームと対戦して感じたことは、その大事さです。自分たちのラグビーをすることにどれだけチャレンジするか、です」

――自分たちのラグビーとは。

「ボールを動かして、トライを取りに行きたいです。この暑い気候、湿度。相手にとって慣れない部分もあると思います。その意味では、幾分、我々にもアドバンテージはある。その優位性を活かせるようにしたい。もうひとつ、いまは学校が夏休みです。多くの中学生、高校生の選手も観に来てくれると聞いています。結果でもアピールしたいですが、海外の選手のプレーを観るいいチャンスでもあります」

――すごい選手を近くで観る。すごく勉強になる。

「なかなかないことですから。可能であれば、これから2019年(ワールドカップ日本大会)に向けて毎年、海外のチームと交流を持っていけたら。それは我々キヤノン以外のチームでもいいですが、少しでもワールドカップを知ってもらうきっかけになればと思います。これもひとつの普及活動だと思います」

――2019年といえば、使用予定だった新しい国立競技場が使えなくなる問題が噴出しました。

「これも悲しい現実で、国立競技場が使えなくなったニュースでラグビーワールドカップのことを知った方は多いと思うんです。それが現状だと認識しています。そんななか、選手たちのためにできることを頑張らせていただきたい。その観方でも、このゲームに意味はあります」

■町田ワールドマッチラグビー2015

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ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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