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なぜセリエAでローマ復活? 「三本柱」のデ・ロッシ改革で三笘薫不在のブライトン戦も「退屈なし」?

中村大晃カルチョ・ライター
1月20日、セリエAのエラス・ヴェローナ戦でのデ・ロッシ(写真:ロイター/アフロ)

ローマの監督交代は、少なくともここまでは大きく成功している。

ジョゼ・モウリーニョという稀代のカリスマ指揮官を解任してから、もうすぐ2カ月が経つ。ダニエレ・デ・ロッシが後を継いでから、ローマは公式戦9試合で7勝1分け1敗と絶好調だ。

唯一の黒星を喫した相手は、セリエAで首位を独走するインテルだった。ヨーロッパリーグ(EL)では、上田綺世が所属するフェイエノールトを沈めて16強進出を果たしている。9試合すべてでネットを揺らし、合計22得点とゴールを量産してきた(1試合平均2.4得点)。

その好調ローマが3月7日、ELラウンド16ファーストレグでブライトンを本拠地オリンピコに迎える。周知のとおり、三笘薫は負傷で戦列離脱中。しかし、世界で評価を高めるイタリア人監督ロベルト・デ・ゼルビと、ローマでの活躍で評価がうなぎのぼりのデ・ロッシの対戦は注目だ。

■デ・ロッシ体制のローマの戦績

セリエA開幕から20試合、ローマはモウリーニョの下で平均勝ち点1.45という成績だった(20試合8勝5分け7敗)。それがデ・ロッシ体制では平均勝ち点2.57と大きく数字を伸ばしている。

特に賛辞を集めたのが、デ・ロッシの思い切ったスタイルの変更だ。守備的な3バックでカウンターを重視したモウリーニョに対し、デ・ロッシは4バックに変えて攻撃志向を打ち出した。

『La Gazzetta dello Sport』紙は、監督交代を境に平均得点(1.6→2.86)、決定率(18%→40%)、パス本数(480.05→523.86)が大幅にアップしたと伝えている。

■なぜデ・ロッシ政権でローマは復活?

世界的名将の下で苦しんでいたローマを蘇らせたデ・ロッシの手腕について、『La Gazzetta dello Sport』紙は3つの柱があると報じた。フィジカルの鍛錬、メンタルのケア、団結重視の姿勢だ。

『La Gazzetta dello Sport』紙によれば、デ・ロッシの練習はモウリーニョ時代よりインテンシティーが高く、時間も長いという。前半25分までに2点を先行するも、76分に失点して1点差で勝利した初陣後、デ・ロッシは負荷を増したことがペースダウンの一因かもしれないと話した。だが同紙は、4-1で勝利した前節モンツァ戦で、ローマが最後までペースを保っており、コンディションの向上は確かと指摘している。

肉体を鍛える一方で、デ・ロッシはチームの心理面にも働きかけたようだ。選手たち全員と個別に話し、鼓舞するとともに自信回復に努めたという。モウリーニョはチームの限界を口にしていたが、デ・ロッシは選手たちに「ローマは強い」と発信。『La Gazzetta dello Sport』紙は、ロレンツォ・ペッレグリーニ、レアンドロ・パレデス、ステファン・エル・シャーラウィ、レオナルド・スピナッツォーラといった選手たちの復調がその成果と伝えた。

そして主力選手たちだけではない。デ・ロッシはフセム・アワールやレナト・サンチェスなど、出場機会が多くなかった選手たちもピッチに送り出している。9試合で第3GK以外の全員を起用してきたのだ。『La Gazzetta dello Sport』紙は、そうすることで全員が自分も構想に含まれていると感じられるようにしたと報じている。

■鍵となるのはプレスと即時奪回?

デ・ロッシは以前、デ・ゼルビにインスピレーションを受けていると話していた。新時代のイタリア人監督同士の対決は、非常に興味深いものとなるだろう。

イタリアの名将アッリーゴ・サッキは、『La Gazzetta dello Sport』紙で、「明確なプレーアイディアを持ち、積極的でモダンなプレーを通じて人々を楽しませようと考える若きイタリア人監督たち」の勝負は、「退屈することのないスペクタクルな試合」になり、「拮抗した勝負」と予想した。

現在のローマから「サッカーを楽しんでいる印象」を受けるというサッキは、来季のチャンピオンズリーグ出場権獲得も可能と主張。ただ、守備に難があることから、ブライトン戦では相手の速さが問題になり得るとし、「リズムを握らせないためのプレスと即時奪回で競う必要」を指摘している。

デ・ゼルビ率いるブライトンを相手に好勝負を演じれば、デ・ロッシの評価がさらに高まるのは間違いない。ローマのサポーターは、レジェンドとともに再び欧州の頂点に立つことを願っている。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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