藤井隆、好感度が上昇する一方で再評価すべき「クレイジーな芸風」
藤井隆の名前が毎週のようにトレンド入り
2022年に入り、タレントの藤井隆の評価があらためて高まっている。藤井の名前が毎週のようにSNSのトレンドに上がり続けている状況だ。メディアを中心にクローズアップされているのは、場をまとめる司会者としての力量である。
1月からポッドキャスト番組『Matthew’s Matthew マシュー南の部屋の中のマシュー』で別人格キャラのマシュー南が復活。
2月12日には東野幸治とダブルMCのバラエティ特番『あらびき団 ゴールデンSP』(TBS系/2月12日放送)に出演し、その番宣を兼ねて2月7日に朝の情報番組『ラヴィット』(TBS系)でも代打MCを担当。
4月から長寿番組『新婚さんいらっしゃい!』(ABCテレビ)で司会・桂文枝の後継をつとめることも発表。また、Netflixの恋愛リアリティ番組『ラブ・イズ・ブラインド JAPAN』でも司会に抜てきされている。
メディアで評価されている安定感と好感度
藤井の司会がウケている理由として、各メディアは抜群の安定感と好感度の高さを挙げている。
確かに『Matthew’s Matthew マシュー南の部屋の中のマシュー』の初回配信では、久しぶりに表舞台へ登場したゲスト・松浦亜弥に対して、プライベートな話をするとき「ダメならダメと言ってね」などと最大限の配慮をおこないながら、しかし「ぎりぎりを攻めても良い?」と松浦ファンが聞きたいところもしっかり押さえてトークを進行。司会者としての姿勢にリスナーから絶賛が相次いだ。
『ラヴィット』でも、同じく代打MCで登場した東野の冒頭約30分にわたる大回しを無理に制御せず、むしろそのやり方を尊重し、一歩引くところが印象的だった。それは『あらびき団 ゴールデンSP』でも同様。東野とゲスト・菅野美穂をしっかりと立てた。
的確に空気を読み、出しゃばらず、相手の話をちゃんと聞く。そういった能力は、素人カップルのエピソードトークが中心となる『新婚さんいらっしゃい!』でも大いに生かされるに違いない。
オードリー・若林も衝撃「ヤバイ人が現れたと思った」
一方、見直したいのが「お笑い芸人」としての藤井のおもしろさである。プレイヤーとしての彼は、メディアで現在躍る「安定感」、「好感度」という言葉とは真逆のものを放っていたからだ。
ブレイク時期は、吉本新喜劇の一員として舞台に上がっていた1990年代中盤。いわゆるオネエキャラに扮し、下半身の疼きを抑えきれず「体の一部がホット!ホット!」と白目を剥いて叫んでいた。誰も止めなければ延々とそれが続きそうな気配があった。バラエティ番組に出演しても下ネタが中心。「ホット!ホット!」と振付をして真似をする視聴者の子どもたちを、大人は複雑な気持ちで見ていたのではないか。
天然パーマとゲジゲジの太眉は、当時流行の若者ファッションとは正反対。今風に表現すればキモカワイイ系だが、どちらかというとキモキャラ的な見られ方が強かった。
過剰で爆発的なその芸風。現在、絶賛されている「安定感」という言葉とはかけ離れていて、危なっかしさに魅力があった。
藤井自身、2021年4月21日放送『あちこちオードリー』(テレビ東京系)に出演した際も「こんな見た目の人間が『ホット!ホット!』とかやっていたらクレイジーじゃないですか」と語り、オードリーの若林正恭も「ヤバイ人が現れたと思った」と頷いた。
「サイコバラエティ」でみせる藤井の異様さ
藤井のそういうヤバさを今でも堪能できるのが、彼が司会を務めるバラエティ番組『発見!仰天!!プレミアもん!!!土曜はダメよ!』(読売テレビ)である。
同番組での藤井は、共演者に容赦ないムチャぶりを浴びせる。そして「ぎこちない間」をあえて生み出す。『Matthew’s Matthew マシュー南の部屋の中のマシュー』での松浦への優しい対応とはまったく異なるものだ。さらに、もうひとりの司会者・YOUと突然、演劇調のノリを繰り広げて周囲を困惑させることも。
2021年7月17日放送回でも、オススメの若手芸人を紹介するお〜い!久馬(プラン9)に対して、「はい、では今の芸人のネタを解説してください」と笑いどころを全部説明させるなど、突き放した態度をみせた。
『土ダメ』はそういった数々の異様な進行もあって、「サイコバラエティ」と称されている。同番組では、1990年代から続くカオスな芸風が存分に生かされており、「芸人・藤井隆」を観ることができる。
ミュージシャンとしてのセンスは抜群で、MCの評価もうなぎのぼり。だが、お笑い芸人のなかでは間違いなく異端な部類に入る。今後は司会業が増えそうな気配だが、プレイヤーとしてどのような道を歩むのか。その動向に注目したい。