労働党大会の日程はなぜ発表されない
北朝鮮は昨年10月30日、朝鮮労働党中央委政治局の名で今年5月に第7回党大会を開催すると発表した。労働党大会は、原則的に5年に1回の開催となるが、1980年の第6回大会を最後に36年間一度も開催されなかった。
北朝鮮は党大会に向け故金正日総書記の誕生日(2月16日)を機に「人民生活を向上させよう」「国の電力生産を決定的に増やそう」「平進路線を徹底的に貫徹しよう」等350に及ぶスローガンを発表した。さらに2月24日からは「5月の党大会を輝かしい成果で迎えるため」生産や建設などを集中的に行う「70日戦闘」に突入したが、5月まで10日を切っているのに依然として開催日程を公表していない。こうしたことから、韓国のメディアでは「5月2日」から「5月5日」、さらに「5月7日」そして「5月10日」と様々な「説」が流れている。
予想日が前半に集中しているのは、韓国の情報機関「国家情報院」が先月2日に国会情報委員会への報告で「5月7日の土曜日に開催される」と伝えたことと関係している。こうしたことから韓国では「5月7日開催」が既成事実化されていた。
しかし、党大会がかつて土曜日に開催された前例がないこと、逆に過去3回(3回、4回、5回大会)がいずれも月曜日に開かれていることからここにきて「5月2日説」が急浮上している。特に5月2日は「70日間戦闘」の終了日にあたることから前回(第6回大会)の開催日もまた「100日戦闘」の最終日であったことから俄然有力視されている。
開催日が公表されないことから一部には5月開催は難しいのではとの見方も出ているが、全国各地で党大会に派遣する地域代表を推挙する動きが加速化されていることもあって予定どおり5月に開催されるのは間違いない。大会日程は、前回は5日間、前々回(5回大会)は12日間と長期間にわたっている。前例からして、今回も最低でも数日間は要するものとみられる。
前回の第6回大会は40日前に市・郡党代表者会があって、20日前に道・直轄市の代表者会があって、党大会一週間前に召集公示が出た。市・軍党代表者会→道・直轄市代表者会→招集公告→代表ら平壌到着という手順だ。
慈江道代表者会や直轄市である平壌市代表者会が4月19日~20日に開かれ、党大会に送る代表らの選挙が行われたことから5月10日の確立が最も高い。北朝鮮にとって「9」という数字がラッキーナンバーであることから一日前倒しで、5月9日の可能性も否定できない。
北朝鮮が開催日の公表を控えているのは、開催を前に軍事面での成果をまだ手にできてないことと関係しているようだ。特に、4月15日の中距離弾道ミサイル「ムスダン」の発射失敗が影響しているようでもある。
北朝鮮は「あらゆる分野で輝かしい成果、業績でもって党大会を祝おう」をスローガンに掲げているが、「過去20年間で最強」の国連の経済制裁と「前代未聞」の外交圧力にさらされている状況下にあっての目覚ましい経済成果や外交成果は期待薄である。そうした中、唯一、誇れるものがあるとすれば、核とミサイルの分野である。仮に、金正恩政権が党大会で核大国の宣言を目指すならば、核保有国としての地位を不動にしたいのならば現在進めている核とミサイル開発、実験を急ぎ、完成させなければならない。
金第一書記は3月10日に「核弾頭の適用手段の多角化を力強く推し進め、地上と空中、海上、水中の任意の空間でも敵に核攻撃を加えられるよう準備すべきだ」と関係者に指示し、15日には「新たに研究製作した核弾頭の威力を判定するための早い時期に核爆発実験と核弾頭装着が可能なあらゆる種類の弾道ロケット(ミサイル)試験発射を断行する」と述べていた。
北朝鮮は2月23日の最高司令部の重大声明で朝鮮半島有事の際の第一次攻撃対象は「青瓦台(韓国大統領府)と韓国内の基地と公共施設」で、第二次攻撃対象は「アジア太平洋地域の米軍基地と米本土」であると公言した。
この声明に基づき、翌3月10日には韓国を狙った射程500kmの弾道ミサイル「スカッド」を、18日には日本に照準を定めた射程1300kmの中距離弾道ミサイル「ノドン」を発射させ、今度はグアムを標的に定めた「ムスダン」を発射したところ失敗してしまった。
失敗の原因が究明されない限り、短期間での再発射は容易ではない。通常は半年かかるとされている。「ムスダン」が成功しなれば、米本土を攻撃目標とする長距離弾道ミサイル「KN-08」やその改良型の「KN-14」の発射実験もできない。どちらにしても現状では党大会までには間に合いそうにもない。しかし、核実験は可能だ。
党大会開催が5月10日ならば、1週間前の5月3日に公示される。となると、核実験はその前、即ち4月中にあり得る。仮に5月2日に内定しているなら、4月25日の朝鮮人民軍創建日が公示日となる。ということは、カウントダウンに入ったということだ。