平昌パラリンピックが始まる前に【パラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)】を知っておく!!<1>
昨年7月にモスクワで開かれた国際パラリンピック委員会(IPC)のフォーラムに於いて、「ワールドワイドに障害者スポーツの名称を統一する」ことを目的に、パラリンピック競技の名称変更が発表されました。
IPCの指針によると、各スポーツが「パラ+競技名」となり、2017年までは名称の移行期間として併用を認めていますが、「ピョンチャン パラリンピック」が開催される2018年からは、新たな指針に沿った競技名に一本化。
そのため、「アイススレッジホッケー」も「パラアイスホッケー」の名称に統一され、公認大会が行われます。
2018年を待たず、日本の競技統括団体も、今日から「一般社団法人・日本パラアイスホッケー協会」の名称に変更となり、都内で発表会を開催(予定)
新たな名称になるのに際して、「これだけ知っておけばOK!」な、パラアイスホッケーの基礎知識をお届けしましょう。
▼パラアイスホッケーとは?
アイスホッケーと同じアイスリンクで、下肢に障がいを持つ者が、スレッジ(Sledge=そり)に乗ってゴールを目指す。
スピード感あふれる試合展開と、鍛え抜かれた肉体が激突し、氷上の格闘技と呼ばれるアイスホッケーの魅力に加え、大きな音を立てながらスレッジがぶつかり合う「パラアイスホッケー」の激しさは、まさしく「氷上の“超”格闘技」!
「ピョンチャン パラリンピック」の開幕まで200日あまりとなって、パラスポーツへの注目度も高まってきましたので、まず何はさておき「パラアイスホッケーは、どんなスポーツなのか」から紹介します。(尚、内容は全て記事公開時のものとなります)
▼発祥と歴史
競技の発祥は1960年代のスウェーデン。
アイスホッケーが盛んな国であるとともに、福祉への意識も高いとあって、障がいを有する選手のために、アイスホッケーに代わる競技として考案されました。
1960年代後半にはヨーロッパの近隣諸国にも伝わり、国際大会が開催されるようになったのを皮切りに、競技は各国へ広まっていき、1994年の「リレハンメル パラリンピック」から正式種目に採用。
冬季大会では唯一のゴール型競技であることから、アメリカ3大ネットワークの一つNBCテレビが、2014年ソチ大会の決勝戦を地上波で生中継するなど、欧米では高い注目度を誇るスポーツです。
▼日本での第一歩
日本で行われるようになった大きな契機は、1998年の「長野パラリンピック」開催決定でした。
1993年にノルウェーから講師を招いて、競技講習会が開かれたのに続き、1994年には長野に初めてのクラブチームが誕生。
翌年には北海道と東京にもチームが結成され、国内大会が行われました。
▼競技概要
リンクだけでなく、ゴールポストやパックも、アイスホッケーと同じ物を用います。
大きく異なる点は、選手が一本ないし二本の刃のついたスレッジの上に設置されたバケット(Bucket Seat=一人用座席)と呼ばれる部分に腰掛けて、プレーをすること。
プレー中の選手が氷面に近いため、パックを扱うスティックはアイスホッケーに比べて短く、1メートル以内。
またパックを扱うブレード面と反対側のグリップの先には、氷を掻いてスレッジを進める際に用いるピック(Pick=小さな突起)がついています。
試合中の選手たちは、両手に持った2本のスティックを、上下に持ち替えながらプレーをすることで、スレッジを進めながらパックを扱いゴールを狙います。
その中で、右手のスティックから左手のスティックへ。そして、また右手のスティックへリターンパスと、アイスホッケーでは決して見られない ”自分から自分への連続パス” といったプレーが飛び出すのも、パラアイスホッケーの大きな特徴です。
▼ルール
パラリンピックや世界選手権で用いる国際ルールの主な内容は、以下のとおりです。
★ 出場可能な選手はGKを含め15人以内。
★ アイスホッケーと同じく、プレーヤー(FWとDF)5人とGK(ゴールキーパー)が同時に出場するものの、体力の消耗が激しいため、こちらもアイスホッケーと同じく、いつでも選手の交代が可能。
★ 試合はレフェリーやラインズマンのホイッスルによって、プレーが止まる度に時計もストップ。
★ 正味15分間の「ピリオド」を戦い終えると15分のインターミッションを挟んだ後、次のピリオドへ進み、3つのピリオドを戦い終えた時点での合計得点で勝敗を決する。
★ 第3ピリオド終了時で同点の際は、プレーヤーの数を4人に減らして、サドンビクトリー方式の延長戦を実施。(通常は5分間。決勝トーナメント、3位決定戦などは10分間。優勝決定戦は15分間)
★ 延長戦でも決着がつかない場合には、サッカーのPK戦に相当するシュートアウトによって勝敗を決定。
★ 激しいコンタクトスポーツとあって、危険なプレーに対しては、レフェリーがペナルティを課す。
★ ペナルティの内容は、ほとんどアイスホッケーと同じながら、自らのスレッジの先端で相手選手の側面にチェックをした「ティーイング」のペナルティは、パラアイスホッケー独自のルール。
▼女子選手も登場
近年で特筆される点は、女子選手が増え始めてきたことで、ヨーロッパや北米では、ナショナルチームを発足させる国も見られます。
これから女子選手が増えていくと、パラリンピックで「女子パラアイスホッケー」が開催される日が、やってくるかもしれません。