Twitterファイナンス #営業利益 ▲5億ドル(735億円)の赤字から見える社員大量解雇の理由
KNNポール神田です。
『イーロンマスクが社員の半数を解雇するその理由〜営業利益で5億ドルの損失〜』というnoteを書いた。そこから加筆。
https://note.com/knnkanda/n/nfca517da9110
https://www.bloomberg.co.jp/quote/TWTR:US
ツイッターは上場廃止、最終の『時価総額』は410億ドルだった。
時価総額は株価53.7ドル×発行株式数 7億6,524万株で算出される。
買収金額は440億ドル(約6兆4,680億円)
時価総額との差額 30億ドル @147円だけでも4,410億円だ。
株主は1株当たり54.20ドルを受け取り、ツイッターは2022年11月8日をもって非公開化された。
役員も解雇され、実質、イーロン・マスクただ一人の所有のプライベートな企業となった。
■『固定費』削減に走る理由は、1日400万ドル(5.8億円)年間14.6億ドル(2,146億円)の損失改善
https://twitter.com/elonmusk/status/1588671155766194176
1日5.8億円、365日で考えると、年間2146億円の損失となる。
■イーロン・マスクは400ドルのランチも削減へ
https://twitter.com/knnkanda/status/1594565401739788293/photo/1
■イーロン・マスクの考える固定費と社員の支払いコストのちがい
社員は25ドルと言い、経営者は400ドルと言う…この差は16倍。
社員は一人当たりの支払う金額、経営者はそのサービスを提供するすべてのコストで考えているからだ。イーロン・マスクは、1300万ドル/365日=400ドル、つまり1日あたり89人分の400ドルのコストで割っている。
https://twitter.com/_hawko/status/1591909771124539393
ツイッターは、年間1300万ドル(19.1億円)ものフードサービスのコストを負担している。
https://twitter.com/elonmusk/status/1591935035367723008
これはとてもわかりやすい。
社員が支払うコストへの会社側の負担も、稼働率がピークで1/4であればコストは4倍に跳ね上がる。しかも社食はウイークデーのみで昼がメインだ。平均稼働率が10%のサービスを維持するコストは、給与以外の固定費として重くのしかかる。
社員は25ドルと言い、経営者は400ドルと言う。 どちらも事実。 社員は一回に支払う社食のランチ代。 経営者は、社員食堂にまつわる関連サービスの総コスト×利用率で計算している。
それが、ピーク時で25%で平均10%であれば、イーロン・マスクは、1300万ドル/365日=1日あたり3万5,616ドル
1人当たり400ドルだと、89人分の400ドルのコストで割っていることとなる。稼働率10%として、890人の社員分だ。
また、固定費は、土日が休みでディナーがなくてもも、サービスの場所代、雇用や保険などは365日分発生する。
1300万ドル(19.1億円)のコストが平均して1割の利用率ならば、130万ドル(1.9億円)にして、89人が年間245日利用するならば、1日59ドルで外食してもらったほうが安い。
それでも9割の1170万ドル(17.1億円)の削減になる。
ツイッターの財務諸表を、ケース事例として大学の『ファイナンス』のエクステンション講義でとりあげてみた。
サイバー大学CUEX
■twitterの財務諸表(10K)をダウンロードする
米国の上場企業の財務諸表はいとも簡単に入手できる。
『SEC 10K twitter』という呪文で検索すれば良い。
『SEC』とは、アメリカ証券取引委員会(Securities and Exchange Commissionの略)
『10K』フォームとは、米国上場企業の『年次報告書』のこと。日本の『有価証券報告書』に相当する。
Form 10-K (年次報告書) :年度決算時に提出義務が報告書
Form 10-Q(四半期報告書) : 四半期毎に提出義務がある報告書
Form 8-K (臨時報告書): 重大な事象が発生した場合に提出義務がある報告書
他にも…
DEF 14A(proxy statement) : 株主決議前に株主に提供される決議権委任勧誘状
S-1 (registration statement) : IPOの前に企業が発行する発行届出書 などがある。
『SEC』の『EDGAR』を使って、検索も可能だ。
『エドガー、Electronic Data-Gathering, Analysis, and Retrieval system』日本の金融庁の『EDINET』に相当
https://www.sec.gov/edgar/searchedgar/companysearch
『twitter』で検索してみた。
https://www.sec.gov/edgar/browse/?CIK=1418091&owner=exclude
https://www.sec.gov/ix?doc=/Archives/edgar/data/1418091/000141809122000029/twtr-20211231.htm
■twitter の2021年度の年次報告書 10K
SECに申請している膨大な10Kな資料があるが、3年間の推移がわかるアニュアルリポート2021の64Pを参照してみた。
膨大な情報もDeepLで翻訳しながらで読み込める。
https://s22.q4cdn.com/826641620/files/doc_financials/2021/ar/FiscalYR2021_Twitter_Annual_-Report.pdf
PDFのドキュメントでも、『GoogleSpreadSheet』へコピーして活用できる。英語をそのままDeepLで翻訳すると日本語の『損益計算書P/L』として見えてくる…。
2021年の『売上』は50.7億ドルと伸びているが、同時に『研究開発』12億ドル、『マーケテイング』11億ドルも伸びている。何よりも影響をしているのが、『訴訟和解金』7億ドルだ。
これにより『費用』55.7億ドルと売上50.7億ドルよりも増大となり、営業利益は▲4.9億ドルとなった。
約5億ドル×147円で考えると…735億円もの赤字だ。
本業での利益は『営業利益』で考える。『EBIT DA(営業利益+減価償却費)』などもそのとおりだ、減価償却や営業外損益や特別損益、各国によって違う借入の利息や法人税の税率などを差し引きした『当期純利益』では、真の企業の実態は見えにくいからだ。
イーロン・マスクの言うところの、1日400万ドル、年間14.6億ドル(2,146億円)の損失改善は、当然と思える。
2019年度の営業利益は、3.6億ドル、2020年度は0.2億ドルなので、少なくなとも、2019年度の3.6億ドル程度の営業利益を目指したいところだ。
グラフで3年度の損益計算書のデータを比較すると一目瞭然だ。
GoogleSpreadSheetを使うのはこのように『グラフ化』して『共有』することもできるからだ。しかも無料だ。
■『利益』が生まれるのは『売上総利益>固定費』の関係性
そこでもっと、利益の出し方がわかる『5つの箱』で分類してみた図がこちらだ。
この『P/L5つの箱』の構成要素は次の5つだ。
1.売上の箱
2.変動費の箱(売上に応じて変化する費用)
3.売上総利益(粗利)の箱
4.固定費の箱
5.利益の箱
そして、死守すべきことはひとつだけ!
④を上回る③だ。
『固定費』を上回る『売上総利益』がでれば必ず『利益』はでるからだ。
2021年のP/Lを『5つの箱』で見れば、今期の2022年の利益を出す方法は見えていくる。
まずは『本業の利益』である『営業利益』を生み出すことだ。
『赤字の原因』は、『売上総利益』が『固定費』よりも低いことにある。
そのためには、
1.売上をあげる 2.変動費を落とす、3.固定費を落とす
の3つしかない。
そこで目をつけたいのが、37.7億ドルにもふくれあがった固定費だ。費用全体では55.7億ドルだ。総費用に占める固定比率は67.6%に及ぶ。『変動費』と一緒にされている『固定費』を『5つの箱』にきっちりと分類することによって、損益分岐点となる『固定費』が明確となる。
1,300万ドルに及ぶランチサービスのコストも0.1億ドルの『一般管理費』として、固定費に計上されているはずだ。
2019年は変動費を入れても30億ドルだった。2年間で25.7億ドルも費用が増えている。
イーロン・マスクの言うところの1日400万ドル、年間で14.6億ドルのコストカットの源泉はこのあたりだ。
固定費の37.7億ドルを1/2の大改革すれば、18.85億ドルとなり、2021年であれば、13.95億ドルの営業利益の黒字がキープできる。
少なくとも、2022年11月の半数ものレイオフで固定費の削減とそれにともなう特別損失で黒字化は無理でも、2021年の赤字体質は、2022年年末のギリギリで、リカバーできているのかもしれない。
2023年は、従業員からの訴訟リスクを除けば、4半期ごとに利益を出せる体質になれば、再上場での期待値が高まることだろう。
この『5つの箱』で『損益計算書』を考える思考が身に付ければ、小学生でも利益の出せる理由が見つけられる。
同様に『貸借対照表(B/S)』も、5つの箱で考えるとわかりやすい。
『貸借対照法(B/S)の5つの箱』
P.63
『貸借対照法(B/S)の5つの箱』からわかるtwitterのファイナンス
ツイッター社の資金状況、短期的には赤字であったが、
負債合計の67億ドル以上の流動資産79億ドルを持っている。
現金が21億ドルあり、流動負債は13億ドル。
資金的にもゆとりがある。
累積赤字と赤字収益でも12億ドル。純資産が73億ドルあるので61億ドル(8,967億円)規模の純資産は残る。
イーロン・マスクが購入した440億ドルと総資産との差額は300億ドル。これが『Goodwillのれん』として300億ドル分計上できる。
最後の時価総額は410億ドルだったので、PBR株価純資産倍率は5.6倍。
現在の固定費37.7億ドルを削減し、売上総利益は32.7億を高めると、営業利益▲4.9億ドルは黒字化しやすい。
財務的には純資産が73億ドルと安定しているので、2022年は大胆な固定費カットでの特別損失を生みだすが、2023年は利益の出やすい体質になりそうだ。しかしながら、上場廃止してしまったので、今後は分析手法は、イーロン・マスクのツイートから類推するしかなさそうだ。