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WBC代表選手たちがオープン戦で見せた責任感

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
昨年のプレーオフで大活躍したバエス選手もプエルトリコ代表として臨戦態勢を整える(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

「シーズンが終わってから休む時間もあったし、しっかり準備もしてきた。体調は万全だし、すぐにでもプレーできる状態だ」

まだオープン戦が開幕する前、プエルトリコ代表としてWBCに初出場するカブスのハビエル・バエス選手が、嬉しそうに答えてくれた。昨シーズンはプレーオフで大活躍し、ワールドシリーズでも全試合先発出場を果たし108年ぶりの優勝に貢献した24歳は、いかにもWBCを楽しみしている様子だった。

そして今になって、バエス選手の言葉が嘘ではなかったことが判明した。オープン戦が開幕してからというもの、他の選手と比較しても明らかに仕上がり具合が早く、躍動感に溢れるプレーが光った。もちろんチームの方針でフル出場こそしていないが、バエス選手本人はもうフルイニング戦える状態まで仕上がっているようだ。

侍ジャパンを含め韓国代表、キューバ代表、台湾代表などはすでに代表チームとしてキャンプを実施し、オープン戦も何試合も消化している。しかしメキシコとマイアミで行われる第1ラウンドに回る各チームは、代表チームとして練習できるのはほんの数日だけ。オープン戦も2試合だけで本番に臨まなければならず、個々の選手の調整具合が勝敗の鍵を握っていると言っていい。

個人的に過去3回のWBCを取材してきた限り、代表選手たちは長いシーズンを見据え、そのほとんどがオープン戦の延長戦としてWBCも調整の場として捉えている感が否めなかった。また代表監督も、投手起用に関してはリリーフ投手に連投させずローテーションを組んで起用するなど、明らかに“本番”モードではなく、オープン戦対応だった。だが今年はバエス選手のようにWBCに心身ともに準備している選手が多いように感じられるのだ。

「代表に選ばれた時点で3月10日から試合が始まることは分かっていたことだ。選手みんなが同じ考えたと思うし、しっかり戦う準備はしてきたつもりだ」

米国代表として同じくWBCに初出場する、ダイヤモンドバックスのポール・ゴールドシュミット選手もその意気込み通り、しっかり準備を整えて代表チームに合流しようとしている。

ここまで(3月5日)のオープン戦の成績をみても、ネルソン・クルーズ選手(ドミニカ代表)、ブランドン・ニモ選手(イタリア代表)、クリスチャン・イエリチ選手(米国代表)らが打率上位に名を連ねているなど、皆自覚を持ってWBCに臨もうとしているのが窺える。

こうした個々の選手たちのやる気が結集すればかなり面白い大会になるはず、と期待も膨らんでいる。ただ何度も繰り返すが、侍ジャパンのように「世界一奪還」などという悲壮感はまったくない。とにかくWBCでしか味わえない国別対抗戦を真剣に楽しもうとしているだけだということは忘れないでほしい。

選手のやる気がグラウンドに溢れていれば、それだけで我々も十分にWBCを楽しむことができるはずだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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