米国への親近感78.5%…日本の諸外国への親近感の実情をさぐる
・日本人が米国に抱く親近感は78.5%、韓国は37.6%、中国は18.8%。
・強い「親しみを感じない」は中国が最大値で42.0%。
・前年比では米国の親近感が大幅減、インドと中国が増加。
内閣府は2017年12月、外交に関する世論調査(※)を発表した。次に示すのはその調査結果を基にした、日本人の諸外国への親近感の実情。調査対象母集団に対し諸外国、あるいは地域毎に親しみを抱いているか否かに関して、「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」「分からない」「どちらかというと親しみを感じない」「親しみを感じない」の5選択肢を提示、その中から自分の心境にもっとも近いもの一つを選んでもらい、その結果を集計したのが次のグラフ。
留意すべきは赤系統色の回答部分。「(どちらかというと)親しみを感じない」は回答者の心境的に「親しみの対象にならない」(無関心的な部分。「分からない」とは異なる)と「憎悪の対象となる」の2通りに解釈できる、可能性として存在すること。赤系統の回答率が多い国・地域が、日本から「憎まれている」わけでは無い。単に好まれていない、親しみを覚える対象にはならないだけの話。
結果を見るとまず目に留まるのが、米国への親近感の高さ。親しみを覚えない人は2割足らずで、今回の提示された国などではもっとも少ない。これは元々同国との間には親密な関係が継続されていたのに加え、2011年3月の東日本大地震・震災における「オペレーション・トモダチ」をはじめとした、同国による大規模な救援活動の実態を見聞き、あるいは実際に支援を受けた結果によるところが大きい。同作戦から6年以上が経過したが、高水準を維持しているのに違いは無い。他方、詳しくは後述するが前年と比べて親近感が減少しているのは、現大統領の選挙前後の言及やその報道姿勢が少なからぬ影響を示しているものと考えられる。
ついでヨーロッパ諸国、東南アジア諸国が続く。強い親しみを感じる意見は米国と比べて半数以下だが、親しみを感じる派が多いことに違いは無い。伝えられる機会の多さとともに、マイナスイメージでの情報伝聞が少ないのが要因か。
次いで親近感の上で高い値を示しているのはインド。距離的に身近なことに加え、実生活でも接する機会が多い、さらに対中問題などで昨今日本との交友を深めている点などが数字に表れているものと考えられる。あるいは「あまり悪いイメージは持たないし、何か悪影響を受けた話も聞かない。それなりによい付き合いをしているのでは」との「何となく、よい隣人」的な印象なのかもしれない。
他方、ロシアや中国など、いわゆる(元)共産圏諸国との親近感は大よそ薄め。中国では「親しみを感じない」との強い非親近感(上記にある通り「拒絶感」と同意ではない)の項目では他の国を抜きんでて42.0%となり、高い値を示しているのも印象的ではある。
好意的な選択肢「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」を足した値を「親近感」と設定。そして今回の2017年分と前回2016年調査分双方で選択肢として挙げられた国に関して、その変移を算出した結果が次のグラフ。
インドと中国が大きめの増加、米国が大きな減少、韓国とロシアが小幅な減少。韓国の減少は誤差の範囲ではあるが、米国の下げ方が気になるところ。これは現大統領のトランプ氏のさまざまな言動や政治的行動の実態に加え、その伝えられ方が小さからぬ影響を示しているものと考えられる。実態問題として、米国における日本への姿勢に大きな変化は生じていないのだが。
2014年調査時に中韓への親近感が大きく下がった要因となった沖縄や尖閣諸島、東シナ海、竹島問題などのさまざまな対立は、実態が改善したわけでは無い、それどころか悪化しているのが現実。しかし親近感の値は少しずつ持ち直しつつある。一般報道における伝えられ方の変化(ニュースソースとしての新鮮味の観点から優先順位が下がった)が、親近感にも影響を与えた可能性は否定できない。
■関連記事:
米中ロ韓への日本人の親近感の現状を年齢・性別でグラフ化してみる
※外交に関する世論調査
2017年10月26日から11月5日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は1803人。男女比は839対964、年齢階層別構成比は10代39人・20代129人・30代200人・40代308人・50代249人・60代402人・70代以上476人。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。