自虐ネタの就活生はウソつきよりも負ける理由~コスパのいい就活2021卒#3

面接風景(写真はイメージ)。ウソはよくないが自虐ネタはもっと低評価。その理由は?(写真:アフロ)

◆ウソはついていないのに未内定

「コスパのいい就活」シリーズ第三弾。前回、「今どき、ウソはバレるって」という話をまとめました。

就活生がウソまみれでたどる末路~コスパのいい就活2021卒#2(2020年2月23日公開)

これは私だけでなく他のキャリアカウンセラー・就職課職員などもよくするようです。

で、この話を聞いた就活生は、その大半がアドバイスを受け入れてくれる模様。

それはいいのですが、では、志望企業の内定まで必ず行くか、と言えばそんなことはありません。

志望企業に落ちてしまう学生も、ある程度、出ています。

就活への行動量が足りない、志望企業のレベルが高すぎる割に基礎知識が不足、などの要因もありますが、今回はそこは省略。

ウソをついていないのに、落ちる理由として大きいのがウソの裏返し、すなわち、自虐ネタです。

◆自虐ネタに走る就活生の特徴は

「私なんか大したことなくて」

くらいを、それも面接中に挟む程度なら謙遜とも取れます。

自虐ネタとは、これを最初からエントリーシートに書いてしまう学生のアピール方法を指します。

中には「つまらない学生生活でしたが、その中でも~」などと出してしまう就活生も。

この自虐ネタ、わざわざ「これ、使うと思うのですが、どうですか?」と私に聞いてくる就活生もいます。

こうした就活生の特徴としては、

素直で人の話を聞きやすいこと

テレビCMやバラエティ番組などをよく見ていること

自分に自信が持てない

などがあります。全部当てはまるわけでなく、どれか一つ、もしくは複数に該当します。

テレビCMだと、いわゆる自虐CMですね。

かなり古いところだと、セガサターンの湯川専務シリーズとか。

ちょい古いところだと、「おしい!広島県」(2012年、有吉弘行など)とか、日清カップヌードルの「おバカ大学」シリーズ(2016年/ビートたけし・矢口真里など)とか。

バラエティ番組でもお笑い芸人が自虐ネタを展開する方が結構います。

こうした影響も受けている就活生が就活でも使えるのでは、と考えるようです。

一番大きい要因は、自信ですね。

日本人の若者が自信を持てないのは今に始まったことではなく、昔からです。

が、それをこじらせて、就活で自虐ネタに走ってしまうのはここ最近の傾向でしょう。

◆自虐ネタは信頼関係があるからこそ

では、自虐ネタがなぜ就活では使えないのでしょうか。

理由は「信頼関係の有無」「時間」「自己開示の責任」の3点あります。

まず、1点目は「信頼関係の有無」です。

テレビCMやバラエティ番組で出る自虐ネタ。これらはいずれも、自虐ネタを出すCM提供企業・自治体や芸人・タレントなどとユーザー(視聴者など)との間に信頼関係が成立しています。

「信頼関係」とは、自虐ネタを展開する企業やタレントであっても、ユーザーからすれば「この商品は品質が高い」「このタレントはそういう人であえて面白いことを話している」などと考えられるかどうかです。

この「信頼関係」とは「認知度」と言い換えてもいいでしょう。

認知度が高いタレントは自虐ネタに走っても、そのブランド価値が下がることはありません。

その点、就活生はどうでしょうか?

基本的に企業側は就活生のことをよくわからない状態で選考書類を読み、あるいは、面接に臨みます。

一次選考が書類選考だったとしましょう。

就活生A「私はすごい学生生活を送りました」(ウソまみれ)

就活生B「私はつまらない学生生活でした」(自虐)

書類選考であれば、書いてあることが全て。

ということは、就活生Aがウソをついていても、採用担当者は、

「すごい学生生活だったのか」

と受け止めて、次の選考に回そうか、と考えます。ところが。

就活生Bの自虐ネタについて採用担当者は、それがどの程度の自虐なのか、よく分かりません。書いてある内容で全て判断する以上、

「つまらない、と書くのであれば本当に大したことなかったのだろう」

としか、判断できません。かくて、自虐ネタの就活生はウソをつく就活生よりも苦戦することになります。

◆挽回するには時間が必要だが

自虐ネタが就活で使えない理由の2点目は「時間」です。

テレビCMやバラエティ番組、最近だとユーチューバーも該当しますが、これらはいずれも、時間があります。時間とは自虐ネタを出してから挽回する時間です。

自虐ネタを出すバラエティ番組やCM、ユーチューバーなどはよくよく見ていくと、自虐一辺倒で終わっていません。

ちゃんと笑いを取るようにしたり、他の出演者がフォローするなどしています。

そのための時間がありますし、短くまとまっているものは、その作り手(または芸人・ユーチューバー)が知恵を絞ってまとめた結果です。

こちらも、就活生には時間がありません。

書類選考だと時間ではなく、スペースですね。1000字以上書ける自由記述式のエントリーシートならまだしも、大体は数百字程度。それで自虐ネタから始めてアピールがきちんとできるわけがありません。

面接も同様です。

自虐ネタを出してから、自分のアピールをちゃんとするまでの時間はほとんどありません。

◆自己開示の責任をわかっている?

自虐ネタが就活で使えない理由、3点目は自己開示の責任です。

自虐CMを展開する企業や自治体などはある程度、批判されることに慣れています。

これは芸人・タレントやユーチューバーなども同じ。

まあ、ときどき、批判をきちんと受け止められない方がいますが、それはさておき。

企業、自治体や芸人・タレント・ユーチューバーなどは、批判されたとしても、きちんと自分(または自社)をアピールする必要性を熟知しています。

だからこそ、自虐ネタに走っていても、極端にブランド価値を下げてはいません。きちんと自分(または自社)のことをアピールしています。

これは言い換えれば、自己開示の責任を果たしているのです。

その点、就活生の自虐ネタは、自己開示の責任を果たしていません。

就活は企業からすれば採用活動です。正社員一人を採用するには数百万円以上かかる、と言われています。それだけ高い費用を出し、しかも、社員によってはその企業をより成長させるかもしれません(その逆もあり)。

そうした社員を採用するために、企業は就活生が想像する以上に慎重に判断していきます。

その際、就活生は知らず知らずのうちに、志望企業に対して自己開示の責任が発生しています。

もちろん、「恋人いるの?」などセクハラに当たる質問はアウト。

信条・宗教関連も答える必要はありません。

ここでいう「自己開示」とは、そうした社会的にアウトな内容ではなく、学生のアピールポイントです。

このアピールポイントを自虐ネタから始めると、それは単に卑屈、と取られるだけです。

社会人だけでなく学生も、行動すべてには責任が伴います。自虐ネタは、その責任を取れない、取りたくないと表明しているも同然。

そうした就活生を好ましく思う採用担当者はまずいないでしょう。

かくて、自虐ネタに走る就活生はどんなに優秀でも、就活を前に進められないことになってしまうのです。

◆自虐ネタではなく経過を話そう

ここまで読んだ就活生は、「だったらウソをつこう」と考えるかもしれません。

が、就活生のウソは大半がバレることは前回書いた通り。

では、就活生はどんなアピールが有効なのでしょうか。

これは簡単で経過をアピールすればいいのです。

この話は、詳しくは2019年に出した記事をどうぞ。

就活生のエントリーシートがしょぼすぎる!~「即戦力」の誤解で選考落ち地獄も(2019年2月27日公開記事)

仮に就活生が大したことない、つまらないと考えたガクチカ・自己PRであっても、経過を丁寧に書いてあれば問題ありません。その経過から採用担当者は、自社に合うかどうかの見込みを判断していくからです。

就活においてウソは致命傷となります。

そして、自虐ネタはウソ以上に低評価となり致命傷となります。どう考えてもコスパが悪すぎるので、就活生は自虐ネタに走らないようにしてください。

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。2018年は肩書によるものか、バイキング、ひるおびなどテレビ出演が急増。ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。主な著書に『大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)『女子学生はなぜ就活に騙されるのか』(朝日新書)など累計28冊・55万部。

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