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「いい選手になって上のリーグに行ければ誇れるサインに」。加藤恒平が子供たちへのサインに込めた想い。

河治良幸スポーツジャーナリスト
「こんなに多くの子供たちにサインをすることはないので、嬉しかった」と語る加藤。(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

シリア戦と最終予選のイラク戦に先立つ欧州組合宿は最終日のメニューを終えた。選手は見学に来たファンの子供たちと”交流会”を行い、ハイタッチとサインで触れ合った。

もちろんブルガリア1部のベロエから初招集された加藤恒平の姿も。本田圭佑や香川真司といった選手に混じって、笑顔を浮かべながら一人ひとり丁寧にサインしていた。

「たぶん誰か分からないでサインもらっている子も、もちろんいたと思うんですけど」

そう語る加藤だが、そのサインには彼なりの想いが込められていた。「僕がもっといい選手になって上のリーグに行ければ誇れるサインになると思うので、そういうサインになるように頑張ります」。自分がここからステップアップしていけば、子供たちが”あの時、加藤にもらったサインだんだよ”と自慢できるものになる。それは子供たちへのメッセージでもあり、加藤の想いでもある。

ハリルホジッチ監督は「加藤は高い能力を持っている選手だが、もっと高いレベルでプレーしなければいけない」と取材陣に語った。そのことを加藤に伝えると「僕自身、もちろんプレーするリーグもそうですし、能力的にも1ステップ上げていかないといけないなというのは感じています」と答えた。

代表選手の中でプレーして守備面には手応えを感じた一方で、攻撃ではもっとパスや飛び出しでアピールしていかなければいけない。特に「みんな守備のところですごい特徴がある選手たちでタイプ的には似ている」と加藤が言うボランチのライバルに負けないものを出していくことが大事だと認識しているのだ。

「初招集の選手が出るというのはあんまり聞いてないので、それでもトレーニングの中で自分のできることをやって次につなげられる、もちろん次の試合に出ることがまず目標ですけど、まずトレーニングでしっかりアピールすることが大事かなと思います」

加藤としてはまず代表でアピールし、この時間を意味のあるものにしていきたい意識がある。その先、クラブでのステップアップについてはすでに加藤なりのイメージがある。大学時代にアルゼンチンに留学したものの、プロ契約を勝ち取れなかった加藤はJ2の町田ゼルビアで1年プレーした後に再び海を越え、モンテネグロ、ポーランド、ブルガリアと東欧圏を渡り歩いてきた。

もちろんブルガリアのより大きなクラブ、あるいはチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場するチャンスのあるクラブなど、その圏内でのステップアップもあるが、加藤の目は西の方に向いている。

「できるだけ西の方に行きたいですね。スペインとかドイツの2部以上であったり、ベルギーとかオランダに行きたいです」

その理由は決して生活面の不満によるものではない様だ。「僕はどこでも暮らしていける自信があるので」と笑う加藤だが、もう1つのスタンスを口にした。「ただ個人としては毎年環境を変えたいなというのはあって、自分の知らない世界を見てみたい」。まさに渡り鳥のごとく、異なる環境を求めてプレーの場所を変えていく。

「同じチームにずっといたいタイプではなくで、できれば1年おきにチームを変えたいと思います(笑)」

飽くなき向上心を抱き続ける”渡り鳥”の行きつく場所はどこになるのか。その回数を重ねていくほど、子供たちにしたサインの価値が上がっていくことに期待したい。

[2017年6月4日・稲毛海浜公園 加藤恒平]

この日のサインをもらった子供たちは、ぜひとも大切にしておいて欲しいものだ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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