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アルゼンチン人コーチが語る「中村憲剛、ハビエル・マスチュラーノが見せる男の背」

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
301日ぶりのピッチでゴールした千両役者、中村憲剛(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SC所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 昨年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、この程、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとなった彼が、中村憲剛の復活について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 中村憲剛選手は、昨年の11月2日に左膝前十字靭帯損傷し、20日後に手術をしてから、長く苦しいリハビリを乗り越え、ピッチに帰って来ましたね。

 8月29日、清水エスパルスから3-0のリードを奪っている場面で投入され、8分後に美しい左足のループでゴールして自らの復帰戦を飾るんですから、素晴らしい以外に言葉がありません。頭が下がりますよ。

 39歳になって、あんなパフォーマンスが出来るということは、リハビリだけでなく、いかに過酷なトレーニングを積んでいるかが分かりますよね。

 今年の川崎フロンターレは本当に強いですhttps://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200724-00189617/。小林悠、家長昭博らベテランと、旗手怜央、三笘薫といった新戦力が上手く融合しています。14試合中11勝し、首位を走っていますが、攻撃も守備も非常にまとまっています。

 若い選手たちは、中村憲剛がこの日までにどれだけの努力を重ねたのかを理解し、刺激を受けている筈です。そういうチームの顔と共にピッチで戦える喜びを、全身で噛み締めているでしょう。それこそが、フロンターレの強さの秘訣だと僕は思います。

 一方で、今シーズンなかなかエンジンが掛からなかった鹿島アントラーズも、内田篤人のラストマッチで大先輩から熱いメッセージを受け、選手たちが戦う気持ちを取り戻した感があります。このところの2連勝は、内田効果と言っても過言ではないでしょう。

 アルゼンチンで、こんな風に自分の背中で後輩たちを鼓舞できる選手というのは、やはりハビエル・マスチュラーノが思い浮かびます。FCバルセロナの黄金時代を創り、アルゼンチン代表でも魂のプレーを見せ続けたマスチュラーノは、36歳となった今、母国に戻って、エストゥディアンテスでプレーしています。全盛期は過ぎたかもしれませんが、あの闘志は健在です。

 彼がいるだけで、ピッチはもちろん、練習グラウンドも、クラブハウスもロッカーも空気がピンとします。他の選手たちにとっては、憧れの存在だし、どうしたって「やらなきゃいけない!」と火が点きます。

 残念ながら内田さんはもうベストパフォーマンスが出来ない、と引退を決めましたが、中村憲剛は、フロンターレのお手本として、もうしばらく頑張ってほしいですね。

 背番号14。僕にしてみれば、マスチュラーノが愛した番号ですから、どうしても2人がダブるんです。試合終了後、ケガをした左膝に何か言葉を掛けるような仕草をしていた中村憲剛の姿が、とても印象的でした。実に美しいカムバックでしたね。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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