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隅田川花火大会:基本は無音!?後半の花火は色が変わらない?不使用の花火はどう処理?意外と知らない秘話

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

27日は、例年約100万人の人出があり国内の花火大会の中でもトップレベルの知名度を誇る、隅田川花火大会が開催されます(東京都台東区・墨田区、19時開始予定)。
各地からテレビやインターネットで中継を楽しむ人も多く、名前だけなら聞いたことがあるという人がかなりいる一方で、関係者に取材をしてみると、意外と知られていないことが多い花火大会かも。
今回は、天気と切っても切り離せない花火について、気象予報士でもある筆者が老舗花火屋「若松屋」を取材しました。

さまざまな大きさの花火玉(若松屋の東京支社にて筆者撮影)。
さまざまな大きさの花火玉(若松屋の東京支社にて筆者撮影)。

あんなに大きいのに…花火玉はこのサイズ

花火大会では、会場周辺の環境や打ち上げ場所の条件によって、どのくらいの大きさの花火玉を上げられるか決まってきます。
花火玉といえば、上図の一番右にあるような、巨大な玉を思い浮かべる人もいるでしょうか。

隅田川花火大会の場合、都心で開催されることから、そこまで大きな花火玉は上げられないだろうな…と想像されるとは思いますが、実際に上げられるのは北側の第1会場(オープニングから打ち上げ)が最大で5号玉まで、南側(19時30分以降に打ち上げ)の第2会場が4号玉までです。

左が5号玉(直径15センチ)、右が4号玉(直径12センチ)。いずれも上空で開くと100倍くらいの直径に広がる(若松屋の東京支社にて撮影)。
左が5号玉(直径15センチ)、右が4号玉(直径12センチ)。いずれも上空で開くと100倍くらいの直径に広がる(若松屋の東京支社にて撮影)。

4号玉と比べれば5号玉の方がやや大きいですが、それでも片手で持てるサイズ。
こんなに小さな玉に込められた火薬が夜空で大きく広がると思うと、改めて花火という仕組みのすごさを実感しますね。

4号玉は途中で色が変わらない!

打ち上げ花火を見ていると、打ちあがった花火がいったん開いた後、しばらくして色が変わる(赤く光っていたのが途中から緑になる、など)ものがあることに気づきます。
ところがこの仕掛けは、5号玉以上の大きさの花火玉でしか、できません。

つまり隅田川花火大会で言うと、オープニングからフィナーレまで打ち上げを行う第1会場では色の変化を伴う花火を上げられますが、19時半以降に打ち上げをする第2会場では、色の変化を出せないのです。

そのため、時間差で複数の色の花火を上げるなどして変化をつけ、単調にならないよう工夫されています。

基本は無音で上がる!「ヒュ~」はわざとつけないと出ない

「昇笛」(後述)の一種(若松屋の東京支社にて撮影)。
「昇笛」(後述)の一種(若松屋の東京支社にて撮影)。

打ち上げ花火と言えば、「ヒュ~~~ドーン!」という一連の音を想起する人が多いのでは。
しかし実際には、「ヒュ~」は花火玉に付属品をつけないと出ないのです。
「昇笛(のぼりふえ)」と呼ばれる笛をつけた花火玉のみが「ヒュ~」と鳴りながら上がり、そうでない花火玉は無音で上がっていきます。

打ち上げられる花火をよく見ていると、「ヒュ~」は1個分しか聞こえてこないのに、「ドーン、ドーン、ドドーン!」と何回も花火が開くことも。
観客の予想よりたくさんの花火を見せることによって盛り上げるという、粋な演出ですね。

最後は天気次第!使わなかった花火玉はどうなる?

今年2024年は東京都内で「足立の花火」が激しい雷雨により中止になりましたが、やはり花火大会は天気次第。どうしても毎年、使われずに終わる花火玉は出てきます。

まったく水に濡れていない状態であれば、別の花火大会で使うことは可能なのですが、縁起が悪いとして断られることが多いため、たいていの場合は処分することに。
処分、と書けば一言ですが、実際は手間のかかる作業です。花火玉を解体し、中の火薬は一定期間水没させるか、特殊な機械の中で燃やす必要があります。

花火師さんが丹精込めて作ってくれたものですから、無事に打ち上げられるよう、天気が味方してくれるのを願いたいですね。

花火鑑賞に最適は気象条件は?

雷雨や強風だと花火大会が中止になってしまうため、天気が穏やかであるのが必要条件とはなりますが、実は無風状態だと花火鑑賞に適してはいません。
というのも、まったく風がないと、花火の煙がその場に滞留してしまって、次の花火が綺麗に見えないためです。

理想は風速3m/sくらいの風が、見る人にとって左右方向に吹いていること。
あるいは追い風でも構いませんが、向かい風だと自分と花火の間に煙が入ることになり、やはり綺麗に見えづらくなります。

花火大会は夜でも熱中症対策を最優先に

通常、花火大会が行われるのは夜なので、熱中症対策を忘れがちな人も…。
しかし今年2024年はあらかじめ猛暑の予想が出ていた通り、記録的な暑さが続いていますし、気象庁からはこのさきも1か月程度は平年を上回る気温が続くと情報が出ています。
たとえ夜で日差しがなくても、水分はこまめに取りましょう。

また、浴衣を着ていると、帯などで締め付けられることによって上半身の汗が出にくくなる人もいます(「半側反射」と言います)。
できれば濡らしたタオルなどでこまめに額や手の甲などを拭いて、気化熱で体を冷やす工夫をしてください。

"花火秘話"を教えてくれたのは…
株式会社若松屋(本社:愛知県西尾市)。1937年創業。国内最大級の火薬庫を保有し、現在は日本で唯一、打ち上げ花火とおもちゃ花火の両方の製造・販売を行う。

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気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

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