オートバイのあれこれ『ヤマハのサンマ』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『ヤマハのサンマ』をテーマにお話ししようと思います。
「ヤマハのサンマ…?ヤマハは漁業もやってるの?」
と思った20代のナウでヤングな方々も多いことでしょう。
ただ、違います。
「ヤマハのサンマ」とは、レーサーレプリカモデル・TZR250のこと。
TZR250は初代が1985年(昭和60年)に登場し、その4年後の89年にモデルチェンジが行われ、型式が「3MA」となりました。
この「3MA」を、当時のバイク好きたちは「3(サン)MA(マ)」と読んだ(呼んだ)のです。
TZRはどの型式も総じて人気が高かったようですが、知名度で言えばこの3MA型が最も有名かもしれませんね。
3MA型は歴代TZRの中でもメカニズムが特に個性的で、「後方排気」と言われるパワーユニットを持っていました。
後方排気をザックリ説明すると、エンジンを搭載する向きが一般的なバイクと反対だったのです。
オートバイではエンジンの後ろ側から空気を吸い(吸気)、前側から吐き出す(排気)構造が一般的なのですが、3MA型TZRは前から吸って後ろに吐き出すレイアウトとなっていました。
これは、当時のヤマハのレーシングマシンをマネたもの。
当時のレーサーレプリカブーム下では、「どのくらいレーシングマシンと近い設計になっているか」ということが市販バイクの評価基準になっていて、メーカーもそのトレンドに沿った市販車作りをしていたのです。
この後方排気レイアウトはレースシーンでは功を奏したのですが、ツーリングライダーが一般道を走る上ではあまり恩恵が無く、斬新なメカニズムではあったものの、この3MA型TZRに採用されたのみで消えていきました。
「レーシングマシンに近ければ近いほどエラい」というレプリカブーム時代の風潮を如実に映し出したバイクだったと言えるでしょう。