なぜ頑張っているのに、期待どおりの成果が出ないのか?
そもそも頑張る必要があるのか?
最近「頑張らないほうがいい」「努力しないほうがうまくいく」というフレーズをよく目にするようになりました。こういった、綺麗ごとのワードを、私は「キラキラネーム」に似せて「キラキラワード」と呼ぶようにしており、注意喚起を促しています。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。絶対に達成しているかどうかを評価するのは数字ですから、「なんとなくうまくいっている」「これぐらいがちょうどいい」といった曖昧な表現はありません。
受験や資格試験と同じ。合格か不合格か、達成か未達成か。この二択しかない。どんな事柄でも、期待どおりの成果を出すためには頑張る必要があるし、当然のことながら相応の努力が求められます。
キラキラワードに関心を向けてしまう人は、「頑張らなくても年収1000万!」「努力しなくても成功をつかめる3つのポイント」……などといった射幸心を煽るキャッチフレーズについつい意識を向けてしまいます。
何を頑張るべきか?
期待どおりの成果を手に入れるには、当然のことながら頑張らないといけません。頑張るとは、感情のコントロールをすることです。面倒なこと、先送りしたいことをキチンとやる。できれば話したくない人とも向かい合って対話する。緊張する場面でもチャレンジしてやり切る。……こういったことが頑張る、ということです。
頑張っても成果が出ない人の問題はひとつだけ。頑張ろうとしている事柄の抽象度が高すぎること、これが原因です。
ダイエットを例にとって、書いてみましょう。
1)体重を5キロ減らす
2)糖質制限を心掛ける
3)毎日運動する
4)ラーメンは食べない
5)1週間に3回ジムに行く
6)毎晩食べたものを日記に書く
7)朝アラームが鳴ったら、筋トレをはじめる
8)パーソナルトレーナーから電話があったら、1日食べたものを報告する
「体重を5キロ減らす」という最終成果を頑張る対象にすると、まずうまくいきません。それだけでうまくいくなら、誰も苦労しない。この記事も読む必要ないでしょう。
「体重を5キロ減らす」そのものが期待どおりの成果ですから、何を頑張ったらこうなるのかが、わからない。したがって、頑張っているかどうかの検証もできません。
「毎日運動する」となると、少し具体的になります。「毎日」というキーワードが入っているからです。しかしどんな運動かが具体化されていない。「ラーメン」や「1週間に3回」「ジム」という具体的なキーワードがあれば、できているかどうかの検証ができます。
私が実践して、効果を出しているのが「朝アラームが鳴ったら、筋トレをはじめる」です。
こういった「プッシュ型ツール」を活用するのはお勧めです。何をやるべきか、タスクリストを作って毎日チェックする人もいますが、そもそもタスクリストを見に行かなければ機能しません。
わかっちゃいるけど、なかなかできない人、ついつい先送りする人は、このようなタスクリストをスマホで管理したり、Todoリストを手帳に書いていても、やらないでしょう。いずれも自らが動かないと確認できない「プル型ツール」を使っているからです。
私は怠け者ですから「プル型ツール」だと、途中で続かなくなります。自分の性格を知っているので、スマホのアラートアプリなどの「プッシュ型ツール」をうまく活用します。
先述したとおり、朝の6時にはアラームが鳴るように設定してありますから、私は「本当はやりたくないけど、筋トレをしよう」と決意します。このとき、私ははじめて頑張ります。感情のコントロールをするのです。
たまに「昨日は遅かったら、やりたくない」「1週間に3回やると決めたが、2回でも成果は変わらないかも」といった思考ノイズが頭を駆け巡りますが、このときも頑張って、雑念を振り払います。
したがって、頑張っているのは「アラームが鳴ったら筋トレをはじめる」「雑念が入っても、スルーする」ぐらいです。これさえ頑張れない人は、単なる怠け者と自己認識しましょう。頑張る単位をこれほどまでに極小化してもやらないなら、自分に打ち勝つことができないだけであり、「動機」の源泉などを探るのはやめたほうがいい。
頑張る対象を整理する
私ほど怠け者でなければ、手帳や日記などの「プル型ツール」でもいいでしょう。ダイエットでも、勉強でも、仕事でも、成果から逆算した行動をやり切るのに頑張るだけです。
まとめると、
●成果から逆算した行動計画を立てる
●行動計画をスケジュールに落とす
●スケジュールどおりに行動する
●行動を記録する
●定期的に成果を検証し、行動計画を見直す
これら一連のことを頑張る――それでいいのです。やるべきことを、細かく刻んで、ひとつひとつを頑張れば、小さな力だけで済みます。
頑張っているのに期待どおりの成果を手にできない人は、「成果から逆算した行動計画を立てる」「スケジュールに落とす」といった最初のフェーズを頑張らない。いきなり行動をはじめず、面倒でも、精度が高くなくても、10分でも20分でも時間をとり、計画段階から頑張りましょう。
なお、私のような怠け者は、「プッシュ型ツール」も活用するので、以下のようになります。
●成果から逆算した行動計画を立てる日を決めてアラート機能に仕込む
●アラームが鳴ったら、成果から逆算した行動計画を立てる
●行動計画をスケジュールに落とす
●スケジュール通りにアラート機能を設定する
●アラートが鳴ったら、行動する
●行動を記録する
●定期的に成果を検証し、行動計画を見直す日を決めてアラート機能に仕込む
●アラームが鳴ったら定期的に成果を検証し、行動計画を見直す
私は「なんだかんだ言って、自分ならきっとやる」というのは過信にすぎないと捉えています。自信過剰バイアスです。したがってスマホのアラート機能やキッチンタイマーをフル活用します。
それでも途中で挫折しそうなら、お金を払って外部のトレーナーに委託します。こうすれば頑張るのは、委託するタイミングだけになります。
もちろん、こういった「プッシュ型ツール」があれば、すべてうまくいくかというと、そうではありません。アラームが鳴っても無視するようになったり、アラームを事前に止めて自分を裏切るようなことをしたら、自分を叱りつけるべき。
25メートルプールを泳いでいる最中に立ってしまうスイマーだと捉えるのです。よほどのトラブルがない限り泳ぎ切りましょう。泳げないと思ったら泳ぎ始めないことです。少なくとも途中で立たない、と自分に言い聞かせます。
このように「行動計画を見直す」というスパンを正しくとれば、見直すまでは必ずアラームが鳴ったらやる。頑張る。というクセがつきます。
期待どおりの成果を手にするためには頑張る単位を細かくして、「プッシュ型ツール」もうまく活用しましょう。