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主な新興国/米国経済ニュース(7月4日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ロシア金融大手VTB、最終利益33%減―景気減速による貸倒引当金増加で

ロシア2位の国営金融大手VTB(対外貿易銀行)は2日に発表した1‐3月期決算で、最終利益が前年比33%減の157億ルーブル(約470億円)となり、市場予想の163億ルーブル(約490億円)を下回った。モスクワ・タイムズ(電子版)が3日に伝えた。

大幅減益となったのは、ロシア経済の後退に伴う貸倒引当金の増加と有価証券売買など銀行本来の業務以外の特定取引収支の低迷が主な理由。政府は今年のGDP(国内総生産)伸び率を2.4%増に下方修正しており、景気減速で銀行借り入れに対する返済能力が低下していることが貸倒引当金の増加の背景にある。

VTBの貸倒引当金は前年同期の204億ルーブル(約610億円)から220億ルーブル(約660億円)に急増した。このため、融資額全体に占める貸倒引当金の比率は昨年10‐12月期の1.1%から1.6%に上昇している。

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ロシアのロスネフチ、ベネズエラ国営石油PDVSAと天然ガス開発協力で合意

ロシア国営石油・天然ガス開発大手ロスネフチは2日、ベネズエラの国営石油会社PDVSAとベネズエラ沖の5鉱区の天然ガス開発で協力する合意文書に調印した。ロシアのプライム通信(電子版)などが伝えた。

合意によると、ロスネフチはベネズエラ・パリア湾沖の数カ所とブランキヤ、トルトゥーガの海底ガス田の開発プロジェクトへの参加を検討するとしている。パリア湾沖の海底ガス田はマリスカル・スクレ・プロジェクトに含まれるもので、同プロジェクトだけの投資額は推定50億ドル(約5025億円)。今回、ロスネフチが開発協力する5鉱区の天然ガスの推定埋蔵量は21兆立方メートルと見られている。

また、ロシア国営天然ガス大手ガスプロム傘下のガスプロムバンクは2日、ベネズエラのオリノコ川の油田鉱区を開発するPDVSAとガスプロムの合弁会社ペトロサモラに10億ドル(約1005億円)の融資を行うことで合意した。

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世銀、インドネシアの今年の成長率見通しを5.9%増へ下方修正

世界銀行は2日に発表した最新の四半期経済見通しで、インドネシアの今年の経済成長率見通しを前回3月予想時の6.2%増から5.9%増へ下方修正した。下方修正の理由として輸出の回復ペースが予想より緩やかなことや外国からの対内投資の見通しが弱いこと、さらにはコモディティ(国際相場商品)価格の軟化を挙げている。

インドネシア中銀は先月、今年の成長率見通しを6.1%増、来年は6.4-6.8%増になると予想していることを明らかにしたが、世銀の予想はそれよりも厳しい見方となっている。

また、世銀は同国のインフレ見通しについて、6月末から実施している燃料補助金の廃止に伴う燃料価格の上昇によって、インフレ上昇圧力が高まるとし、今年は前回予想時の5.5%上昇から今回は7.2%上昇へ、来年についても前回予想時の5.2%上昇から6.7%上昇へと、いずれも下方修正(悪化)している。ちなみに、インドネシア統計局が1日に発表した6月のインフレ率は燃料価格の上昇の影響が完全に現れていないこともあり、前年比5.9%上昇となっている。

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ベトナム金融監督委員長、景気刺激狙い国債発行による公共投資拡大を提案

ベトナム国家金融監督委員会(NFSC)のブーベト・ゴアン委員長は先週、政府会議に提出した報告書で、政府は景気刺激を最優先にして、現在、資金難に陥っている主要プロジェクトへの公共投資を拡大すべきだと進言している。ベトナム通信(電子版)などが2日に伝えた。

同委員長は、政府の今年の経済成長目標である5.5%増を達成するために、成長優先の大胆な景気刺激策を講じるべきとし、国債発行を通じて必要な財政資金を調達するよう指摘している。特に、1‐6月期GDP(国内総生産)のうち、投資を示す総固定資本形成が対GDP比29.6%と、過去の40%に比べて大幅に低下していることを強調。その上で、年内、あるいは来年に完成予定の主要な公共投資プロジェクトへの財政支出を拡大すべきだとしている。

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米電子機器大手スパートン、ラッセル2000種指数の構成銘柄に採用

米自動車・医療機器・航空宇宙産業向け電子機器大手スパートンは2日、同社が1日付で小型株の指標であるラッセル2000種指数の構成銘柄に採用されたことを明らかにした。

同社のキャリー・ウッドCEO(最高経営責任者)は「ラッセル2000種指数への採用によって、投資家の世界での当社の知名度が高まる絶好の機会となる」と述べている。ラッセル指数は、ベンチマークの投資収益率に等しい収益率を上げることを目指すパッシブ運用やあらかじめ決められたベンチマークを上回るパフォーマンスを目指すアクティブ運用の投資ツールとして利用されている。

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米ゼロックス、英クラウド型会計ソフト大手カスタマー・バリューを買収

米事務機器大手ゼロックスは2日、英国のクラウド・コンピューティング向け会計ソフト大手カスタマー・バリュー・グループを買収したことを明らかにした。

ゼロックスでは、カスタマー・バリューの旗艦製品である、売掛金など債権の回収・管理を行うクラウド型アプリケーション「バリュープラス(Value+)」を自社の会計・経理処理のアウトソーシングサービスに組み込むとしている。バリュープラスは現在、売り上げ規模が150億ドル(約1.5兆円)超のフォーチュン誌の世界の有力500社に入っている大手多国籍企業でも利用されており、世界8カ国で7カ国語、複数通貨に対応している。

ゼロックスによる買収後もカスタマー・バリュー・グループの従業員はこれまで通り、ロンドンの本社オフィスで業務を継続する。

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ブラジル5月鉱工業生産、前月比2%低下―3カ月ぶり大幅低下

ブラジル地理統計資料院(IBGE)が2日に発表した5月の鉱工業生産指数(季節調整値)は前月比2%低下と、2月の同2.3%低下以来3カ月ぶりの大幅低下となり、3月の同0.7%上昇と4月の1.8%上昇(3‐4月で2.6%上昇)を帳消しにした。

前年比は1.4%上昇と、2カ月連続の上昇となったものの、前月(4月)の同8.4%上昇から大幅に伸びが鈍化。この結果、1‐5月では前年比1.7%上昇となった。

また、5月までの過去12カ月間では0.5%低下と、3月の2%低下、4月の1%低下に続いてマイナス成長となった。3カ月移動平均も0.2%上昇にとどまり、鉱工業生産が急速に鈍化している。

鉱工業生産指数が大幅に低下したことを受けて、2日の外為市場では自国通貨レアルが前日終値の1ドル=2.2287レアルから2.2475レアルに下落した。

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ポーランド中銀、主要政策金利を2.5%に下げ―今回が最後の利下げ

ポーランド中銀は3日の金融政策委員会(RPP)で、主要政策金利の7日物レファレンス金利を0.25%ポイント引き下げて過去最低水準の2.5%とすることを決めた。4日から実施する。

また、中銀は他のロンバート金利と預金金利、再割引金利もそれぞれ0.25%ポイント引き下げて4%、1%、2.75%とした。7日物レファレンス金利は昨年11月の会合で3年5カ月ぶりに利下げに転換して以降、今回で8回連続の引き下げとなり、下げ幅も合計で2.25%ポイントに達した。

中銀は政策決定会合後に発表した声明文で、「昨年11月から始まった利下げキャンペーンで政策金利が大幅に低下(2.25%ポイント)し、それによって景気回復が支えられ、また、インフレ率も中期的に物価目標を下回るリスクを限定的にしている」とした上で、「今回の利下げ決定で利下げキャンペーンを終わらせる」と述べ、今回が最後の利下げになるとしている。

また、中銀は、「上期(1-6月)の世界経済は依然として弱いが、地域や国によって景気にばらつきが出てきた。欧州でリセッション(景気失速)が続く一方で、米国経済は著しい改善を示している。米国ではFRB(米連邦準備制度理事会)が年内に第3弾の量的金融緩和(QE3)の規模縮小の可能性を示唆したことから、金融市場の地合いが悪化し、(ポーランドなどの)新興国から資金が流出。その結果、自国通貨ズロチを含めた新興国の通貨も下落している」と懸念を示した。

インフレ見通しについては、5月のポーランドの消費者物価指数(CPI)は前年比0.5%上昇と、中銀の物価目標(2.5%上昇)を大幅に下回り、7月調査時点の経済予測でも今年のインフレ率は0.6‐1.1%上昇、2014年は0.4‐2%上昇、2015年は0.7-2.4%上昇になる確率が50%あるとした。

他方、成長率の見通しについては、今年は0.5‐1.7%増、2014年は1.2‐3.5%増、2015年は1.6‐4.2%増と予想。今年下期(7‐12月)から世界経済の回復とともにポーランド経済も上向き、インフレ率も今後数年間で上昇するとした。しかし、それでもインフレ率が中期的に物価目標を下回るリスクはあるとしている。

次回の金融政策決定会合は8月20日に開かれる予定。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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