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アマチュアの星・小山怜央さん、竜王戦6組ベスト4進出 準々決勝で西山朋佳女流三冠に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月24日。東京・将棋会館において竜王戦6組準々決勝▲小山怜央アマ-△西山朋佳女流三冠戦がおこなわれました。10時に始まった対局は21時30分に終局。結果は149手で小山さんの勝ちとなりました。

 小山さんはこれでベスト4に進出。アマチュア初の決勝進出まであと1勝、初の優勝まであと2勝としました。

 明日25日には佐々木大地五段-長谷部浩平四段戦がおこなわれ、その勝者と小山さんが準決勝で対戦します。

将棋史上、意義深い一局

 後手番の西山女流三冠は三間飛車に。両者ともに馬を作り合う乱戦気味の立ち上がりとなりました。

 局面が落ち着いてからは互いに自陣を整備しあい、息の長い中盤戦に。玉頭方面でも戦いが始まって、81手目、ほぼ互角の形勢のまま夕食休憩に入りました。

 再開後、夜戦に入ってからも両者の力がこもった押し引きが続きます。

 120手を過ぎるあたりで、まず抜け出したかと思われたのは西山女流三冠の方でした。自玉の堅さをキープしたまま、一気に小山玉を危ない形にします。

 128手目。西山女流三冠は小山玉の近くに角を打って寄せにいきます。小山アマは香を打って粘り続けました。このあたりで形勢は逆転模様となったようです。

 流れをつかんでからの小山アマの指し回しは正確そのもの。西山陣の飛車を攻めながら寄せ形を作り、勝勢を築きました。

 最後は小山玉に詰みはなく、西山玉は受けても一手一手。149手で熱戦に幕がおろされました。

 本局は竜王戦6組準々決勝という大きな舞台で、女性の星とアマチュアの星がぶつかるという構図。将棋史上、大変に意義深い一局でした。そしてどちらにも勝ってほしい、どちらも応援したい思いながら観戦されていた方も多かったと思われます。

 結果はアマチュアの星、小山さんが制するところとなりました。竜王戦6組でアマが4連勝したのは史上初です。小山さんにはさらにアマ初の決勝進出、優勝、本戦進出の期待がかかります。

 1991年、第4期竜王戦6組で天野高志アマは3連勝で準決勝に進出。若手のホープ、丸山忠久四段(現九段)と対戦し、持将棋指し直しのあと、勝利まであともう一歩と迫りながら敗れています。

 アマチュアが竜王戦6組を制する。それは1987年に竜王戦が創設されて以来、何度も何度も繰り返し語られてきた夢でした。将棋に関する創作物を見れば、竜王戦6組から勝ち進む登場人物は何度も現れてきました。

 しかし現実にその「竜王戦ドリーム」をかなえたアマチュアはまだ誰もいません。小山さんは現代のアマトップとして、新たな歴史を切り開くことができるでしょうか。

 一方の西山女流三冠。竜王戦6組優勝、そしてそこから棋士となる可能性は、今期はなくなりました。

 西山女流三冠は女流棋戦、棋士と戦う一般棋戦、そして三段リーグと多忙をきわめる中、着実に成績を残してきました。4月からは新期三段リーグも始まります。今後もまたなにか、将棋史に残るような、新たな実績が生まれることでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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