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コロナ禍で離婚も結婚も減少中⁈離婚したくてもできない理由と離婚に向けて今やるべきことを弁護士が解説

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:アフロ)

1 はじめに

昨年(令和2年)に『コロナ離婚』がトレンドワードになったのは記憶に新しいところです。

ステイホームで夫婦が一緒に過ごす時間が増えたために、今までは見えなかった夫婦の価値観のずれが浮き彫りになり、修復ができなくなるまで悪化して離婚に至るケースが『コロナ離婚』と呼ばれ、実際に配偶者と一緒にいる時間が苦痛だと言われる相談者(特に女性)が増えました。

ただ、現実に「コロナ離婚」が増えたかというと、令和2年は離婚自体が大幅に減少するという予想外の結果となりました。

厚生労働省の人口動態統計によると、令和2年の年間離婚件数は19万3251件となっており、前年度よりも離婚件数は1万5245件減少し、減少率は7.3%となっています。

数字だけ見ればコロナ離婚はなかったということになるのです。

しかし同時に婚姻件数の推移を見てみると、様相は変わってきます。

写真:アフロ

婚姻件数は52万5490件で、前年より7万3517件減少しており、離婚件数の減少率7.3%を遥かに上回り、減少率は12.3%となっています。

つまり、令和2年は過去にほとんど類を見ないほど、結婚も離婚も減っているのです。

参考元:「結果の概要/厚生労働省」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/dl/kekka.pdf

婚姻件数の減少の原因は、明らかにコロナ禍によるものと考えられています。

新型コロナの影響で結婚につながる出会いが少なくなり、また、感染を危惧して結婚式も実施しにくかったのではないか、ということです。

また、コロナ禍のなかでは「結婚どころではない」という雰囲気があるのも事実。

「すべてはコロナが落ち着いてから」と先送りになっているケースも多いものと思われます。

離婚問題においても、「コロナ禍での先送り」を感じさせる相談事例が増えています。

実際に離婚相談に乗っている立場からすると、離婚相談自体には大幅に減少したという印象は全くありません。

ただ、今年顕著にみられるケースとして、コロナ禍の影響で、離婚相談に来られたものの、離婚しない(できない)夫婦が目立つように思います。

以下にご紹介したいと思います。

2 【離婚して再就職できるのか?経済的な理由でためらっているケース】

写真:Paylessimages/イメージマート

A子さんは、夫からのモラハラが酷く、結婚10年目にしてついに我慢できなくなり、子供を連れて実家に戻りました。当初は離婚の決意は固く、実家の両親も応援してくれていたと言います。

ところが今年になってA子さんの父親が倒れ、そのまま介護を必要とする事態になりました。

A子さんも父親の介護を手伝っていたのですが、先日、母親から、一度夫のところに戻ってやり直してはどうか、と言われたというのです。

というのも、実家の主な収入源は父親が社長をしていた小さな工務店だったのですが、父親が介護状態になった今、閉めざるを得ないことになり、もはや実家ではA子さんと子供達を養えないというのです。

A子さんは働くことも考えましたが、子供達もまだ小さく、特に資格やキャリアも持っていないため、コロナ禍のこのご時世で雇ってもらえるかどうか不安だとのこと。

「コロナで経済的にも先行きどうなるかわかりませんし、このまま離婚をすすめて大丈夫なのでしょうか?」というのがA子さんのご相談でした。

経済的に先行きが不安定というのは、離婚をためらう大きな理由となります。

現実問題として、専業主婦だったA子さんが実家を離れて子供達2人を養っていけるに十分な職を見つけるのは簡単ではないでしょう。

とりあえず、職をみつけてから離婚を考えるのも一つの手だとアドバイスしました。

結果的にA子さんは夫とは婚姻費用(=夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用、いわゆる生活費)をもらって別居しながら様子をみることにしたそうです。

A子さんのように離婚はしたいけれど、経済的に不安だという悩みをもつ女性は、コロナ禍のなか、ますます増えています。つまり、離婚したくてもできないのです。

A子さんのケースは、コロナ禍において離婚をためらう大きな原因の一つと言っていいでしょう。

3 コロナ禍で離婚したくてもできないときにしておいた方がいいこと

写真:maroke/イメージマート

A子さんは離婚を「先送り」することを選択しましたが、DVやモラハラなどで悩みがあり、一刻も早く離婚をしたい方もいらっしゃると思います。

コロナ禍でパートナーの収入が下がっている…、自身の雇用が不安定…。

そんなときにできる離婚準備としては次のようなことが考えられます。

まずは別居後の生活費(=婚姻費用)を確保できるように準備しておきましょう。

双方話し合いの上で金額を決め、覚書や合意書のような形にしておくのもいいのですが、強制執行をすることはできません。つまり、相手の給与から強制的に天引きをするなどの強制執行はできませんので、可能であれば公正証書にしておくのがおススメです。

また相手が支払いを拒否した場合には、婚姻費用分担請求の調停を申し立てる必要が出てくるかもしれません。その際には、裁判所への申立時を基準に婚姻費用の支払い義務が生じることに注意してください。

裁判所への申立は早ければ早いほどいいということになります。

次に離婚後の生活について、金銭面を中心におおよその収支を把握しておきましょう。

特にお子さんがいる場合には、お子さんの進路の希望を含め、教育費にいくらかかるかなどについて具体的に把握するようにしてください。

家庭の財産関係も整理しておきましょう。結婚後に築いた夫婦共有財産がいくらあるかについては財産分与との関係で重要となるため、できるかぎり把握しておくことが大切です。

離婚後は、いったん実家に戻るのか、新たに住まいを探すのかを決めておきましょう。新たに住まいを探す場合には、勤務地やお子さんの学区などの問題があるため、早めに不動産屋を回った方がいいかもしれません。

就職活動や転職活動を有利に運ぶためには、資格取得する等のスキルアップを目指したり、知人や友人に連絡を取ってみることも一つの手です。

4 最後に

写真:アフロ

コロナ禍において離婚をしたくても離婚ができない夫婦の例をあげました。

特にコロナ禍においては、A子さんのように経済的な理由で離婚を選択できないケースは増えているように思います。

離婚はしたいけれど「コロナが収まってから離婚を考えよう」と先送りにしているケースは、実は思った以上に多いと思われます。

先送りにできる場合も、そうでない場合にももし「離婚」を念頭にしているのであれば、経済面や子供の養育面等でできる準備を着実にしておくことをお勧めします。

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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