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実は離婚後のケアが大切!離婚弁護士が解説するダメージとトラブル回避法

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:アフロ)

1 はじめに

私は兵庫県西宮市で家事事件を中心に扱う法律事務所を経営する弁護士ですが、離婚に伴う多くの人の悲喜こもごもを間近で見てきました。離婚が解決するまでに要する時間は人それぞれです。

時間がかかったケースでは、やっと離婚できた!と喜びを爆発させる方がおられる一方で、精神的に深刻なダメージを負う方もなかにはおられます。

例えば、タレントの小倉優子さんは、1回目より2回目の離婚の方がショックだったと述べておられます。

https://news.yahoo.co.jp/articles/a71061a35af3f6d3f0bf68b25adb2f05cf840706

今回は、離婚でダメージを受けるのはどのような場合か、また離婚後に発生しがちなトラブルと対処法について解説していきます。

2 離婚で精神的にダメージを受けるケース

写真:イメージマート

離婚で精神的にダメージを受けるのは、圧倒的に離婚を申し入れられた側です。

A子さん(30代、会社員)の例をご紹介しましょう。(※弁護士の守秘義務の関係上、内容は修正しています)

A子さんは子供の子育てをしながら働いているワーキングママ」、いわゆる「ワーママ」です。学生時代から交際していた現在の夫と結婚し、二人の子供に恵まれました。夫の仕事が金融関係で激務だったこともあり、家事や育児はA子さんがほとんど担ってきました。

ところがある日、夫が「離婚したい」とLINEを送ってきて、それっきり家を出て行ってしまったというのです。

小学生と幼稚園の年長組の子供二人をかかえたA子さんは途方に暮れ、かなり憔悴した様子で法律相談に来られました。

このようなケースで、一番に疑われるのは夫の異性関係―つまり、夫は不倫しているのではないかということです。

A子さんは思い当たることが全くないとのことで、調査会社に夫の交友関係の調査を依頼すべきかどうか迷っておられました。

ただ、その後すぐに夫の弁護士から離婚調停を申し立てたという受任通知が届いたため、探偵に依頼することなく、離婚調停が始まりました。

写真:イメージマート

結局、離婚調停を5回ほど経て、A子さんは調停離婚をすることになったのですが、A子さんが一番精神的にきつかったのは、「なぜ夫が離婚したいと思ったのか」、つまり夫の離婚理由がよくわからなかったことだったと言います。

夫とは喧嘩をしたこともなく、家事や育児に文句を言われたこともなかったそうです。

当然、離婚に関して夫婦で話し合いをしたことも一切なし。

ある日突然、離婚の意思を告げられて、理由もよくわからないまま、直接話をしないようにと夫の弁護士から言われ、なし崩しに離婚に向けて話が進んでいきました。

養育費や財産分与は相場より多めにもらえることになりましたが、A子さんの心は最後まで晴れることはありませんでした。

今でも、「なぜ夫が離婚したいと思った理由が知りたい」という思いに囚われているということです。

実は、最近このようなケースが夫側妻側関係なく増えてきているように思います。

・突然、配偶者が離婚を切り出してきた…

・夫婦で離婚の話し合いができないまま、調停や訴訟になってしまった…

・離婚の理由ははっきりせず、最終的には別居期間が長くなり、離婚が成立してしまった…

 等々。

夫婦の問題を当事者同士でじっくりと話し合うことのないまま、「離婚」という結論を相手に突き付ける人が現実問題として増えてきているのです。

もちろん、離婚したい側からすると、

・どうせ話してもまともに取り合ってくれない

・今までさんざんサインを出してきたが、相手が全く気付いてくれないから仕方がなかった

・今さら何を言っても、相手の性格は変わらない

と言った言い分があったりもします。

ただ、それぞれに言い分があったとしても、一度も話し合いをしないまま離婚を突きつけられた相手は、精神的に深刻なダメージを負う可能性があることは確かです。

せっかく縁があって一緒になったのですから、せめて「なぜ離婚したいと思ったのか」という理由くらいは、一言だけでも相手に伝えるようにした方がいいでしょう。

先ほどのA子さんも二人の子供から、「パパはどうしておうちに帰ってこなくなったの?」と聞かれて、どう答えてよいかわからずに悩んでしまったそうです。

理由もわからずに、父親が家を出て行った事実だけを突き付けられたとき、子供たちも心に大きな傷を負うかもしれません。

A子さんには、「パパはママとは事情があって一緒に住めなくなったけど、あなたたちのことはいつも心から愛しているし、パパであることは変わらないから安心してね」と言うメッセージを伝えてみてはどうかとアドバイスしました。

もちろん、いくら理由を言っても、自分に不利な理由は一切認めようとしない相手もいます。

ただ、離婚自体をスムーズに進めるために、相手の同意を得ること目下最重要の課題と言っても過言ではありません。相手の同意を得られないと、協議や調停では離婚できず、離婚訴訟に発展しかねないからです。

離婚後のトラブルを避けるためにも、離婚を決意した理由はできるだけ明確かつ具体的にしておき、相手の納得を得ることをおすすめします。

では、次に離婚後に発生しがちなトラブルについて解説します。

3 離婚後に発生しがちなトラブルとは?

⑴ 一番注意しないといけないのは、離婚に納得していない相手が嫌がらせをしてきたり、ストーカー化したりすることでしょう。

危険だなと思ったら、すぐに警察や弁護士に相談することが大切です。

そのような相手には、離婚後の新住所を知られることのないよう注意してください。

⑵ お金の問題

慰謝料や財産分与、養育費の「不払い」のトラブルがあります。

相手の財産や給与に差押えをするためにも、協議離婚の場合には公正証書を作成することを強くお勧めします。

仮に離婚する際に慰謝料や財産分与、養育費について取り決めをしなかった場合でも、離婚後に請求することはできます。

ただし、離婚の慰謝料については離婚成立してから3年間という時効がありますので注意しましょう。財産分与は2年以内です。

⑶ 子供の面会の問題

離婚したら子供に会わせてもらえなくなったと悩んでいる方は多いです。

共同親権の施行まで待てないという方もいらっしゃるでしょう。

当事者同士の話し合いで離婚前に面会交流について決めておくのがベストですが、それでも守ってもらえない場合は、家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てることになります。

調停で決まった内容を守らない場合には、「間接強制」を行うことも可能です。

間接強制とは、相手が面会交流の約束を守らなかった場合に、相手が面会交流を行うまで、裁判所から、例えば「1回あたり5万円」と言った形で支払いを課すことができるというものです。

4 終わりに

離婚に相手が納得しないまま無理矢理に話を進めてしまうと、離婚自体は成立しても、相手の不満はくすぶったままとなり、後日思わぬ形でトラブルになることがあります。

離婚したいと思っている相手なので、つい喧嘩腰になったり、相手の意向を無視して物事を進めたりしがちですが、私の経験上、そのような態度は避けた方が結果的に良い解決につながる場合が多いです。

人生の新しいスタートをきるためには、できるだけ不安要素をなくしておくに越したことはありません。

どうすれば相手に納得してもらった上で離婚を進められるのか…迷ったら、弁護士等の専門家に早めにご相談ください。

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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