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朝ドラ「虎に翼」で話題!離婚調停が行われる「家庭裁判所」はどんなところ?

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(提供:イメージマート)

1 はじめに           

面白いと評判の朝ドラ「虎に翼」が、今や社会現象と言われるまでになっています。私は兵庫県西宮市で家事事件を中心とする法律事務所を経営する弁護士ですが、周囲の法曹関係者(特に女性弁護士)も毎朝欠かさず視聴していて、法廷などで会うと必ずその話で盛り上がります。

モデルの三淵嘉子さんは日本初の女性弁護士で後に裁判官となり、家庭裁判所の設立に尽力した女性。

ただ、「家庭裁判所」と言われても、行ったこともなくピンとこない方もいらっしゃると思います。

「家庭裁判所」とは一体どんなところなのでしょうか。

今回は、「家庭裁判所」について解説していこうと思います。

2 家庭裁判所とは

「家庭裁判所」、通称「家裁(かさい)」は、離婚や遺産相続などの家庭内の争いである「家事事件」と非行のある「少年事件」を扱う裁判所です。

提供:イメージマート

 裁判所には、「最高裁判所」「高等裁判所」「地方裁判所」「家庭裁判所」「簡易裁判所」の5種類がありますが、家庭裁判所は全国に本庁が50か所、支部が203か所、出張所が77か所あります。

「家庭裁判所」は、通常の裁判所とは違い、家事事件や少年事件のような公開の手続きにはふさわしくない事件を扱う裁判所です。

つまり、通常の裁判所と「家庭裁判所」は別の組織ですので、よくあるのが家庭裁判所に行こうとしてタクシーの運転手さんに「裁判所まで!」と言ったところ、遠くの地方裁判所に連れて行かれたといったケース。家庭裁判所と地方裁判所は、同じ敷地内にある場合もありますが、かなり離れた場所にあることも多いのです。

地方裁判所と離れた場所にある家庭裁判所に行く際には、「家庭裁判所まで!」と明言しておいた方がよいでしょう。

3 家庭裁判所の「離婚調停」

一般の方が家庭裁判所を利用するケースとしては、「少年事件」よりも、「離婚」「遺産相続」などの家事事件がほとんどだと思います。

その中でも「離婚調停」が一番身近だと思われます。

写真:イメージマート

せっかくなので、「離婚調停」についても簡単にご説明しましょう。

「離婚調停」とは、夫婦間の協議では合意ができなかった場合に、裁判所を介して離婚についての話し合いをする手続きです。

具体的には、離婚、親権、養育費、財産分与、慰謝料、面会交流、年金分割などの争点について話し合いをしていきます。

日本では、「調停前置主義」が取られていますので、基本的に「離婚裁判」をする前には「離婚調停」を経ている必要があります。

「離婚調停」では、調停委員2名と裁判官で構成される「調停委員会」によって手続きが進められ、1か月~1か月半に1度の割合で調停期日が開かれます。

私どもの事務所に法律相談に来られる方々の中には、「絶対に離婚調停だけにはしたくない!」「裁判所に行くなんて真っ平だ!」などと言われる方が一定数いらっしゃいますが、そんなに心配する必要はありません。

むしろ、人生経験の豊富な調停委員にじっくり話を聞いてもらえますし、裁判官も随時適切な判断をしてくれますので、ああでもないこうでもないと当事者同士でだらだらと協議をしているよりはよっぽど早く解決が進みます。

特に相手がモラハラ気質であったような場合には、何を言っても理解してもらえず、すべて相手に都合よく正当化されたりしますので、客観的な判断をしてくれる第三者がいることはとても助かりますし、心の安定にもつながります。

モラハラの加害者は権威に弱いという特徴もありますので、裁判所という権威をいい意味で利用することは、問題の早期解決に資すると言えましょう。

とは言え、「離婚調停」にもデメリットはあります。

「離婚調停」はあくまで話し合いによる手続きですので、どんなに適切なアドバイスや判断があったとしても、相手が離婚に納得しなければ、調停は成立しないということです。

相手がものすごく頑固で、どうしても離婚に同意しないと言い張れば、最終的にはどうしようもないのです。

また最近の問題としては、離婚調停の申立て自体が増えてきており、なかなか調停の期日が入らないといったことが挙げられます。

特にお互いが弁護士を付けているような場合には、裁判官、調停委員2名、双方の弁護士、当事者同士の予定を合わせる必要がありますので、日程の調整が困難を極めるといったことも珍しくありません。

期日の調整が難しかったせいで、結果的に調停の期間が予想以上に長引いてしまったといったケースもよくあります。

このように、家庭裁判所の「離婚調停」にはメリットとデメリットがありますが、例えば養育費の支払いを調停で決めておけば、わざわざ公正証書を作成しなくても差押えが可能になるという大きなメリットもあり、個人的には調停をおすすめしています。

弁護士費用が気になる場合には、ご自身だけが出席し、その都度、弁護士の法律相談に行ってアドバイスを受けるという裏技もあります。

迷ったら、とりあえず専門家に相談してみるといいでしょう。

4 終わりに

先人たちが並々ならぬ尽力をし、現代に生きる私たちに残してくれた叡智の結晶とも言える「家庭裁判所」。

もちろん、人生において、離婚や遺産相続などの争いに巻き込まれない方がいいに越したことはありません。

ですが、測らずも争いの当事者になってしまったときには、自分ひとりで悩まずに専門家の知恵を借りて解決を目指すという選択肢は持っておいた方がいいでしょう。

その意味で、「家庭裁判所」は大いに私たちの役に立ってくれると思います。

「虎に翼」のドラマが大ヒットしたおかげで、「家庭裁判所」がより一層、私たちの身近な存在になったと言えるのではないでしょうか。

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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