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離婚の決断ができない人のために弁護士が教えるチェックポイント

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:イメージマート)

1 はじめに

私は兵庫県西宮市で、家事事件を中心とする法律事務所を経営する弁護士です。私のもとには毎日、夫婦関係や男女問題について、多くの方が相談に来られます。

例えば…

・夫に不倫され、一方的に離婚を迫られている…
・妻が酷いモラハラで、毎日帰るのが辛い…
・義両親が子供の教育等、何かと口を出してくる
・夫が生活費をくれず、自分のパート代だけで生活している

などなど。

これらは本当によく見られる相談例なのですが、だからといって相談者の皆さんは、すぐに離婚を決断されるわけではありません。

・もう少しだけ我慢すればうまくいくかもしれない…
・離婚して自分の給料だけでやっていけるのだろうか。もっとお金を貯めてからの方がいいのかも…
・やっぱり子供が可哀想…
・相手に親権を取られたくない!

このような理由で、離婚に二の足を踏んだり、離婚だけはできるだけ避けたいと考える方も多くいらっしゃいます。

離婚は人生の一大事ですし、なかなか決断ができないのも無理はありません。

離婚したい気持ちはあるものの、どうすべきか迷っている…。そのような段階で、弁護士等の専門家に相談しづらいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。

そこで今回は、離婚を迷っている方に離婚を決意する際に重視すべきポイントを解説していきます。

2 離婚後の生活設計について

まず重要なことは、離婚後の生活について、具体的にイメージをすることです。

お子さんがいる場合といない場合では、離婚後の生活は大きく違ってきます。

① お子さんがいない場合

相手が離婚したくないと言い張った場合でも、ほとんどは協議離婚や調停離婚で解決するケースが多いですし、離婚自体は比較的スムーズに進むと思われます。

ただし、収入の多い方が少ない方に支払っていた婚姻費用(生活費)は、離婚後には支払われなくなりますので、離婚後は、自分ひとりの収入だけで生活していくことになります。

その点を考慮にいれて離婚後の生活をイメージすることがポイントです。

② お子さんがいる場合

お子さんの年齢にもよりますが、経済面で重要なことは、養育費を何歳になるまで毎月いくら支払ってもらえるのかということです。 

言い換えれば、子供を育てる側は、養育費と児童手当をあわせてそれなりの生活ができるかどうかを検討する必要があります。

現実問題として、おそらく養育費だけでは、病気等の予想外の出費や、子供の習い事や塾の費用、入学金や学費等には対応できないと思われますので、離婚前にその点についても具体的に決めておいた方がよいでしょう。

養育費の取り決めはできれば公正証書にしておきたいところです。

3 お子さんへの影響について

両親の離婚は、多かれ少なかれ、お子さんに影響を与えることは否定できません。

写真:アフロ

離婚に伴い、学校を転校せざるを得なくなったり、子供の氏が変わったりします。

大人が想像する以上に精神的なショックを受けるお子さんもいますし、それを両親に知られないように自分だけでかかえこむお子さんもいます。

お子さんへの影響は、離婚を決断する際に必ず考慮すべき事柄です。

それでも離婚をすると決断した場合には、お子さんへの影響をなるべく少なくするにはどうすればよいか、真摯に考える必要があります。

一方で、子供を監護しない親にとっては、離婚によって子供と会えなくなる可能性が出てきます。本来望ましくないのですが、全く会えないケースもありますし、月に1回2時間程度の面会しか認められないケースもあります。

子供と離ればなれになっても果たして耐えられるかどうか?

結婚生活が破綻していても、お子さんのために離婚を思いとどまったというケースは珍しくありません。

ただ、お子さん自身が両親の離婚を望んでいる場合もあるため、お子さんの気持ちを確認することが重要になってくることもあります。親族や友人の協力を得ることを視野に入れてもいいかもしれません。

4 精神面でのチェックポイント

実際に離婚をして本当によかった、以前より充実した人生を送っているという方に、離婚を決意する際にどんなことを重視したかを聞いてみました。

・相手の介護ができるか?
・相手と一緒に過ごす老後をイメージできるか?
・死ぬときに、後悔しない人生だったと思えるか?

これらの点について、「どう考えても無理!」「離婚しなかったら絶対に後悔する!」と心から思えたときに離婚を決意したと言います。

余談ですが、 離婚を決意していなくても、調停を申し立てられますか?と聞かれることがありますが、申し立てはできます

夫婦関係調整の調停は、あくまでも夫婦の間の話合いの場を設けるものなので、申し立て時に離婚の意思が固まっている必要はありません。離婚するかやり直すかなどは、調停の話合いの中で決めていくことも可能です。

ただし、そうはいっても、調停の期日を重ねるごとに自分の気持ちの方向性を固めていく必要はあります。ずっと迷ったままだと、裁判所から、話し合いによる解決が難しいとして「調停不成立」と言われることもあるからです。

5 おわりに

離婚を迷っている段階でも、遠慮せずに、ぜひ弁護士等の専門家に相談してみてください。

写真:イメージマート

離婚を迷っているということを正直に伝えた上で、離婚した場合のメリット・デメリットを教えてもらうのです。

知識はあるに越したことはありません。

離婚した後では、法律的にどうにもならないこともあります。

無料法律相談を実施している法律事務所も多くありますので、一度、相談にいかれてみてはいかがでしょうか。

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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