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2024年「お年玉」のキャッシュレス化は進んだか

山口健太ITジャーナリスト
コード決済も「お年玉」(楽天ペイメント、PayPayの発表資料より、筆者作成)

2024年のお正月に向けて、2023年末には複数のスマホ決済事業者が「お年玉」需要を狙ったキャンペーンを展開しました。

しかし、日常的な決済でキャッシュレスを活用している人でも、お年玉についてはまだ現金が主流のようです。

お年玉は現金が主流か

PayPayなどのスマホ決済アプリはユーザー間で残高を送ることができる機能があり、割り勘やお小遣いなどの用途に使われています。

お年玉を渡すとき、アプリで送金すれば「ポチ袋」や紙幣を用意する必要がありません。子どもをキャッシュレス決済に慣れさせるといった効果も期待できます。

このお年玉需要を狙って、楽天ペイ(2024年1月31日まで)やPayPay(2024年1月14日に終了)、LINE Pay(2024年1月10日に終了)は、抽選でポイントがあたるキャンペーンを実施しています。

特にPayPayは全国3万人を対象にした調査において、「お年玉をキャッシュレス込みでもらいたい」との回答が約4割を占めたことを強調しています。

この数字だけを見ると、お年玉のキャッシュレス化に好意的な人が多い印象を受けるものの、実際には「現金が多めで、現金とキャッシュレスの両方でもらいたい」といった回答も4割の中に含まれています。

対照的に、家計簿アプリ「マネーフォワード ME」の利用者を対象とした調査では、キャッシュレス決済と親和性が高いとみられる層にもかかわらず、94%がお年玉を現金で渡すと回答しています。

94%がお年玉を「現金で渡す」との調査結果(マネーフォワードのプレスリリースより)
94%がお年玉を「現金で渡す」との調査結果(マネーフォワードのプレスリリースより)

情報メディア「イーデス」はお年玉を「もらう」側についても調査しているものの、「あげる」側と同様に8割以上の人が現金を希望したとの結果になっています。

そして年が明けた2024年1月、アプリ情報メディア「Appliv」による793人を対象とした調査では、お年玉を現金で渡した人が91.8%を占め、キャッシュレスの利用は9.1%にとどまっています。

これらの調査結果を踏まえると、2024年のお正月の時点では、お年玉の渡し方としてはまだまだ「現金で手渡し」が主流であると考えられます。

アプリを使えばリモートからいつでも送金できるというメリットはあるものの、お年玉を渡す方法としてはまだニーズに応えられていないことがうかがえます。

アプリの残高を貯金できるか

お年玉をもらう側の視点に立ってみると、アプリの残高では使える場所に制限があるのは気になるところです。広く普及しているPayPayでも、現金の汎用性には勝てない印象を受けます。

また、貯金できるかどうかという問題もあります。筆者が子どもの頃は、もらったお年玉を銀行に預ける習慣がありました。しかしアプリの残高によっては銀行口座に出金できない場合があります。

PayPayの場合、本人確認済みなら銀行口座からのチャージが「PayPayマネー」になり、銀行口座への出金も可能。12月からはこのPayPayマネーを優先して送れる機能を提供しています。

PayPayで残高を送る際には種類を選べるようになった(PayPayのプレスリリースより)
PayPayで残高を送る際には種類を選べるようになった(PayPayのプレスリリースより)

一方、楽天キャッシュの場合は本人確認を済ませた場合でも銀行口座からのチャージは「基本型」になり、銀行口座への出金はできません。これはやや直感に反する仕様といえます。

今後の普及が期待される「給与デジタル払い」においても、アプリで受け取ったお金を銀行口座に出金できるのか心配する声を聞くことがあります。このあたりの使い勝手はさらなる改善を期待したいところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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