“要塞”アルウィンでJ1屈指の強豪・広島を迎え撃つ松本山雅。セットプレーと二次攻撃に注目せよ!
開幕戦でタレント軍団の名古屋グランパスと壮絶な激闘を繰り広げ3−3で引き分けた松本山雅は12、13年のJ1王者であるサンフレッチェ広島とホームのアルウィンで対戦する。
2万人近い山雅サポーターがピッチを取り囲む雰囲気はカラーこそ違うが、さながら英プレミアリーグのストーク・シティが誇る”要塞”ブリタニア。その松本山雅の強力な武器こそ、鋭利で多彩なセットプレーだ。
松本山雅の特徴はハードワークと攻守の切り替えの早さ、90分間の集中力など「隙を与えず、隙を突く」スタイルだが、とりわけセットプレーはチームを象徴する武器であり、おそらくボール支配力や総合力で勝る広島に対しても大きな脅威になりうる。だが、松本山雅のセットプレーを本当の意味で危険なものにしているのは、実はクッションボールやセカンドボールからの二次攻撃なのだ。
本日刊行の『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』から松本山雅のセットプレーについて、反町康治監督の単独インタビューを織り交ぜてまとめた部分を抜粋してお届けしたい。
第4章 松本山雅のジャイアントキリング「隙を与えず、隙を突くという意識の共有」より抜粋
「隙を与えず、隙を突く」というコンセプトは松本山雅の大きな得点源でもあるセットプレーに大き く関係している。反町監督やコーチングスタッフの高い分析力に裏打ちされた多彩なセットプレーは、 あらゆる対戦相手を悩ませ、勝利に直結するゴールを生んできた。
特に2年目、3年目とチームがベー スアップされるに従い、セットプレーの共通理解も高まった。13年の途中からは元ストーク・シティ のロリー・デラップを彷彿とさせる岩上祐三のロングスローも加わり、対戦相手の脅威となっている。
ただ、セットプレーというのはどれだけ対策をしても、精度と集中力が伴っていなければ成功しない。そして一発で決まるゴール以上に反町が得点のカギとして重要視しているのが、クリアボールやクッションボールからの二次的な攻撃だ。
「リスタートでもCKで上がって、一発でドーンというのは そんなに多くない」と反町監督は強調する。
「普通は誰々がすらして誰々が触るとか、誰々が打ってGKが弾いたら誰々が打つとか、そういう他は練習をしないわけだよ。うちは最後までやる。あと対戦相手のリスタートを全部見ているから。こいつはこういう傾向がある、ニアに入って来るとか、それを全部インプットして、GKが出たらお前がこう戻るよとか話をして、練習で一夜漬けみたいにすればそのまま形になって表れるよね。
そこまで突き詰めてやれるかというのがある。ゴール前に正しい配置を取っていても、配置を取ったからおしまいじゃなくて、そこから最後までしっかり面倒を見て、弾いたボールや折り返したボールを触れ るか、そこまでやらないといけないから。それが対戦相手に足りない時に、うちは点を取れただけだよ」
――松本山雅はセットプレーが武器と言われますが、これまでのゴールを見返すとリスタートから2 つ目、3つ目のところで得点しているのが大半ですよね。
「そうだよ。ほとんどがそうだよ。だから例えば岩上のロングスローは対戦相手も研究しまくっているから、全員が戻って来て、どうやって守るかを一所懸命やっているんだけど、こっちがふと長いボー ルを投げないで近いところに投げれば、そこから点が取れたりするんだよ。そういうパターンが多く なると、今度は向こうもそこを抑えようとしてボールにつられて、その後ろで点を取れたり。面白いよね、そこまでやってスローインの勝負だから」
『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』
第4章 松本山雅FCのジャイアントキリング
「隙を与えず、隙を突く」松本山雅、ジャイアントキリングの10年
4−1「アルウィンを満員に」が合い言葉だった
4−2「大きな転機となった浦和戦のジャイアントキリング」
4−3「天皇杯で最初のジャイキリとなった湘南戦」
4−4「屈辱を乗り越えて。地域リーグがJ1を破る」
4−5「スーパー・ジャイアントキリングで得た自信と責任」
4−6「シーズン途中の監督交代、そして......」
4−7「"Bチーム"が成し遂げたジャイアントキリング」
4−8「松本にやって来た真のプロフェッショナル」
4−9「東京Vとの2試合が示した成長の証」
4−10「隙を与えず、隙を突くという意識の共有」
4−11「チリのように戦え!」
4−12「強大な対戦相手に挑んで得た手応え」
4−13「新リーダー誕生。HAYUMAではなくTANAKAの理由」
4−14「相手がどこでもブレない幹の部分。対策はディテール」
4−15「中村3箇条、ケンペス2箇条」
4−16「全ての試合がジャイアントキリング」