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元横浜FM天野純のKリーグデビューは“合格点”?韓国メディアはどう評価したのか

金明昱スポーツライター
今季から蔚山現代に移籍した天野純(写真・蔚山現代FC公式サイトキャプチャー)

 昨季まで横浜F・マリノスに所属したMF天野純が、今季からKリーグの蔚山現代に期限付き移籍した。

 蔚山現代は昨季リーグ2位で、2012年と2020年にはアジア・チャンピオンズリーグを制覇している強豪クラブ。

 契約期間は2022年12月31日までだが、今年はKリーグ優勝とアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)制覇を目指す蔚山で、“助っ人外国人”としての活躍が求められるシーズンとなる。

 20日の蔚山現代の開幕戦の相手は軍隊チームの金泉尚武。両チームの顔ぶれを見ると、元Jリーガーがたくさんいる。

 蔚山からはDFキム・ヨングォン(元ガンバ大阪)、ウォン・ドゥジェ(元アビスパ福岡)、ユン・イルロク(元横浜F・マリノス)。一方の金泉尚武にはク・ソンユン(元札幌)、チョン・スンヒョン(元鹿島)、ユ・インス(元FC東京、福岡)が出場していた。

 日本から見て、韓国Kリーグには関心がないという人でも、かつてJリーグでプレーした選手がいるという視点で見れば、楽しく感じられるだろう

 そんな試合に天野純もスタメンに名を連ねた。開幕戦を前にホン・ミョンボは天野に対し、期待を込めてこう話していた。

「合流してまだ日が浅く、まだそこまで多くの練習はできていないが、(天野が)持っているものがたくさんある。チームのスタイルともよく合う。セットプレーの状況でいい役割をしてくれるだろう」

「効果的なパスプレーでチャンス演出」

 天野は2列目の中盤に起用され、中央、サイドと縦横無尽に走り回り、ドリブル突破やゴール前への鋭いパスで相手守備陣を翻弄。直接FKも任されるなど、何度も得点チャンスを演出したが、72分でピッチをあとにした。

 天野は63分にはペナルティエリア前で、相手DFの2枚目のイエローカードとなるファウルを誘い、チームは数的優位に立った。ボールポゼッションも60%、シュート数は蔚山が20本(金泉は6本)と試合の主導権を握ったが、最後までゴールをこじ開けることはできなかった。

昨季まで横浜F・マリノスで主力としてプレー
昨季まで横浜F・マリノスで主力としてプレー写真:長田洋平/アフロスポーツ

 だが、天野のKリーグデビューは“合格点”との見方だ。

「SPOTVニュース」は「蔚山は天野純を中心に効果的なパスプレーでチャンスを作り出した。ペナルティエリア内でもシュートチャンスを増やしていた」と評価。

 試合後にホン・ミョンボ監督も「天野は合流してまだ日が浅いが、自分の持てる力を十分に発揮してくれた。(ワントップで入った)MFヴァコ(=登録名、ジョージア代表のヴァレリ・カザイシュヴィリ)と天野、天野とほかの選手たちの連携プレーなど、選手の特性を生かす肯定的な面をたくさん見ることができた」と合格点を与えていた。

「蔚山の課題は決定力」

 蔚山の課題は決定力。昨年まで蔚山の攻撃の要だった韓国代表FWイ・ドンジュン(ヘルタ・ベルリン)の海外移籍、Jリーグ清水エスパルスへの移籍が噂されているFWオ・セフンの不在で、得点力に課題を残した初戦となった。

「SPOTVニュース」は「蔚山現代には9番ストライカーが切実だ。90分間、主導権を握ったが、“解決士”の不在を克服できなかった」と伝えている。

 だからこそ2列目から積極的に攻撃に参加し、チャンスを作り出すだけではなく、ゴールも求められている。

 ただ、それでも蔚山の主力の半数が韓国代表で、中盤でのポジション争いは激しい。“助っ人”の立場でもあるが、そうした競争に勝たなければならないのが現実だ。

 新たな環境に飛び込んだ天野が、今季韓国でどのような結果を残すのか。ACLでもJリーグ勢との対戦を楽しみにしたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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