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なぜレアルはCBの補強にすぐに動かないのか?アラバの長期離脱…アンチェロッティとペレスの思惑。

森田泰史スポーツライター
負傷者が続出しているマドリー(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

ピンチはチャンス、と捉える必要があるかもしれない。

レアル・マドリーが危機的状況だ。リーガエスパニョーラ第17節のビジャレアル戦で、ダビド・アラバが負傷。アラバは左ひざの前十字靭帯断裂で、今季絶望の見込みとなっている。

長期離脱になったアラバ
長期離脱になったアラバ写真:ロイター/アフロ

マドリーは今季序盤にGKティボ・クルトワ、エデル・ミリトンが同様にひざの負傷で長期離脱を強いられている。シーズン前半戦の段階で主力の3選手が長く不在になるという、不足の事態が起きている。

■補強の可能性

マドリーは現在、リーガエスパニョーラで首位に立っている。ただ、シーズン後半戦を見据えた場合、非常に苦しい状況だ。そこで、まず考えられるのは、冬の移籍市場での補強の可能性だ。

競り合うイナシオとウーデゴール
競り合うイナシオとウーデゴール写真:ロイター/アフロ

ゴンサロ・イナシオ(スポルティング・リスボン)、アントニオ・シウバ(ベンフィカ)、ジョルジョ・スカルヴィーニ(アタランタ)、レニー・ヨロ(リール)…。補強においては複数の候補が挙げられている。

イナシオは、スポルティングでプレーするDFだ。ポルトガル代表でも、ロベルト・マルティネス監督に気に入られており、中核を担う存在である。契約解除金は6000万ユーロ(約90億円)に設定されており、マドリーとしては出せない額ではないだろう。

ベンフィカでプレーするA・シウバ
ベンフィカでプレーするA・シウバ写真:ロイター/アフロ

A・シウバはベンフィカでプレーしている。187cmと体格に恵まれており、イナシオ(185cm)と似ている。だが、イナシオが左利きであるのに対して、A・シウバは右利きだ。この度負傷したアラバが左利きだと考えれば、イナシオがプロフィール上では有利かもしれない。また、A・シウバの契約解除金は1億ユーロ(約150億円)で、高額である。

スカルヴィーニは、アタランタの下部組織出身選手だ。2022年6月には、18歳でイタリア代表デビューを果たしている。2021−22シーズン(セリエA18試合出場)、2022−23シーズン(セリエA31試合出場)と若いながら十分な経験を積んできている。

ヨロはフランスとコートジボワールにルーツを持つプレーヤーだ。リールのカンテラ出身で、2021−22シーズンにトップデビューを飾った。16歳6ヶ月1日でのトップデビューは、エデン・アザールが保持していたクラブ史上最年少記録を塗り替えるものになった。

候補と目されている選手たちは、イナシオ(22歳)、A・シウバ(22歳)、スカルヴィーニ(20歳)、ヨロ(18歳)といずれも若い。「上手く、若く、安い」という3つの条件を揃えたいというのがマドリーの本音だろう。

■カンテラーノの台頭とコンバート

一方、マドリーは、補強だけが解決策だとは考えていない。注目されるのは、カンテラーノだ。アルバロ・カリージョ、マルベル、ハコボ・ラモン、複数の選手が虎視淡々とチャンスをうかがっている。

スペイン『マルカ』のアンケートでは、「ディフェンスの問題でマドリーがどのように対応すべきか」との問いに、35%が「カンテラの選手を使うべきだ」と答えている。7万5707票(12月19日午前時点)が集まったアンケートで、最も多かったのが、その意見である。

期待されるカンテラーノの台頭
期待されるカンテラーノの台頭写真:ムツ・カワモリ/アフロ

また、現実的な案として考えられるのが、コンバートだ。

アラバとミリトンが不在となり、本職のセンターバックはアントニオ・リュディガーとナチョ・フェルナンデスのみ。そこで、カルロ・アンチェロッティ監督は選手をコンバートさせる可能性がある。オウレリアン・チュアメニ、フェルラン・メンディ、この辺りの選手が最終ラインに置かれるかもしれない。

チュアメニは今季、リーガ第9節のオサスナ戦で、CBでプレーしている。「数字の『6』というのは、逆読みができる。昔、それを父親に言われたことがある。センターバックでのプレーにチャレンジする。だけど、僕は中盤でプレーしたい。それを頼むことはないが、チームに必要なら、そこで自分はプレーする」と語っていたチュアメニだが、後方からの球出し、カバーリング、CBとしても及第点以上のパフォーマンスを見せていた。

CBでプレーする可能性があるチュアメニ
CBでプレーする可能性があるチュアメニ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「アラバのケガに関しては、メディカルスタッフから前十字靭帯断裂だと聞いた。非常に残念だ。また選手が離脱することになる。我々は悲しみを感じている」とはアンチェロッティ監督の弁だ。

「いま、我々がすべきは、耐えることだ。我々は、周囲の人々が期待している以上のことを、やってきた。問題があっても、このチームは耐えてきた。これからの数日で、何ができるか見てみよう」

新戦力ベリンガムの活躍で前線に問題はない
新戦力ベリンガムの活躍で前線に問題はない写真:ロイター/アフロ

マーケットにおける補強、カンテラーノの台頭、コンバートの成功。選択肢は、いくつかある。ただ、いずれかを“当てる”必要がある。

チャンピオンズリーグでは、ラウンド16でライプツィヒと対戦する。決して平坦な道のりではないが、マドリーに後退は許されない。新たな試練が、アンチェロッティ・マドリーを待ち受けている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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