英国で「コロナ探知犬」訓練開始 なぜ犬に能力や適性があるのか解剖学と行動学から解説
新型コロナウイルスが、世界中で猛威をふるっています。
新型コロナウイルスの感染を特定するためにPCR検査をしますが、時間や手間がかかります。日本では検査がなかなか受けられないと、問題になっていますね。そんな中、英国のロンドン大学の研究者が犬の嗅覚に目をつけました。
なぜ 犬が新型コロナウイルスの有無がわかる「新型コロナウイルス探知犬」になれるか?
犬の嗅覚
・犬がニオイを嗅ぐときのメカニズムは以下です。
まず外鼻孔(いわゆる鼻の穴)→ 鼻腔(びくう)と呼ばれる空気のたまり場へ。鼻腔の表面は嗅粘膜と呼ばれる粘液上の物質で覆われていて、ニオイが嗅神経を刺激します。 嗅神経で発生した電気信号はその後、篩骨篩板(しこつしばん)と呼ばれる骨を通過して嗅球で脳の部位に達し、そこで情報処理されます。
ちなみにこの嗅球は、人間の場合約1.5グラムですが、犬の場合は中型犬でも6グラムほどあります。つまり、人間の4倍に達するという計算です。
・犬の嗅覚は、最先端の人工機器よりもはるかに敏感といわれています。
・ニオイの種類や犬によって差はありますが、刺激臭で人の1億倍感知できます。
・オスには発情期のメスのニオイを数kmほど離れた場所でも感知できる子もいます。
動物行動学
・犬は群れ社会の動物です。
・ボスがほめてくれると、「ニオイ」を嗅ぐという仕事を喜んでします。
・人と一緒に仕事をする犬は、与えられた仕事が好きなので、想像以上の業績を残します(能力があっても喜んでやれない子は、業績がよくないし、病気になりやすいです)。
犬の嗅覚と行動学を使っての犬の仕事
・警察犬
・救助犬
・麻薬犬
・マラリア探知犬
・がんの探知犬
問題点
新型コロナウイルスは感染症なので、もしかしたら、犬に感染するかもしれないという問題が孕んでいます(まれなケースですが、香港で犬が感染していると発表されていますから)。人と接触しないで(2メートル以上離れて)、検査する必要がありますね。獣医師の立場では、もちろん人の健康も大切ですが、犬の健康もきちんと配慮することも当然なことです(アニマルウェルフェアという観点から考えても)。
犬の嗅覚は鋭く 他の犬の死期がわかる 実話
犬は、人よりはるかに嗅覚が鋭い動物です。犬によってその差はもちろんあります。犬を多頭飼いしている人から、以下のような話を聞くことがよくあります。
私たちは、がんの治療を多くしています。木元さん(仮名)もそのひとりでした。がんの子ともう1頭の犬を飼われていました。がんの子が、亡くなる1週間前に、もう1頭の犬ががんの子の近くに寄りつかなくなりました。それまでは、ずっと2頭で一緒に寝ていたのに、離れるようになったそうです。犬が亡くなる前に飼い主は「先生、もう、この子、もたないと思います、、、」と涙ながらに話されていました。
このような話を飼い主から伺うのは、一度きりではありません。犬は、ニオイで死期がわかるようです。たぶん、腸内細菌叢に悪玉菌などが増えて、呼気のニオイに変化があるのを察しているのでしょう。
まとめ
グローバル化の時代で、ものや人が世界中を移動します。そして、それとともにウイルスも移動して、世界に広っています。新型コロナウイルスだけではなく、他の新型ウイルスも広がる可能性があります。
そんな中、犬の嗅覚の鋭さ、群れ社会の動物という観点から、社会課題の解決に犬の能力を活用することは適しています。その一方、犬の幸せも考える世の中になってほしいです。アニマルウェルフェアという観点が、一般的なこととして浸透するよう願っています。