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井上尚弥に屠られた男のカムバック

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Don Avery/TGB Promotions

 昨年7月25日に井上尚弥に8ラウンドKOで敗れ、WBC/WBOスーパーバンタム級タイトルを失ったスティーブン・フルトン・ジュニアがリングに帰って来る。

 プロ生活初の黒星を喫し、心身ともに深いダメージを負ったフルトンだが、9月14日、フェザー級に上げて、30勝(14KO)2敗のカルロス・カストロと対峙する。WBA/WBC/WBOスーパーミドル級タイトルマッチ、サウル・”カネロ”・アルバレスvs.エドガー・ベルランガ戦の前座でカムバックするのだ。

写真:松尾/アフロスポーツ

 現地時間の8月21日、フィラデルフィア市内にあるDSG Boxing Gymでの公開練習が予定されていたが、それには応じず、フルトンはほんの少しだけメディアの質問に応じた。

 「俺が見た限り、カストロはアウトボクシングが好きなようだ。彼はインファイターに対して、自分のリーチを活かす戦いを好むね。その点で、俺は彼に勝てると思う。

 リングに戻るって、本当にいいことだ。9月14日は、ファンの皆さんに、これまでと違ったスティーブン・フルトン・ジュニアをお見せする。その準備ができているよ。

Don Avery/TGB Promotions
Don Avery/TGB Promotions

 プレッシャーは何も感じていない。試合はきちんと行われるだろうし。とにかく、カルロス・カストロ戦に集中しているところだ。

 再起戦だから、あの負けを絶対に挽回したい。この試合で最高のパフォーマンスを示せられるよう、とにかく懸命にトレーニングしているよ。フェザーでは減量が少し楽になるな。何が起こっても対応できる準備をしていく。この試合でカムバックして、そこから前に進むことが重要だ」

Don Avery/TGB Promotions
Don Avery/TGB Promotions

 井上尚弥戦が決まった折、フルトンは故郷であるペンシルバニア州フィラデルフィアのボクシング屋から、不利と予想された。21戦全勝で2冠を達成していても、“名のあるチャンプ”とは見られなかった。“モンスター”によるスーパーバンタム級転向第1戦だとしても、斬られ役としか映らず、事実、予想通りの結果となった。

 自らの存在を何度も問い直し、リングに復帰するフルトン。練習を公開しなかったのは、メンタルのダメージを未だに引き摺っているからではないか。井上尚弥に屠られたフルトンは、今回どんな姿を披露するか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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