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バブル崩壊に備え、今後注意しておくべきは長期金利や原油価格、そしてテスラの株価の動向か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米長期金利が1.6%台に上昇したことをきっかけに株式市場などに激震が走った。今後の株式市場などは上げ下げを繰り返しながら、不安定な相場展開となることが予想される。

 1990年からの日本のバブル崩壊もきっかけは金利にあった。バブルは弾けて、はじめてバブルと認定される。ではいつ弾けるか。それを予見することは難しい。

 債券バブルの崩壊事例をみても、大手証券のチーフディーラーの発言であったり、経済新聞の小さな記事であったり、大手生命保険会社の担当者の発言であったりした。

 サブプライム問題で住宅バブルが崩壊し、大きな危機を迎えたきっかけはリーマンの破綻であった。欧州の信用危機はギリシャが発端となった。

 現在の金融市場の動きはコロナ禍という危機によるものではあったが、株価が上昇するなど金融市場ではバブルが起きていると認識して良いかと思う。それではそのバブルは何がきっかけで弾けるのか。

 それは1989年の動きが参考になると思っている。1989年には日銀が公定歩合を引き上げるなど緩和策から引き締め策に転じており、長期金利は上昇、つまり国債は下落していた。

 債券ディーラーであった私は日銀が引き締めに転じ、国債が大きく下落しているなかの株価の上昇に違和感を持っていた。結局、日経平均は1989年末の大納会の大引けが高値となり、ここが現在でも過去最高値となっている。

 1989年末に向けたバブルも日銀の長期にわたる金融緩和策が温床になっていたと思われる。現在の株価の形成についても、中央銀行の超緩和策による過剰流動性相場によるものであろう。そこに政府の大型の経済政策も加わった。

 すでに新型コロナウイルスのワクチン接種も開始され、世界的なパンデミックが終焉する可能性が出てきた。経済が一気に正常化に向かう可能性もある。しかし、中央銀行はそう簡単に方向転換はできない。そして大型の経済対策が過剰に経済に刺激を与えることも予想される。

 それはつまり景気や物価の正常化、さらにその正常化の動きが加速される可能性も秘めている。景気の回復そのものは株価にはプラス材料ではあるが、米国株式市場などではすでに過去最高値を更新するなど、やや過剰な株価形成となっている。現実が株価で形成された予想に近づき、予想で買って現実で売るといった状態が起きる可能性がある。

 そして、1989年と同様に金利の動きがバブル崩壊を予見させるきっかけともなりうる。景気の回復、物価の上昇が長期金利の上昇要因となるが、今回は特に大型の財政政策による政府債務の悪化という問題も秘めている。それも材料視してくると、思わぬ長期金利の上昇が起きる可能性がある。このため、今後も長期金利の動向には注意する必要がある。

 景気や物価の動向に敏感に反応するものとして原油先物がある。原油先物市場は市場規模がそれほど大きくないこともあり、思惑的な動きとなることがある。さらに原油価格の上昇は日米などでは物価に即座に波及することにも注意が必要となる。

 さらに今回のバブルにあたって象徴的なものにテスラの株価があるのではないかとみている。1989年の株価上昇の象徴は個人からの資金流入もあったNTTであった。今回はビットコインなどにも絡んで、テスラ社の株価の動きがバブルの動きをみるひとつの指針ともなるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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