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闇バイトに段ボール箱を置く仕事もある!?驚かれた方へ3か月前に送られた架空請求との一致点と三つの懸念

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
約3か月前に、知人の会社に送られてきた架空請求(筆者撮影・修正)

6月22日岡山駅に脅迫文を貼った段ボール箱を置いたとして、威力業務妨害の疑いで21歳の女性が逮捕されました。借金があった女性はSNSの闇バイトに応募して、指示役からスマホのアプリを通じて指示されて犯行をしたと供述しています。

「段ボール箱を置くような闇バイトもあるのか」と驚かれた方も多いかもしれません。

闇バイトといっても、詐欺のお金を受け取る「受け子」、お金を引き出す「出し子」や強盗だけでなく、窃盗犯を募ったり、不正に開設した銀行口座の買い取り、第三者に渡すために携帯電話の契約を募集するなど、犯罪に手を染めさせるような様々なものがありますので、その一つといえます。

どんな仕事でも、簡単で誰にもできて高収入と謳うものは危険という認識を改めて持つ必要があります。

事件は点ではなく、線で見るとみえてくる

脅すような文章を貼り付けた段ボール箱は他にもあり、報道によると「岡山・倉敷両市、岡山大に爆破を予告するメールが届き、翌20日までに県内6カ所に不審な段ボール箱が置かれている」ということです。

「闇バイトに応募」 21歳女をJR岡山駅に不審物置いた疑いで逮捕(朝日新聞)

この事件について、実在する人物の名前などを載せていることから、恨みを持つ者の犯行ではないかとの様々な憶測があるかもしれません。しかし事件は点ではなく、線で見ることが大事です。

今回の報を受けて、まず段ボール箱に貼られた紙に何が書いてあるのかが問題でした。それを知ることで、指示した者の狙いを知ることができるからです。

詳細な文面は明らかにできませんが、そこには、実在する個人名や住所が書かれていました。ここにわざわざ住所など公に記載する人はいませんので、嫌がらせの側面をはらんでいることはありえます。

段ボール箱に貼られた、見覚えのある住所と名前

その住所と名前を見て、筆者は、どこかで見た記憶がありました。

資料を探すと、約3か月前に知り合いの会社にFAXで送られてきた架空請求と思われる文書と一致する部分が多いことがわりました。

そこには「【最終警告】損害賠償金お支払いのお願い」とのタイトルがあり、「300万円の損害賠償請求が認められましたが(中略)お支払いいただけておりません」とあり、振り込み先の銀行口座が載っています。そして支払わない場合には「強制執行の申立を行わざるを得ません」と脅しの文句まであります。

筆者の知人のところに届いた架空請求(筆者撮影・修正)
筆者の知人のところに届いた架空請求(筆者撮影・修正)

これが送られてきた知人の会社は、まったく身に覚えがないので無視していますが、こうした書面は様々なところに送られていたようで「お金を振り込まないように」との注意喚起がなされています。

ここに書かれている実名と住所と「300万円」の金額を払うようにとの内容が、今回の段ボール箱に貼られた金銭を要求する文章の内容と一致していますので、この架空請求とみられるFAXを送った者と、箱を置かせた者が同一犯である可能性はあると考えています。

個人というより、犯罪グループの可能性も

今回の事件と、約3か月前の架空請求を重ね合わせて見ると、みえてくることがあります。

今回の事件では指示役がいると考えられますので、個人というよりも犯罪グループの可能性が高いと思っています。

送られてきた架空請求も多くの会社などに送られており、それだけの数を送りつけること自体、大変な手間です。個人でできるとはあまり思えないからです。

また架空請求の文面は、かつて詐欺を行っていた犯罪グループの使っていた架空請求ハガキの内容をコピーしたようなものになっています。

これまでの架空請求にも、実在の裁判所の住所などが記されていましたので、もしかすると、実在の住所、実名などは、こうした犯行をする際のフォーマットになっている恐れもあります。

もちろん、この実在の人物に恨みを持っている者の犯行も充分にありえますが、あくまでもそれを装い、その人物の名を使っていることも排除してはならないと考えています。

懸念する三つのこと

強く懸念していることが三つあります。

一つ目は、今回の逮捕された女性がすべての場所に段ボールを置いたのではない場合、他にも犯人がいる可能性も出てきます。もし今も逮捕されずにいれば、次の詐欺や強盗などを実行する犯行に駆り立てられることが考えられますので、繰り返し犯罪グループによって犯行をさせられないためにも、自首をお願いします。

また、今後闇バイトの仕事で、このような行為を指示されても、目先のお金に釣られての犯行を行わないでください。

二つ目は杞憂であってほしいと思っていますが、これまでの組織的犯罪グループの手口として、攪乱(かくらん)という手を使うことがあります。

たとえば、コンビニのATMを使って還付金詐欺などの犯行をさせようとする場合、詐欺グループは、そのお店にわざと「弁当にスプーンが入っていなかった」などの執拗なクレームを入れて、店員の目をそらせたところで、犯行を成功させることがあり、それはマニュアル化されています。

今、特殊詐欺に対する警察の目は厳しく、「受け子」をするような怪しげな人物は職務質問などをされて、悪事がバレてしまいます。それゆえに、避難誘導などで多くの警察官を向かわせて、警察の目を他に向けさせて犯行をやりやすくするために、今回のような事件を詐欺グループが行ったこともありえますので、まさに19日、20日に詐欺や強盗、窃盗などの被害が多く出ていないかを心配しています。

三つ目は、詐欺は不安に乗じてやってくるということです。

詐欺グループが自作自演で不安な状況をつくり、この状況につけこんだようにして、警察や市役所などをかたり、個人情報を聞くような電話をかけてくることも充分に想定されます。

今後、どの地域にまた同じような行為が繰り返されるかわかりませんので、ご注意ください。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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