「あつ森」攻略本 攻略サイトあるのになぜ人気
世界で1300万本以上を販売し、「あつ森」の愛称で知られる任天堂の人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」の攻略本が人気です。スポーツ報知の記事によると、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて休業しながら5月7日に営業を再開した紀伊國屋書店新宿本店では、30分以上前から100人が並び、買い求めた……とあります。事実、日販のランキングで「あつまれ どうぶつの森 ザ・コンプリートガイド」(KADOKAWA)が総合首位になっています。
【参考】新宿・紀伊國屋書店が営業再開「どうぶつの森」攻略本求め100人以上行列(スポーツ報知)
ですが、多くの人は「今さら攻略本が売れるの?」と思ったのではないでしょうか。その背景について説明したいと思います。
◇ネットに負けた ゲーム攻略本の歴史
ゲームの攻略本は、かつてミリオン(100万部)以上売れたこともあるメガヒットコンテンツでした。約20年前ですが、「ファイナルファンタジー」シリーズの攻略本は、あまりの売れ行きぶりに、出版業界で本の奪い合いがあったほどです。
その攻略本ですが、ネットが普及して、ユーザーが書き込んだり、第三者が作る(非公認の)攻略情報が即日掲載されるようになってから、売れ行きが急減します。情報の掲載スピードと価格、バージョンアップも随時されるのですから、紙の書籍が勝てるはずもありません。ゲーム会社と出版社にとって、その流れを止める妙案はなく、ゲーム攻略本はもちろん、攻略情報を随時載せるゲーム雑誌もダメージを受けました。
【参考】ゲーム雑誌「電撃PlayStation」、25年の歴史に幕 Webメディアは継続
ゲーム関連書籍は、ゲームのアイテムコードを付録につけ、それが人気になったこともありますが、書籍の本質的な価値が上がったわけではありません。ゲーム攻略本といえば、攻略サイトにない裏データの掲載、イラストなどの資料集的な価値以外は見出しづらくなっていました。
◇攻略サイトの乱立と質低下
そして今回の人気です。第一には「あつ森」がメガヒットし、単純にプレーヤーが多いことでしょう。女性ユーザー、ライトユーザーも多く、中には攻略本をアイテムとして所有したい心理は働くでしょう。購入者も増えるのも当然ですね。また休業した書店も多いので、営業する書店にただ人が集まった面も、もちろんあります。
ゲームに詳しい人、ネットリテラシーが高い人は「ネットの攻略を見れば無料なのに」と思うでしょう。それはその通りですが、一方で攻略サイトの乱立と質の低下があります。ネットに不慣れな人が、欲しい情報を探しづらい面があります。
攻略サイトはPVが見込めるのですが、掲載のスピードアップを目指すあまり、他のサイトのコピー、説明の誤り、ひどい場合には攻略情報「なし」のまま載せるケースもあります。要するに見づらいのです。そうなると、頼りになるのは……と探し、欲しい情報が探しやすい紙の攻略本に目がいくのでしょう。「あつまれ どうぶつの森 ザ・コンプリートガイド」は1500円ながら、1000ページを超えるボリュームです。情報も整理されており、見やすく、安心感があります。
新型コロナウイルスの影響で、外出自粛が続くので家にいるから、紙でじっくり読みたい心理も働きやすいのは容易に推察できます。一周回って紙の書籍の需要が高まり、その価値が見直されるあたり、ビジネスの面白さを感じますね。