球団史上初の60勝に到達した阪神ファーム!復帰5試合すべてでタイムリーの陽川選手が1軍へ
阪神ファームは24日からオリックスとの3連戦を行い、2勝1分けでした。ウエスタン・リーグは27日時点で阪神と中日が100試合以上を消化、他チームも90試合半ばです。残りは最多がソフトバンクの26試合、最少は阪神の17試合。7月10日からは首位を明け渡していない阪神ですが、2位のソフトバンクもなかなか負けず。と思ったら先週は阪神が3勝1敗1分けで、ソフトバンクは1勝3敗1分け。ゲーム差が4.0と広がっています。
そして、この3連戦初日にチーム新記録が生まれました。24日のオリックス戦が今季ちょうど100試合目で、これに勝って60勝到達!もちろんリーグ一番乗りです。阪神ファームのシーズン59勝は1999年(最終成績は59勝33敗8分け)と2000年(59勝35敗6分け)の2度で、ことしが18年ぶりのこと。“60勝”という数字は他チームで見たけれど阪神ってなかったような?と調べてみたら…初めてでした!
つまり1955年に始まったウエスタン・リーグで、阪神が60勝したのは球団史上初、チーム最多記録ということになります。とはいえ総試合数も1981年までは70以下、その後も80や90試合なので120試合近い現在と比較はできませんが、それでも今季初めて100個を超えたチーム盗塁数とともに新たな記録ですよね。
【24日】チーム初の60勝到達!
では3試合の結果と経過をご紹介します。まず、台風20号が去ってもなお、舞洲バファローズスタジアムに強風が吹き荒れた24日の試合から。この日は後半に逆転して1点差の逃げ切り勝ち。ちょうど100試合目で球団史上初の60勝に到達しました。
《ウエスタン公式戦》8月24日
オリックス-阪神 22回戦 (舞洲BS)
阪神 001 000 200 = 3
オリ 002 000 000 = 2
◆バッテリー
【阪神】福永-○谷川(6勝1敗)‐島本‐S伊藤和(1勝2敗18S) / 長坂
【オリ】榊原(1回)‐張(1回)‐●吉田凌(2勝2敗)(4回1/3)-斎藤(2/3回)-青山(1回)‐鈴木優(1回) / 高城‐飯田(8回~)
◆三塁打 神:板山
◆二塁打 オ:西村、小谷野
◆盗塁 神:江越(23)、陽川(9) オ:山足(5)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]右:江越 (5-1-0 / 2-0 / 1 / 0) .216
2]二:西岡 (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .267
〃遊:熊谷 (3-2-0 / 1-0 / 0 / 0) .213
3]遊二:板山 (4-2-0 / 1-1 / 0 / 0) .294
4]三:陽川 (3-1-1 / 0-2 / 1 / 1) .232
5]左:高山 (4-2-1 / 1-0 / 0 / 0) .269
6]指:緒方 (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .274
〃打指:小宮 (1-0-1 / 0-0 / 0 / 0) .241
〃打指:荒木 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .212
7]一:今成 (4-1-0 / 1-1 / 0 / 0) .260
8]捕:長坂 (3-2-0 / 1-0 / 0 / 0) .265
9]中:島田 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .221
※小宮=小宮山
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
福永 5回 86球 (6-4-3 / 2-2 / 3.67) 151
谷川 2回 32球 (3-0-1 / 0-0 / 2.54) 147
島本 1回 12球 (0-0-1 / 0-0 / 3.81) 145
伊藤 1回 10球 (0-1-0 / 0-0 / 1.35) 144
※伊藤=伊藤和
《試合経過》※敬称略
1回に満塁の好機を逃した阪神は3回、1死から板山がレフトへの三塁打を放ち、陽川は死球、続く高山の中犠飛で1点を先取。ところがその裏、福永は先頭の9番・後藤に右前打され犠打などで2死三塁としたあと、西村には死球を与えて4番・小谷野に右中間への2点タイムリー二塁打で逆転されます。
この日は5イニングを投げ、2回からはすべて先頭打者に打たれるなど毎回の6安打で2点を失った福永。試合後はやはり、その点を反省していました。なお阪神の方も4回、5回と先頭を出すなど毎回のようにヒットを放ちながらチャンスを広げられません。6回は1死満塁のピンチをしのいだ谷川。すると7回、1死から熊谷と板山が連打して一、三塁となり、陽川が右前へ同点タイムリー!ピッチャーが代わって高山の中前打で1死満塁、代打・小宮山の遊ゴロで併殺が崩れる間に、板山が勝ち越しのホームイン!
その裏は谷川が1安打と味方エラーで2死一、二塁とするも無失点。打線は8回、9回と1安打ずつ出るも追加点なく、でも8回は島本が1死からの1四球のみ、最後は遊ゴロ併殺と3人で片づけ、9回は伊藤和がビシッと三者凡退で締めています。伊藤和はこれで18セーブとなりました。
【25日】チーム半月ぶりの一発!
25日は陽川尚将選手が5号ソロホームランやタイムリー、岡崎太一選手の犠飛2つなどで5対3の勝利。先発の青柳晃洋投手がリーグ最多タイの8勝目を挙げています。
《ウエスタン公式戦》8月25日
オリックス-阪神 23回戦 (舞洲BS)
阪神 011 020 010 = 5
オリ 000 000 003 = 3
◆バッテリー
【阪神】○青柳(8勝2敗)-高橋聡‐守屋‐S伊藤和(1勝2敗19S) / 岡崎
【オリ】●松葉(3勝8敗)(3回)-沢田(1回)‐吉田一(1回)‐斎藤(1回)-金田(1回)‐張(1回)‐佐藤世(1回) / 高城‐フェリペ(8回~)
◆本塁打 神:陽川5号ソロ(松葉)
◆三塁打 神:高山
◆二塁打 神:陽川 オ:後藤、園部
◆盗塁 神:板山(13)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]中:江越 (4-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .213
2]二:西岡 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .258
〃二:荒木 (3-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .214
3]一:板山 (4-1-0 / 1-0 / 1 / 0) .293
4]三:陽川 (4-3-2 / 0-0 / 0 / 0) .244
5]右:高山 (4-2-1 / 0-0 / 0 / 0) .274
6]捕:岡崎 (2-0-2 / 0-0 / 0 / 0) .282
7]指:小豆畑 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .167
〃打指:西田 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .175
〃打指:小宮 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .237
〃打指:緒方 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .278
8]遊:熊谷 (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .214
9]左:島田 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .221
※小宮=小宮山
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
青柳 7回104球(4-8-2 / 0-0 / 2.73) 144
高橋聡 1回 14球 (0-2-0 / 0-0 / 1.80) 137
守屋 0.2回 29球 (4-0-0 / 3-2 / 2.86) 149
伊藤 0.1回 2球 (0-0-0 / 0-0 / 1.34) ―
※伊藤=伊藤和
《試合経過》※敬称略
打線は2回、先頭の高山が右越え三塁打を放ち、続く岡崎の中犠飛で先制。3回は2死から陽川が、松葉の初球(138キロ)を打って左中間へのソロホームラン!5回は1死から荒木と板山の連打で一、三塁、板山の二盗で二、三塁として、陽川と高山が連続タイムリー!
先発の青柳は3回、西浦の左前打と後藤の左越え二塁打を浴びますが、西浦はホームでタッチアウト!後続も断って無失点でした。それ以外に大きなピンチはなく、7回を投げ4安打8三振2四死球で無失点の好投!前回、19日の中日戦(ナゴヤ)で5回2安打6三振無四球で無失点だったことも踏まえ、矢野監督も合格点を与えたようですね。
なお8回に陽川がレフトへ二塁打を放ち、岡崎の左犠飛でもう1点追加。その裏は高橋聡が2奪三振の三者凡退。5対0とリードし迎えた9回裏、守屋が坂本に中前打され、西村は自身の送球エラーで無死一、二塁となって、園部に2点タイムリー二塁打、続く代打・宗にもタイムリーを浴びました。2死を取って代打・小谷野に右前打されたところで降板。最後は伊藤和が2球で1死を取って試合終了です。
【26日】チーム2ヶ月半ぶりの延長
26日は1回に陽川選手のタイムリーで先制するも8回に逆転されました。しかし土壇場の9回に代打・荒木郁也選手のタイムリーで追いつき、延長10回まで戦った末に2対2の引き分け。藤浪晋太郎投手が好投しています。
《ウエスタン公式戦》8月26日
オリックス-阪神 24回戦 (舞洲BS)
阪神 100 000 001 0= 0
オリ 000 000 020 0= 0
※延長10回引き分け
◆バッテリー
【阪神】藤浪-竹安‐谷川‐島本‐守屋 / 長坂‐岡崎(9回~)
【オリ】山崎福(6回)‐青山(1回)‐佐藤達(1回)-金田(1回)-鈴木優(0/3回)‐斎藤(1回) / 飯田-高城(10回表)
◆三塁打 オ:西村
◆二塁打 神:江越、緒方、今成 オ:飯田
◆盗塁 オ:宗(2)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]右中:江越 (4-2-0 / 1-1 / 0 / 0) .217
2]二:西岡 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .250
〃三:西田 (3-1-0 / 0-0 / 0 / 1) .178
3]三二:板山 (5-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .289
4]左一:陽川 (4-1-1 / 0-1 / 0 / 0) .244
5]中左:高山 (5-2-0 / 1-0 / 0 / 0) .278
6]指:緒方 (5-3-0 / 1-0 / 0 / 0) .286
7]一:今成 (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .262
〃走右:島田 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .224
8]捕:長坂 (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .267
〃打:荒木 (1-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .219
〃捕:岡崎 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .282
9]遊:熊谷 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .211
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
藤浪 5回 94球 (4-6-2 / 0-0 / 1.00) 157
竹安 2回 17球 (0-1-1 / 0-0 / 1.40) 146
谷川 1回 19球 (3-0-0 / 2-2 / 2.75) 144
島本 0.2回 10球 (1-1-0 / 0-0 / 3.72) 144
守屋 1.1回 17球 (0-1-0 / 0-0 / 2.75) 150
《試合経過》※敬称略
この日も先取点は阪神。1回に江越が左二塁打を放つなど2死三塁として陽川が中前タイムリー!ただし2回から7回まで毎回安打しますが、得点につながりません。8回は唯一の三者凡退でした。一方、先発の藤浪は4回を除く毎回、ヒットや四球で走者を出しながらも要所を締め、5回4安打6三振2四球で無失点。4回3安打無失点だった21日の広島戦(倉敷)に続く好投です。
ついで竹安が6回の先頭に死球を与えたものの、あとは併殺と三振、7回は三者凡退で2イニングを無安打無失点。6人で片づけています。ところが8回の谷川は、1死後に右前打された2番の宗を暴投で二塁へ進め、続く西村の左越え三塁打で1点。4番・園部の三ゴロでもう1点。逆転されました。と思ったら、9回は2死後に緒方と島田が連打して捕逸で二、三塁となり、代打・荒木が左前へ同点タイムリー!
その裏は島本と岡崎のバッテリーで、先頭の飯田に中前打され犠打で二塁へ進めますが、左の岡崎は真っすぐで見逃し三振。ここで交代です。2死二塁で登板した守屋は初球で白崎を打ち取って無失点。延長戦に突入しました。10回の打線は江越の四球と西田の右前打などで1死二、三塁。陽川は申告敬遠で満塁と攻めるも、あとが続かず。その裏は続投の守屋が2死から味方エラーで走者を出すも岡崎が盗塁を阻止!引き分けで試合終了です。
【陽川選手のまとめ】
8月10日の試合前練習の際に右ヒジを痛め、12日に登録を抹消されていた陽川選手。21日のウエスタン・広島戦(倉敷)から実戦に復帰して即、タイムリーを含むマルチヒット!この日をはじめ5試合すべてで4番を務め、毎試合タイムリーを放つ仕事ぶりでした。その5試合を振り返ってみると
21日 3-2-1 (1三振1四球、2盗塁)
22日 5-1-1
24日 3-1-1 (2四死球 1盗塁)
25日 4-3-2 (本塁打、二塁打)
26日 4-1-1 (申告敬遠による1四球)
合計19打数8安打6打点で打率は.421、何より23打席に立って三振が1つしかないことも、さすがですね。昨季と今季で陽川選手が大きく成長したところと言えるでしょう。
内容のある打席を監督が評価
24日の試合後、矢野監督は陽川選手が放った7回のタイムリーを「俺は、あそこの変化球を見逃しているというのがいいなと思う。全部変化球で3-1にして、1球だけ来た真っすぐを仕留めたライト前でしょ?内容があるよね、すごく」と評価しました。すべて120キロ半ばの変化球で3-1というカウントになって、次の真っすぐを打ったものです。
「来た球をただ単に打ちましたとか、相手がボール、ボールのあと甘い球を投げてくれましたというのじゃなくてね。自分で見極めて、自分でカウントを作って甘い球を投げさせて打つ。あとは追い込まれてファウル粘り、根負けさせて打つとか。この前の(福留)孝介みたいに1球で仕留めるとか。そういうのが1軍のレベルだと思うんだけど。あの陽川のヒットは、あの低めを見逃せたことで相手にプレッシャーをかけ、ストライクゾーンに投げざるを得ないカウントを作った上で、なおかつ1発で真っすぐを仕留めた。それがいい」
陽川選手本人は「低めの変化球を見逃せて、最後の甘い球を待てたのがよかったです。チャンスで回ってきたし、みんなつながってきたので」と、タイムリーを振り返り「しっかり結果を出して呼んでもらえるよう準備をしたい」と話していました。これが24日の話です。
“1つ壁を超えた陽川選手”を実感
25日はソロとタイムリーに加え、二塁打まで放って、あと三塁打が出れば…なんていう状況で絶好調。そして26日は1回に先制タイムリーでしたね。26日の試合後、矢野監督は「状況や場面を考えても、内容のあるバッティング。内容のバッティングが多くなった」と分析し、1軍にいつ呼ばれてもいいかとの問いに「もちろん」と返しています。もう、その日が来ましたね。
ここ5試合でのヒットは、ほとんどが追い込まれる前に打ったものですが、26日のタイムリーはフルカウントになったあとの6球目でした。「追い込まれていて変化球も頭にあった中で、うまく打てた。ネクストにいる時から準備を大事にと、しっかり意識してやっています」と陽川選手。
ところで、久しぶりに生で陽川選手を見たのですが、打席で構えに入る前にバットを左手で低く前へ出して戻す動作をしていました。6月3日に昇格する前にもやっていたのかどうか、記憶が定かでなかったので本人に聞いてみたら「いつからかわからないです。気づいたらやっていましたね」とのこと。6月より前からかどうかも、はっきり記憶にないそうです。
それにしても5試合で三振が1つだけですよ。打席で余裕を感じますね~と言ったら「余裕なんかありませんよ!」と素早い返事が(笑)。だけど、ずっと1軍にいた経験は生きているでしょう?「まあ1つは、それが大きいですね」
28日に再昇格するであろう陽川選手が輝く場所は、もう甲子園なんでしょう。昨年オフに濱中治打撃コーチから聞いた「陽川はことし、1つ壁を超えたんじゃないかな。それがわかるのが来年。楽しみにしたい」という言葉を思い出しました。
<掲載写真は筆者撮影>