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ドラフト候補カタログ【3】岩本喜照(日本新薬)

楊順行スポーツライター
(写真:アフロ)

 187センチの長身から投げ下ろす153キロのストレート、落差の大きいフォーク。それが岩本喜照の最大の特徴だ。さらに、「もともと、制球には自信があるんです」。

 静岡・常葉菊川高(現常葉大菊川高)時代は1年夏からベンチ入りを果たしたが、甲子園出場はない。九州共立大では入学直後から先発登板するなど、4年間で16勝4敗という成績を残している。右ヒジ損傷に見舞われた4年時には、ほとんど投げていない。それでもプロの2球団から調査書が届いたが、結局指名は見送られた。「指名されると思って、記者会見の準備までしていたんですよ」と、苦笑しながら当時を振り返る。

 日本新薬に入社した2017年は、秋以降に台頭した。日本選手権では、準決勝の先発に抜擢されると、日本生命に敗れはしたものの大胆に内角を突き、8回を5安打無四球で1失点。飛躍のきっかけとなったのは、ベテラン左腕・滝谷陣との日々だった。

「フォームについての助言を受けたり、試合に向けての調整の仕方、投手としての考え方などを教わったことで、引き出しが増えたと思います」

 また、「大学時代は走るのが苦手でしたが、社会人になったらそうもいっていられません(笑)。その走った分だけ体ができましたし、体幹も強くなった。大学時代はほとんどまっすぐで押すスタイルでしたが、体が強くなりフォームがよくなったので、カーブも放れるようになりました」と岩本はいう。

 

全国大会17イニングで16三振!

 今季の東京スポニチ大会では3試合に救援登板し、3回を無失点と優勝に貢献。都市対抗近畿2次予選でも、3試合に救援して3回3分の1をやはり無失点に抑えている。都市対抗も、初戦でNTT東日本に惜敗したが、やはり救援登板した岩本は1回3分の1を3三振無失点。社会人入りして以来、都市対抗と日本選手権という二大大会では、17回を投げて1失点という好結果だ。しかも16三振。2年目だった昨年、本人は「(チームには)いい投手がたくさんいますが、先発で投げていきたい」とこだわりをのぞかせたが、ピンチで三振を奪える能力は、抑えとしても評価が高いのではないか。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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