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『ぐるナイ おもしろ荘』で明らかになった2025年ブレイク芸人と 岡村隆史の特殊な「好み」

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:Motoo Naka/アフロ)

年またぎ番組『ぐるナイ年越しおもしろ荘』

『ぐるナイ おもしろ荘』は元日の番組である。

かつては年明け0時30分開始だったが、2023年年末から大晦日23時45分から始まるようになった。

つまり年越し番組となった。

でも0時になった年越しの瞬間を表示してくれないので、私は録画して見ることにしている。

年またぎにしている意味がわからないのだが、それはそれで、この番組の持つナンセンスさを象徴しているようでおもしろい。

若手芸人発掘アパートに取り残される芸人

番組タイトルは『ぐるナイ年越しおもしろ荘』となっている。

「若手芸人発掘アパート」に住んでいる、という体でまだ売れていない芸人を紹介する。

ここから有名になった芸人が何人かいる。

ただ、毎回10組以上の芸人が出場しているわけで、ブレイクできず、そのまま沈んでいった芸人もいる。

ここで一回だけ見たきりという芸人が毎年出ているわけだ。

なかなか闇の深いところである。

2025年の優勝はネコニスズ

この番組はいちおう1位と2位と3位が決めらる。

毎年、出川哲朗によって、ぐだぐだの発表になるのも恒例である。

2025年の優勝はネコニスズだった。

ネコニスズは「ロン毛のおじさんが赤ちゃん口調で喋る」という「キモカワ」芸人だった。

キモくてカワイイ、そのキャラクターしか印象に残らない。

ネタ内容は、おもいだそうとしても、細かくおもいだせなかった。

圧倒的にキャラで売っていく芸人である。

はたして2025年に少しはブレイクできるのか、気になるところだ。

もっとも感心したスクラップス

私がもっとも感心したのは2位になったスクラップスである。

ちょっとすごいコントだった。見ていて声が出た。

人形劇というコントは「野村」というおじさんも着ぐるみだったという内容で、これは文字で説明してもしかたがない。

見てもらわないと凄さが伝わらない。

たぶん今年、何度かテレビで披露されるのではないかとおもうので、確認してもらいたい。

あまりにも意表を突かれるコントだった。

ユニット名を忘れても、内容は忘れない芸である。

ゲストのあのちゃんが「トキメキがヤバかった、これを見てない何分か前に戻って、もう一回見たい」と絶賛してる内容であった。

ナンセンスの極地である十九人

3位は十九人。

「十九人」という名前の二人組である。

これもまたキャラクターが強烈だった。

あのちゃん曰く「病気になったときの夢の中みたい」、そういう芸である。

この日のネタは「耳が痛い」で、何の意味もない。

意味のある展開がない。言葉に連携がない。

あまりにナンセンスすぎて、たしかに夢の中のできごとを全力で見せられているようだった。

かなり、見る人を選ぶ。

大笑いしたが、誰にでも薦められるかというと、微妙である。

でも、テレビ露出が増えていくのではないだろうか。

とくに女性のキャラが印象づいて、忘れられない。

男女二人組の十九人である。

スパイシーガーリックはこれから見かけるはず

ほかに大笑いしたのは、スパイシーガーリックだ。

変型の音楽ネタで、曲の特徴的なタイミングに合わせて、ピコピコハンマーで相方を叩くというもの。

展開が期待通りで、見ていて、とても心地いい。

すごく楽しいし、何回見ても笑える。

この番組は数回見返したのだが、何度見ても大笑いしたのは、スパイシーガーリックが一番だった。

コンビのパフォーマンス後に、相方に入れ替わり、ゲストの上白石萌歌と、あのちゃんも交代でピコピコハンバーで叩く役を演じて、それでも大笑いできる。

コンテンツとしてとても強い。

このあとの今年のお笑い番組でよく見かけるようになるのではないか。

ピコピコハンマーのスパイシーガーリックである。

令和版の「Mr.オクレ」

幸のとり(こうのとり)も印象に残っている。

不気味なサボテン役の漫才も怖かったが、そのサボテン役を演じたボケの芸人が、とても貧乏らしく、後藤輝基に、お金貸してください、と頼んでいる姿がすごかった。

令和の「Mr.オクレ」のようだった。キャラが強い。

女性ピン芸人が3人

ほかにも女性ピン芸人が目立っていた。

『ぐるナイ おもしろ荘』は、ブルゾンちえみ、やす子、ゆめちゃんなどを輩出しており、「女性ピン芸人」が出てきやすいという印象がある。

今年の女性ピン芸人は3人だった。

マッスルオペラちゃん

福はらスリーセブン(表記は福はら777)

えぐろ

マッスルオペラちゃんと福原スリーセブン

マッスルオペラちゃんは、その名のとおり、バックにオペラ音楽を流しながら、マッスルぶりを見せる芸人である。

筋肉ネタをフリップで見せながら、筋肉も示す。

きちんと意味不明である。でも強く強烈に印象に残る。

福原スリーセブンも、露出の多い派手なダンサー衣装と、派手な化粧をした濃い顔つきで、踊ってからあるあるネタを呟く。

呟いていたのは、自分ネタである。身を削っていく芸である。

やす子第二弾「えぐろ」

えぐろは、一級建築士で、建築現場のあるあるネタを語る女子ピン芸人である。

「やす子につづく現場女子の二匹目のドジョウ」を狙って送り出されているという感じが強い。

たしかにネタ内容よりも、「やす子的なかわいらしさ」が目立つ。

きちんと育つといいなとおもう。

明らかにされた岡村隆史の特殊な女性なタイプ

この三人のうち、マッスルオペラちゃんと、福原スリーセブンについて、ゲストの出川哲朗が「二人とも岡村のタイプだろう」と指摘していた。

岡村隆史をそれを否定しない。

相方の矢部にも「タイプじゃない、とは言わないなあ」と言われ、何だかどぎまぎしていた。

「僕は結婚しています!」と岡村隆史は強がっていたが、それと、タイプの女性であるかどうかは関係ない。

マッスルオペラちゃんも、福原スリーセブンたしかにどこか惹かれるところのある女性芸人である。

しかも肉体派と言えば肉体派芸人だ。

ちょっと特殊な好みと言えるのかもしれない。

こういう女性が岡村隆史のタイプなのかと、2025年正月から奇妙に納得している。

「ぐるナイ おもしろ荘」からの2025年注目芸人

いまいちど、この番組からの2025年注目の若手芸人を挙げておく

スパイシーガーリック
スクラップス

十九人

ネコニスズ

あとおまけで岡村隆史が何やらを感じているらしい若手女性芸人

マッスルオペラちゃん

福原スリーセブン

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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