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ドンチッチかリラードか?NBAオールスターのスターター、私がリラードに投票した理由

杉浦大介スポーツライター
リラード、ドンチッチのどちらに投票すべきか悩んだメディアは多かったに違いない(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2月18日、NBAは3月7日に開催されるオールスターゲームに出場するスターター(先発メンバー)を発表した。スターターの10人(フロントコートから3人、ガードから2人)はファン、選手、メディアの投票で決められ、ファン投票は50%、選手とメディアはそれぞれ25%の比重で計算される。

 今回のメディア投票にはアメリカとカナダ及びグローバルのメディア関係者100人が参加。私もメディアパネリストの一人として、両カンファレンスのスターター5人ずつを選出した。投票結果、選考過程をオープンにするアメリカの通例にならい、ここで自身の選出理由を説明していきたい。

【イースタン・カンファレンス】

筆者が投票したスタメン5人

フロントコート

ケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)

ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)

ジョエル・エンビード(フィラデルフィア・76ers)

ガード

ブラッドリー・ビール(ワシントン・ウィザーズ)

ジェイレン・ブラウン(ボストン・セルティックス)

 上記の5人の中でフロントコートの3人はいわば“鉄板”であり、異論があるファンはほとんどいないのではないか。

 ついに完全開花を感じさせるエンビードは今季MVPレベルの活躍で、イースタン首位を堅持する76ersを引っ張っている。所属するバックスの勝率が下がったことを考慮すればアデトクンボの3年連続MVPは難しそうだが、それでもリーグ最高級の選手に成長し、今季も優れた成績を残す“グリーク・フリーク”をオールスターのスタメンから外すことは考えられない。

 アキレス腱断裂から復帰したデュラントが、ピーク時の切れ味を取り戻したことはバスケットボールファンにとっての喜びだった。今季の3P成功率43.4%はキャリアハイ。故障、リーグの定める安全衛生プロトコルで多くのゲームを欠場してきたのは残念だが、出場したゲームでのデュラントの活躍は文句のつけようがない。

見事に復活したデュラント(右)
見事に復活したデュラント(右)写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 一方、ガードの2つのスポットの選考はより難しく、平均得点、ユーセージでリーグ1位のビールすらも即座に当確とは思えなかった。ウィザーズは2月22日まで5連勝を遂げたが、投票が締め切られた2月16日の時点では8勝17敗。低迷チームで高得点を積み重ねていたビールのショットセレクション、ディフェンスに首を傾げさせられたことも1度や2度ではなかった。もちろんビールはすごい選手だが、攻守両面でより的確な形で勝利に貢献している選手は他にもいるのではないか・・・・・・。

 ただ、最終的には、ラッセル・ウェストブルック、ダビス・ベルターンスといった他の高給選手が本調子でないウィザーズで、集中するマークをはねのけて好成績を残してきたスコアラーをやはり圏外にするべきではないと考えた。

 結局のところ、バスケットボールは得点の多さを競うゲーム。今季、ビール以上に安定した形でハイスコアをマークしてきた選手は他にいない。周囲の援護があれば、アシストももっと増えていたはずだ。イースタンのガード部門でファン投票1位という少々意外な結果も、しばらくやや過小評価されてきた印象があるビールがついに全米からリスペクトを勝ち得たことを意味するのだろう。

ビールはオールスター3度目の出場だが、先発は初めて
ビールはオールスター3度目の出場だが、先発は初めて写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ガードの最後のスポットは、ネッツのジェームズ・ハーデン、カイリー・アービング、セルティックスを支えてきたブラウンという3人の争いに思えた。

 ネッツ移籍後はプレーメーカー色が強くなったハーデンは、新天地での最初の18試合で平均24.9得点、11.4アシスト、8.3リバウンドというオールラウンドな成績をマーク。アービングはeFG%、TS%といった指標でもキャリアハイを大きく上回る数字を残しており、その貢献度はハーデンと甲乙付け難い。

 チームが噛み合い始めたネッツは快調に勝ち続けているだけに、この2人も十分にスターターの座に値することは間違いない。結局、ファン投票、選手投票で2位の票を集めたアービングが選出されることになるのだが、そんな結果に不満があるわけではない。

 ただ、あくまで個人的な意見としては、今シーズンは毎試合のように相手のベストウィングスコアラーとマッチアップし、最高級のディフェンスで魅せた上で、オフェンス面でも自己最高の数字を残してきたブラウンが上位と考えた。守備面の負担を考えれば、ブラウンの3P成功率40.9%は上質。セルティックスの勝率が伸び悩んでいるのが考えどころだが、今季の選手層を考えれば、ブラウンの存在がなければチームはもっと下位に沈んでいたと見るべきだろう。

実際に選出された5人

フロントコート

ケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)

ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)

ジョエル・エンビード(フィラデルフィア・76ers)

ガード

ブラッドリー・ビール(ワシントン・ウィザーズ)

カイリー・アービング(ブルックリン・ネッツ)

ブラウン(右)は先発からは漏れたが、リザーブとしてオールスター初出場が決まった
ブラウン(右)は先発からは漏れたが、リザーブとしてオールスター初出場が決まった写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

【ウェスタン・カンファレンス】

筆者が投票したスタメン5人

フロントコート

レブロン・ジェームズ(ロサンジェルス・レイカーズ)

ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)

カワイ・レナード(ロサンジェルス・クリッパーズ)

ガード

ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)

デイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)

 イースタン同様、ウェスタンもフロントコートは文句のない実力を備えた3人が揃った。36歳にして支配力を保ったレブロンは、実に2013年以来となるシーズンMVPの最有力候補との呼び声も高い。レナードはリーグ最高級の2ウェイ・ウィングプレーヤーとして貫禄を漂わせ、万能ビッグマンのヨキッチも今季はレブロン、エンビードと並ぶMVP候補と評価されてきた。

 ガード部門に目を移しても、カリーは2年連続MVPを勝ち取った頃を彷彿とさせる絶好調シーズンを過ごしている。デュラントが去り、クレイ・トンプソンも故障離脱しながら、群雄割拠のウェスタンでウォリアーズをプレーオフが狙える位置に押し上げていることで、童顔のシューターは改めてその価値を証明していると言って良い。

イケメンシューター、カリーのプレーは常に華やかだ
イケメンシューター、カリーのプレーは常に華やかだ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ここまでの4人は「No-brainer(考えるまでもない)」。イースタンのフロントコートも含めて合計7人が“鉄板”であり、今季はスタメンの選択が比較的容易なシーズンではあるのだろう。ただ、最後の最後に難しいチョイスが残っていた。スタッツも貢献度も極めて似通ったリラード、ルカ・ドンチッチのどちらを選ぶべきか、頭を悩まさなければならなかったのだ。

 スターターが発表された2月18日の時点で、ドンチッチは平均29.1得点、8.6リバウンド、9.4 アシスト、リラードは同29.3得点、4.4リバウンド、7.4アシスト。数字的にはややドンチッチが上回るが、チームの勝率ではリラードがはるかに上だった。さて、どうするべきか・・・・・・。

 より多くのファンがドンチッチの方を見たがっているのを認識した上で(=人気面もプロスポーツ選手には重要な要素である)、それでも筆者はリラードを選んだ。CJ・マッカラム、ユセフ・ヌルキッチが故障離脱したチームを、ウェスタンで上位が狙える位置に押し上げてきた実績はやはり見逃せないと思ったからだ。

 また、同じくリラードを選んだトロントサン紙のベテラン記者、ライアン・ウォルスタットが自身のコラム内で記していたこんな理由づけも紹介しておきたい。

 「リラードはクラッチタイム(残り5分以内で5点差以内)のFG成功率、3P成功率はリーグ1位、得点は同2位で、フリースローは1本も外していない。おかげでブレイザーズはそれらの試合に10勝3敗だった」(数字、順位はすべて2月18日時点)

 筆者がウォルスタット記者の記事を読んだのはすでにメディア投票を終えた後だったが、リラードの稀有な勝負強さをわかりやすい形で示したこの指摘を見て、改めて適切な選択ができたと感じたものだった。

 もっとも、ドンチッチのプレーメイカーとしての能力、ディフェンス、リバウンド力、そして華やかさを評価する声も見過ごせず、スロベニア人スーパースターを選んだ人が間違っているなどと言うつもりはない。

 結局、スターターにはファン投票でリラードに大差をつけたドンチッチが選ばれたが、その結果にも特に不満はない。どの要素を重視するかで答えは分かれるというだけで、「ドンチッチ対リラード」の選択に「誤り」は存在しなかったのだろう。

実際に選出された5人

フロントコート

レブロン・ジェームズ(ロサンジェルス・レイカーズ)

ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)

カワイ・レナード(ロサンジェルス・クリッパーズ)

ガード

ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)

ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)

レブロンをはじめとするスターたちは球宴の舞台アトランタでどんなプレーをみせるか
レブロンをはじめとするスターたちは球宴の舞台アトランタでどんなプレーをみせるか写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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