情報は速さか確かさ、人々はどちらを重視するか
インターネットの普及により、情報の価値観はこれまでと大きく変わってしまった。瞬時に不特定多数に情報を発信できる仕組みが多数用意され、情報に関しては速さこそ至極との風潮が見受けられる。そこで博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が2024年6月に発表した「メディア定点調査2024」(※)の公開値から、情報に関して、人々がどのような認識を持っているのか、速さか確かさか、どちらを優先すべきかの観点から見ていくことにする
次に示すのは情報に関する2つの設問「情報は内容の確かさよりも伝える速さだ」「情報は伝える速さよりも内容の確かさだ」について、同意できる人の動向を属性別に記したもの。例えば「情報は内容の確かさよりも伝える速さだ」の全体は5.3%なので、全体の5.3%は「情報は内容の確かさよりも伝える速さだ」と思っていることになる。なお両設問は同一設問として問われたものではないので、両者を足しても100.0%にはならない。
情報に関して全体では速さを優先すべきとする人は5.3%にとどまり、確かさを優先するべきとする人は76.3%に達する。あくまでも一般論で、実際には状況や情報そのものの内容によってその度合いは異なってくるのだろうが、情報に関しては確かさが優先されるべきであり、速さは優先事項ではないとの認識が多数を占めていることになる。
属性別では、男女別では男性、年齢階層別では若年層の方が、速さを求める声が大きくなる。女性、年齢が上の人ほど、情報へ速さを優先して求めるべきとの声は小さくなるようだ。他方、40代-50代において「情報は伝える速さよりも内容の確かさだ」の値が少々小さくなっているのは気になるところ(その分、ほんの少しだけ「情報は内容の確かさよりも伝える速さだ」の値が大きくなっている)。
この動向を経年推移で見たのが次のグラフ。
「情報は内容の確かさよりも伝える速さだ」「情報は伝える速さよりも内容の確かさだ」双方とも、データが取得可能な2017年以降においては、大きな変化は生じていない。「情報は内容の確かさよりも伝える速さだ」は5.0%前後、「情報は伝える速さよりも内容の確かさだ」は75.0%前後で推移している。大きな社会様式の変化があった新型コロナウイルスの流行でも、変化を与えたような動きは無い。
現状では約3/4の人が「情報は伝える速さよりも内容の確かさだ」と考え、「情報は内容の確かさよりも伝える速さだ」とする人は5%内外に過ぎない。
しかしながら昨今のニュース記事や報道界隈の動向の限りでは、「情報は内容の確かさよりも伝える速さだ」が絶対視されている感はある。インターネットやスマートフォン、SNSなど、情報のスピード感を覚えさせるツールが普及し、速報は真で是的な雰囲気が蔓延しているように見える。実際、その方がインターネット上の数字(アクセス数や登録者数)を得やすいのも事実ではある。
「情報は伝える速さよりも内容の確かさだ」は76.3%。この結果の意味を、よく考えてみたいものだ。
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※メディア定点調査2024
調査方法は郵送調査方式。調査期間は2024年1月26日から2月9日。東京都を対象にRDD(Random Digit Dialing)方式で選ばれた15歳から69歳の男女個人に対し調査票が送付され、643通が回収された。各値は2023年の住民基本台帳を基に年齢階層・男女でのウェイトバックが実施されている。
過去の調査では利用機器に2014年からタブレット型端末が追加されている。2013年までは(ノート)パソコンと同一視され回答にくわえられていた可能性もあるが、2014年以降は機器として独立項目が設けられたため、以前と比べてメディア接触時間の合計が上乗せされている可能性が高い(メディア接触時間が有意で増加している)。
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(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。