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【ミノキシジル内服】AGAや脱毛症に効果的?副作用や適切な用量・使用法を解説!

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

ミノキシジルといえば、男性型および女性型脱毛症の治療に広く使われている外用薬ですが、近年、内服薬としても注目されているのをご存知でしょうか。ミノキシジル内服薬は、外用薬では十分な効果が得られなかった方への選択肢として期待されています。

しかし、ミノキシジル内服の効果や安全性については、まだ十分に理解されていないのが現状です。今回は、最新の研究からわかったミノキシジル内服の効果と副作用、適切な用量と使用法について詳しく解説します。

ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬として開発されましたが、服用患者の多くで多毛(体毛の増加)が見られたことから、脱毛症治療への応用が始まりました。外用薬としては1980年代から使用され、現在では男性型および女性型脱毛症の第一選択薬として広く認知されています。

一方、ミノキシジルの内服は、外用薬では効果が不十分な難治性の脱毛症に対する新たな選択肢として注目を集めています。海外では低用量のミノキシジル内服薬が処方されるケースが増えていますが、日本ではまだ保険適用外の治療法です。

【ミノキシジル内服の効果は用量依存的】

ミノキシジル内服は、男性型および女性型脱毛症だけでなく、円形脱毛症や瘢痕性脱毛症など、様々な脱毛症に対して有効性が報告されています。特に、外用薬では効果が不十分だった難治性の症例で効果が期待できます。

臨床試験では、ミノキシジル内服により毛髪密度や毛髪の太さが有意に改善したことが示されています。男性型脱毛症患者を対象とした研究では、5mg/日の内服で12週後から明らかな効果が現れ、頭頂部よりも前頭部で顕著な改善が見られました。

ミノキシジル内服の効果は用量依存的で、高用量ほど高い効果が得られる傾向にあります。一般的に、男性には1~5mg/日、女性には0.5~1mg/日から開始し、反応を見ながら徐々に増量していきます。ただし、高用量になるほど副作用のリスクも高まるため、医師との相談が不可欠です。

ミノキシジルの作用メカニズムは複雑で、まだ完全には解明されていませんが、血管拡張作用、毛包の成長期の延長、抗炎症作用などが関与していると考えられています。また、ミノキシジルは男性ホルモンの活性を抑制する可能性も指摘されており、男性型脱毛症の根本的な原因に働きかける薬剤として期待されています。

【ミノキシジル内服の主な副作用は多毛と心血管系症状】

ミノキシジル内服の主な副作用は、多毛と心血管系症状です。多毛は女性に多く、顔や体の余分な部位に毛が生えてしまうことがあります。一方、心血管系症状としては、低血圧、浮腫、頻脈などが報告されています。

これらの副作用は用量依存的に現れ、0.25~0.75mg/日で4%、1~1.25mg/日で10.8%、2.5~5mg/日で34.2%に及ぶとされています。特に心血管系の副作用には注意が必要で、定期的な血圧測定やモニタリングが求められます。

多毛は、ミノキシジルが毛乳頭細胞の成長を促進することで起こる副作用です。男性では顔や体の毛が濃くなることもありますが、女性では美容上の問題となることが多いようです。多毛が気になる場合は、医師と相談の上、用量を調整したり、除毛クリームなどを併用したりする方法があります。

心血管系の副作用は、ミノキシジルが血管を拡張させることで起こります。特に低血圧には注意が必要で、起立性低血圧(立ちくらみ)を引き起こすこともあります。浮腫は足やむくみとして現れることが多く、心不全の徴候である可能性もあるため、注意深い観察が求められます。

その他、まれではありますが、心囊液貯留や全身性浮腫といった重篤な副作用も報告されています。これらは特異体質によるものと考えられており、早期発見と適切な対処が重要です。

【皮膚科医との相談が安全で効果的なミノキシジル内服の鍵】

ミノキシジル内服を安全かつ効果的に行うには、皮膚科医との緊密な連携が欠かせません。脱毛症の原因や程度、他の治療法の効果などを総合的に判断し、適切な用量を決定する必要があるからです。

また、ミノキシジル内服は妊娠中や授乳中の女性には推奨されません。胎児や乳児への影響が懸念されるためです。小児への使用も安全性が確立していないため、慎重な判断が求められます。

併用薬との相互作用にも注意が必要です。特に、降圧薬を服用している方では、低血圧のリスクが高まる可能性があります。また、ミノキシジルは肝臓で代謝されるため、肝機能が低下している方では血中濃度が上昇し、副作用が現れやすくなることがあります。

ミノキシジルの内服を検討する際は、皮膚科医と十分に相談し、自分に合った治療計画を立てることが大切です。定期的な診察を受け、副作用の兆候がないかチェックしてもらうことも重要です。皮膚科医とのコミュニケーションを大切にし、安全で効果的な治療を心がけましょう。

ミノキシジル内服は脱毛症治療の新たな選択肢として期待されていますが、まだ解明すべき点も多いのが現状です。治療を検討される際は、十分な情報収集と皮膚科医との相談を心がけましょう。個々の症状に合わせたオーダーメイドの治療計画が、満足のいく結果につながるはずです。

適切な用量と使用法を守り、皮膚科医と緊密に連携することで、安全かつ効果的な治療が可能となるでしょう。ミノキシジル内服が、より多くの脱毛症患者の悩みを解決する一助となることを期待したいと思います。

参考文献:

1. Gupta AK, et al. Skin Appendage Disord 2023;9:423–437. DOI: 10.1159/000531890

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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