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異次元の大天才・藤井聡太棋聖か? 天下の魔太郎・渡辺明名人か? 棋聖戦五番勝負、いよいよ6日開幕!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 棋聖戦五番勝負を制するのは、大棋士への道を駆け上がる藤井聡太棋聖(18歳)か? それとも現棋界の第一人者・渡辺明名人(37歳)か?

 6月6日。千葉県木更津市・龍宮城スパホテル三日月において、第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局がおこなわれます。

 藤井棋聖は昨年、史上最年少17歳で将棋界の八大タイトル・棋聖位を獲得しています。

 その快挙は社会的なフィーバーを呼びました。

 あの熱狂の日々からもう、1年近くの歳月が流れたというわけです。

 前棋聖の渡辺名人。今期は斎藤慎太郎八段、出口若武五段、山崎隆之八段、永瀬拓矢王座に勝って藤井棋聖への挑戦権を獲得しました。

  棋聖保持者と挑戦者が入れ替わり、渡辺挑戦者にとっては今期はリターンマッチを挑む構図となりました。

 両者の過去の対戦成績は渡辺名人1勝、藤井棋聖5勝です。

 過去のデータからは、渡辺挑戦者が不利と思われるかもしれません。しかし6局という数字はまだ少ないもの。今後少なくとも数十局に及ぶであろう両者の対戦を考えれば、まだまだ序盤といえそうです。長い将棋史を見れば、若手に押された大豪が、あとで押し返していくこともよくあります。

 藤井棋聖の今年度成績は5勝2敗(0.714)です。

「相変わらずよく勝ってるな・・・」と思う方も多いでしょう。

 一方、前年度から続いた公式戦連勝記録19、前々年度から続いた順位戦連勝記録22は止まり、「天才藤井といえども、全部勝てるわけではないんだな・・・」と改めて思う人もいるかもしれません。

 藤井二冠は叡王戦は現在ベスト4。竜王戦本戦もこれから始まり、勝てば勝つだけ対局数が増えていきます。ハードスケジュールはトップ棋士の宿命。藤井二冠もこれまで何度も過密日程をこなしてきたとはいえ、今後も厳しい状況が続くことには違いありません。

 渡辺名人は今年度8勝3敗(0.727)です。

 名人戦七番勝負を4勝1敗で制したあと棋聖戦五番勝負に臨むというスケジュールは、渡辺名人にとっては流れのいい進行でしょう。

 ところで渡辺名人は「魔王」という呼ばれ方について、納得がいかないそうです。

「魔太郎」は昔からある渡辺名人の愛称でした。

 渡辺名人は「うらみはらさでおくべきか・・・!!」という意気込みで今期五番勝負に臨むのかどうかはわかりませんが(おそらくそういう気持ちではないでしょうが)どのような結果になろうとも、将棋史に大きく残るであろう五番勝負。ついに、いよいよ、明日6日から始まります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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